森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

創作

空知らぬ風 (創作短編小説) 5/5(結)

※初めてご訪問くださった方がいらっしゃいましたら、今回の記事は連載途中です。1回目はこちらです。 よろしくお願いします。 www.keystoneforest.net 今回は最終回です。 空知らぬ風 不意に、風が通り過ぎた。 風は皆が座っているござの端を煽るほど強く吹…

空知らぬ風 (創作短編小説) 4/5(転)

※初めてご訪問くださった方がいらっしゃいましたら、今回の記事は連載途中です。1回目はこちらです。 よろしくお願いします。 www.keystoneforest.net 今回は4回目、転の巻、です。 空知らぬ風 万年床とは言うが、人は万年も寝つづけてはいられない。 それ…

空知らぬ風 (創作短編小説) 3/5(承その2)

※初めてご訪問くださった方がいらっしゃいましたら、今回の記事は連載途中です。1回目はこちらです。 よろしくお願いします。 www.keystoneforest.net 今回は3回目、承その2、です(^^; 空知らぬ風 咲が死んでから、正吉はまるで意気地がない。 万年床から…

空知らぬ風 (創作短編小説) 2/5(承)

※今回の創作は原稿用紙にすると40枚弱、文字数だけでは1万2千字ほどになります。これまで1記事につき数千字くらいまでの分量を目安にしてきましたので、どういう形でアップすればいいのか、少し悩みました。いえ、大げさに言いました。少し考えたくらい…

空知らぬ風 (創作短編小説) 1/5(起)

※今回の創作は原稿用紙にすると40枚弱、文字数だけを数えると1万2千字ほどになります。これまで1記事につき数千字くらいまでの分量を目安にしてきましたので、どういう形でアップすればいいのか、少し悩みました。いえ、大げさに言いました。少し考えた…

午後の恐竜、そして早朝のJアラート。

どうだい? 恐竜は見えるかい? 土曜の朝7時半、次男のKに私は声をかけた。Kはタオルケットを身体にぐるぐる巻きにしたままプレーリードッグのように立ち上がって窓の外を眺めている。 何のこと? 恐竜? 何それ。 そう返しながらKはこちらを振り返る。 …

伝言が多すぎる……。そして、Jアラートという伝言。 (創作短編小説)

時計の針は2時を指していた。 寝る前に読み始めた小説が意外に面白く、毛布にくるまったまま、まだ読んでいた。1時までと決めていたのに、気がつくともうこんな時間になっている。明日の勤めに差し障りがあることは承知の上で、つい夜更かしをしてしまった…

ターニャ (創作短編小説)

誰もが彼女に魅せられていた。透き通るような白い肌、水色の瞳、腰まで伸びた栗色の髪、そして笑顔、澄んだ心が滲みでてくるように感じられる……。 もちろん俺の好みだ。社員総会の社長の話など誰の耳にも届いてはいない。東欧の新興独立国であるラトバニア共…

願いを叶える天使と悪魔。南の島の怒りん坊の王様。 (創作超短編小説2編)

願いを叶える天使と悪魔。 すべてに絶望し、自らの命を絶とうとしている男がいた。 そこに、天使が現れて言った。 「ひとつだけ、あなたの願いを叶えてあげましょう」 男は答えた。 「俺に夢をくれ」 天使がウインクすると男には夢が生まれた。 夢は男に生き…

魔法の鏡。 (創作短編小説)

魔法の鏡。 古道具屋で俺は一枚の鏡を買った。 店の隅に隠すように置いてある、タータンチェック柄の布が掛けられた妙なものに俺は気がついた。布をめくってみると古ぼけた鏡が現れた。 「気をつけなよ」と背後から声がした。鏡には、不釣合いなほど高い値札…

「閻魔様と百万回死んだ男。」「礼儀正しい社会の作り方。」 (創作超短編小説2編)

閻魔様と百万回死んだ男。 一人の男が死んだ。 その魂は亡骸から抜け出て閻魔様のところへ飛んでいった。 閻魔様は男の魂をしげしげ眺めると意外なことを言った。 「お前は特別に選ばれた魂だ。これから何度死んでも、別の生き物になって蘇らせてやろう」 「…

薬売りの口上。 (創作短編小説)

夜店の屋台が続く一番奥で、道端に広げた敷物の上に大小さまざまな小瓶を並べて、とうとうと口上を述べている者がおります。 大方の者は相手にせず行き過ぎておりますが、時折足を止めてそれに聞き入る酔狂な者もおります。 あなたもちょっと寄っていかれま…

天才マジシャンになりたい (創作短編小説)

【お題】「もしも魔法が使えたら」で書いたエピソードのひとつは、私が高校生だった頃に書いたお話を下敷きにしました。 www.keystoneforest.net 高校生の頃、私は将来小説家になることを夢に見、同じく漫画家になることを夢に見ていた友人Sと一緒に、手書…

もしも魔法が使えたら

今週のお題「もしも魔法が使えたら」 もしも魔法が使えたら、 僕は魔法でスマホを操り、世界中のママたちに、赤ちゃんをスヤスヤ眠らせる、呪文の言葉をメールするでしょう。 もしも魔法が使えたら、 私はそれを誰にも言いません。絶対不可能な奇跡を起こす…

プロポーズ (創作短編小説)

彼は迷っていた。困っていた。悩んでいた。 あれこれ思い悩んで眠れない日が続いていた。 ガールフレンドのAikoになんとか自分の想いを伝えたいのだけど、一体どう言えばいいだろう。 彼が伝えたいのは、つまり、彼女と結婚したい、という想いだ。ここ数日、…

良薬 (創作短編小説)

良薬は口に苦し。 つまり、よく効くクスリは不味い。だから我慢して飲め。ということでしょうか。 昔の人の言葉だと思います。こんな無茶苦茶なことをよく平気で言っておられたものです。 最近では医療が発達し、一方で医薬品のPR戦争もいよいよ激しさを増…

空から降ってきた・・・ (創作短編小説)

寒くて目が覚めた。僕は手足をぎゅっと縮めて身体を丸くした。 鼻先に何か当たる。むずがゆい。背中もチクチクする。誰かが突っついているみたいだ。 まったく。ひとがせっかくいい気分で寝てるって言うのに・・・。悪戯するのだれ?でも、目を開けないぞ。…

我が家のクスリ箱 (創作短編小説)

えっとクスリ、クスリ・・・ 「ねえ和子。クスリ箱どこにあるのー」 久しぶりの病気だった。 頭が割れそうに痛い。そして胃が重い。心臓の鼓動がこめかみを切り刻んでいる。体を動かすたびに、頭の芯に釘を打ち込まれるような激痛が走る。生唾が口の中に広が…

シャワーを浴びる方法。 (創作短編小説)

不動産屋の車で案内されたマンションまでは、駅から徒歩15分と聞かされてはいたが、実際に歩けばもう少しあるように思えた。 1階にはコンビニが入っていたらしいが、締め切られたシャッターはどこかで見たスプレー画の落書きで賑やかに彩られ、真ん中に貼…

眩暈 めまい。 (創作短編小説)

電車が駅に着く。ガタリと体が揺れて私は目を覚ました。少し寝ぼけている私はゆっくりとあたりを見回した。酔客で一杯だった車内はいつの間にかひっそりとしている。この車両には私しか乗っていないようだ。 電車の扉が静かに開く。冷えた夜の風とアルコール…

急性チョコレート中毒。 (創作短編小説)

「ま、おひとつどうぞ。いける口なんでしょう。今夜は御社と弊社とが、めでたく手をとりあって、新たなる旅立ちを始めようと言う門出でございます。ま、遠慮なさらずに、どんどんいって下さい。支払の方はこちらで持たせて頂きますから。はははは」 男はうす…

三日月の夕。 (創作短編小説)

寒い寒い夜だった。風がガタガタと病室の窓を叩いていた。しっかりと締め切ってあるはずなのに、部屋の暖房は全然効いていなかった。冷たい風は僕の心のぽっかりと空いたすき間に吹き込んでいた。僕と両親はばあちゃんの危篤の知らせを受け、少し前に病院に…

やまさま ~朝靄に沈む村・街~ (創作短編小説)

土曜日の朝、起きると街は朝靄に沈んでいました。 桜がやっと咲きそろい、この週末の花見を楽しみにしていたのに、木曜から続く雨。そして気味が悪いくらいの生暖かさ。条件は十分整っていました。 窓を開けると、景色がモノクロに変わっていました。道をは…

百万ドルの夜景を肴に呑む。 (創作短編小説)

いやぁ、なかなか結構な見晴らしではありませんか。 …… ええ、ええ。坪百万で? それはそれは、いい買い物をなさいましたな。いずれはこんな所に住んでみたいものです。 …… 元は池ですか。こんな山の上に池? …… ひめがいけ? ああそうですか。お姫様の姫に…