しあわせ王国とふしあわせ王国
遠いむかし、ある星にしあわせ王国がありました。
しあわせ王国はしあわせ王がおさめる国でした。王国が生まれてから数千年、その国の人たちはみんなしあわせでした。王様はもちろん、王様につかえるだいじんも、だいじんの家族たちも、町の人も村の人も、人々がかっているイヌやネコやフーゴたちも、みんなしあわせでした。その国にはしあわせしかありませんでした。
しあわせ王国の北に、ふしあわせ王国がありました。
ふしあわせ王国はふしあわせ王がおさめる国でした。王国が生まれてから数千年、その国の人たちはみんなふしあわせでした。王様はもちろん、王様につかえるだいじんも、だいじんの家族たちも、町の人も村の人も、人々がかっているタヌキやキツネやシイヴたちも、みんなふしあわせでした。その国にはふしあわせしかありませんでした。
ラテテウという少年がいました。ラテテウのお父さんはしあわせ王につかえる、だい5だいじんをしています。
あるとき、ラテテウにぎもんがひとつ、うかびました。この国の北にみんながふしあわせだという国があると言います。この国ではしあわせがあたり前なのに、みんながふしあわせって一体どういうことだろう。北の国の人たちはどうしてしあわせじゃないんだろう。ラテテウは北の国の人たちの日々に思いをめぐせました。
クオランという少女がいました。クオランのお父さまはふしあわせ王につかえる、だい6だいじんをしています。
あるとき、クオランにぎもんがひとつ、うかびました。この国の南にみんながしあわせだという国があると言います。この国ではふしあわせがあたり前なのに、みんながしあわせって一体どういうことでしょう。南の国の人たちはどうしてふしあわせじゃないのかしら。クオランは南の国の人たちの日々に思いをめぐらせました。
ラテテウはお父さんにききました。
「王様ってどんな人?」
ラテテウのお父さんは答えました。
「いつも笑っておられるよ。食事をとられているときも、仕事をされているときも、いつも笑っておられるよ」
「どうして笑ってるの?」
ラテテウがさらにききます。
「そりゃ、楽しいからに決まってるじゃないか。でも、何が楽しいのかはお父さんにはわからない。だって王様はいつも笑っておられるんだから」
クオランはお父さまにききました。
「王様ってどんな人?」
クオランのお父さまは答えました。
「いつもため息をついておられるよ。食事をとられているときも、仕事をされているときも、いつもため息をついておられるよ」
「どうしてため息をついてるの?」
クオランがさらにききます。
「そりゃ、楽しくないからに決まってるじゃないか。でも、何が楽しくないのか、どこがつまらないのか、お父さんにはわからない。だって王様はいつもため息をついておられるんだから」
ラテテウは、どうして王様がいつも笑っているのか、とってもしりたくなりました。そこで、ラテテウは王様にてがみを書きました。
はいけい 王様。
おしえてください。
王様はどうしていつも笑ってるんですか?
すると王様からすぐに返事がとどきました。
拝啓 ラテテウ。
どうしてわたしがいつも笑っているかって?
ラテテウ。それは、君たちがいつも笑っているからさ。
君たちの笑顔を見ると、わたしはうれしくて楽しくてたまらなくなるんだよ。
ラテテウ。君の方こそ、どうしていつも笑っているのかな?
わたしの方も、それを教えてほしいと、まえから思っていたんだ。
そこではじめてラテテウは、自分がいつも笑っていることに気づきました。王様に言われるまで、そんなこと考えたこともありませんでした。
クオランは、どうして王様がいつもため息をついているのか、とってもしりたくなりました。そこで、クオランは王様にてがみを書きました。
はいけい 王様。
おしえてください。
王様はどうしていつもため息をついてるんですか?
すると王様からすぐに返事がとどきました。
拝啓 クオラン。
どうしてわたしがいつもため息をついているかって?
クオラン。それは、あなたたちがいつもため息をついているからだよ。
あなたたちのため息を聞くと、わたしはかなしくてつらくてたまらなくなるんだよ。
クオラン。あなたの方こそ、どうしていつもため息をついているのかな?
わたしの方も、それを教えてほしいと、まえから思っていたんだ。
そこではじめてクオランは、自分がいつもため息をついていることに気づきました。王様に言われるまで、そんなこと考えたこともありませんでした。
ラテテウは、王様からのてがみを読んで考えました。どうしていつも自分が笑っているのかを。
夜まで考えてわからなくてねてしまい、朝起きたときにやっと思いあたりました。
「そうだ! お父さんお母さんがいつも笑っているからだ」
そこでラテテウはお父さんにききました。
「お父さんは、どうしていつも笑っているの?」
お父さんはこう答えました。
「それは、王様がいつも笑っていらっしゃるからさ」
お母さんにもききました。
「それは、お父さんがいつも笑っているからよ」
お母さんはそう答えました。
クオランは、王様からのてがみを読んで考えました。どうしていつも自分がため息をついているのかを。
夜まで考えてわからなくてねてしまい、朝起きたときにやっと思いあたりました。
「そうだ! お父さまお母さまがいつもため息をついているからだわ」
そこでクオランはお父さまにききました。
「お父さまは、どうしていつもため息をつくの?」
お父さまはこう答えました。
「それは、王様がいつもため息をつかれているからさ」
お母さまにもききました。
「それは、お父さまがいつもため息をついているからよ」
お母さまはそう答えました。
───これって一体どういうことでしょう。
王様からのてがみを読んで、お父さんお母さんの話をきいて、ラテテウはまた考えました。
王様が笑うからお父さんが笑って、お父さんが笑うからお母さんが笑う。お父さんお母さんが笑うとぼくもうれしくなって笑う。そして、ぼくが笑うから王様は笑うんだよな。その次は、王様が笑うからお父さんが笑う。これって、何回もぐるぐる回っていくのかな。何回も何回もぐるぐるぐるぐる回って、だから、ぼくの国の人たちはみんなが笑うんだ! 笑うからしあわせな気分になれるんだ。きっと、そうだ。
ラテテウはしあわせ王国のひみつがわかった気がしました。
王様からのてがみを読んで、お父さまお母さまの話をきいて、クオランもまた考えました。
王様がため息をつくからお父さまがため息をついて、お父さまがため息をつくからお母さまがため息をつく。お父さまお母さまがため息をつくとわたしもかなしくなってため息をつく。そして、わたしがため息をつくから王様もため息をつくのね。その次は、王様がため息をつくからお父さまがため息をつく。これって、何回もぐるぐる回っていくのかしら。何回も何回もぐるぐるぐるぐる回って、だから、わたしの国の人たちはみんながため息をつくんだわ! ため息ばかりつくからふしあわせな気分になるのね。きっと、そうだわ。
クオランはふしあわせ王国のひみつがわかった気がしました。
そうだ! このひみつを、しあわせ王国とふしあわせ王国の人たちみんなにおしえてあげなきゃ!
ラテテウは空のどこかから、そうすすめられた気がしました。
ラテテウは、大急ぎでお城の王様をたずねました。「てがみを書いたラテテウです」と伝えると、王様はすぐに会ってくださいました。
王様、王様、ぼくわかったんです。この国の人たちみんながしあわせなひみつが。このしあわせのひみつをすぐに、しあわせ王国とふしあわせ王国の人たちみんなにおしえてあげたいんです。
ラテテウは一生けんめい王様に話しました。
そうだわ! このひみつを、ふしあわせ王国としあわせ王国の人たちみんなにおしえてあげないと!
クオランは空のどこかから、そうすすめられた気がしました。
クオランは、大急ぎでお城の王様をたずねました。「てがみを書いたクオランです」と伝えると、王様はすぐに会ってくださいました。
王様、王様、わたしわかったんです。この国の人たちみんながふしあわせなひみつが。このふしあわせのひみつをすぐに、ふしあわせ王国としあわせ王国の人たちみんなにおしえてあげたいんです。
クオランは一生けんめい王様に話しました。
遠いむかし、ある星にしあわせ王国がありました。
しあわせ王国はしあわせ王がおさめる国でした。その国の人たちはみんなしあわせでした。王様はもちろん、王様につかえるだいじんも、だいじんの家族たちも、町の人も村の人も、人々がかっているイヌやネコやタヌキやキツネや、フーゴたちシイヴたちも、みんなしあわせでした。その国にはしあわせしかありませんでした。
しあわせ王国に、サチという少女がいました。
サチのお父さまはラテテウ、お母さまはクオランと言いました。サチはいつもとろけるような笑顔ですごしています。ラテテウもクオランも、サチのおじいさまたちもおばあさまたちも、王様たちも、みんなとろけるような笑顔で毎日をすごしています。
王国の人たちはみんなしあわせのひみつを知っています。だから、みんなしあわせです。
しあわせ王はふたりいて、ふたりで仲よく力をあわせて王国をおさめています。しあわせ王国はそののち、はるか未来までさかえたと言います。
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