森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

蟻地獄八つ九つ小蟻来る

Twitter(X?)では書きましたが、7月下旬の十日ほど手術入院をしていました。数年前から、雑巾を絞るような動きをすると左手親指の付け根辺りに激しい痛みを感じることがあり、年々その痛みが強くなってきたので、今回手術を受けることにしたのです。母指CM関節症という症状です。左手親指の付け根の骨を切除し、左手の腱を移植して左手親指と人差し指とを繋ぐ、という手術だったそうです。

「母指CM関節症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる

ぐるぐる巻きの包帯を解くと、左手甲や手首の3カ所に手術で切開した痕があり、まだ抜糸前なので、ブラックジャックの頬にあるような縫い目が何本か見られます。手術痕の痛みはほとんどなくなり、左手の親指以外は支障なく動かせるので、パソコンのキーボードを打つことも、今はできています。    
入院は何度目かになります。前回の入院のことも記事にしました。

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入院に当たっては、手術のことより、そのあとの一週間ほどの入院生活の間にどんな本を読もうか、そっちの方に気持ちが向いていました。
そう言えば、わたしが俳句を始めたのは、前回の入院のときに読んだ本がきっかけでした。
『詩と出会う詩と生きる(NHKカルチャーラジオ文学の世界)』(若松英輔)という本です。わたしのこの二年ほどの生き方を決めてくれた本でした。

あれから2年ほど経ちました。まだわたしは俳句の入り口辺りをうろうろしています、、、www.keystoneforest.net

ところで、今回持参したのは、

『決定版 一億人の俳句入門』(長谷川櫂)

決定版 一億人の俳句入門 (講談社現代新書)

『俳句のつくり方 初歩から完成まで』(水原秋櫻子)

俳句のつくり方

『星を継ぐもの』(ジェイムズ・P・ホーガン)

星を継ぐもの 巨人たちの星シリーズ (創元SF文庫)

『それまでの明日』(原尞)

それまでの明日 沢崎 (ハヤカワ文庫JA)

の4冊でした。
ここに並べた順に読んでいき、退院後の今もこのうちの3冊目『星を継ぐもの』を、まだ、読んでいるところです😅
『星を継ぐもの』は大学の頃に読んだものを再読していますが、すっかり内容を忘れてしまっています。ほんと、記憶力のないこと、、、

入院中考えることと言えば、俳句のことばかり。一つの季語を歳時記から適当に選んで、その季語で俳句を思いつくまであれこれ考えていきました。そのうち、ああ、こんなことより、病床で横になっている今の自分を俳句にすればいい、と思い当たり、それで何句か詠みました。そのうちの何句かを紹介させていただきます。

相変わらずの拙句ですが、どうぞよろしくお願いします。

 

 

汗みどろ病室の底に沈みをり

 

噛んで剥く病院食のバナナかな

 

病床の蜘蛛の子外へ逃してやれぬ

 

夏帽手にリハビリ病院へ移る人

 

同室の患者のいびき大夕立

 

蟻地獄八つ九つ小蟻来る

蟻地獄に落ちずに済む蟻の生は偶然で、蟻の落ちてくる蟻地獄(ウスバカゲロウの幼虫)の生も偶然、小蟻がどの蟻地獄に落ちるかも偶然、すべて偶然。

入院したのは4人部屋の廊下側でした。カーテンを閉めると、カーテン二面と壁二面とに囲まれた1坪ほどのスペースが、わたしの病床になりました。カーテンの向こうには、痛みにあえいで夜眠れず、痛み止めが欲しいと繰り返し訴える人、導尿のための管を日に何度か挿入する必要があるらしい人、一通りの治療を終えてもまだ日常生活に不安があり、リハビリのための転院を考えている人、そんな患者さんたちがいらっしゃいました。わたしが退院したあとの病床も、すぐに次の患者さんで埋まってしまったことでしょう。

 

 

今回は六句です。

 

汗みどろ病室の底に沈みをり

噛んで剥く病院食のバナナかな

病床の蜘蛛の子外へ逃がしてやれぬ

夏帽手にリハビリ病院へ移る人

同室の患者のいびき大夕立

蟻地獄八つ九つ小蟻来る

 

 

ご訪問ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よければtwitterものぞいてみてくださいね。山猫 (@keystoneforest) | Twitter
 

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山猫🐾@森の奥へ

似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。