森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

山猫ノート 阪神淡路大震災記 6

あの日の昼頃まではそうやって、ずっと家の瓦礫を掘り返して過ごしていた。 いつ頃家に戻ったのかよく分からない。覚えているのは、わが家の薄暗い一階のダイニングで、食器棚から飛び散ったお皿や茶碗の山と、中身を全部放り出してドアが開いたままだった冷…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 5

しばらくして、瓦礫の下から声が聞こえてきた。うまい具合に空間があって、そこに老夫婦がいるのが確認できた。おばあさん、おじいさんの順に引き上げた。どちらも怪我はないようだった。おばあさんは薄着だったから、後で家からセーターを取ってきてそれを…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 4

ラジオからは朝のパーソナリティが地震の状況を伝える緊迫した声が聞こえてきていた。声は堅くぎこちなかった。けれど、地震のひどさを推し量ることができたのはそんな声の表情からだけで、大阪のラジオ局の情報でさえ、思うように状況を把握できないもどか…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 3

その後、私は一度、部屋に戻る。パジャマ姿のままだったから、着替えをしようと思った。でも考え直して、パジャマを脱がず、その上にジーパンとトレーナーを重ね着して、スキーウェアもさらに着込んだ。スキー用のグローブも持った。さほど寒さは感じなかっ…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 2

地震から何日か停電していたから、個人的な一番の心配事といえば、家のことなんかじゃなくて、パソコンのハードディスクの中のデータのことだった。パソコン本体ならまた買い直すことができる。でも中身が消えたら戻ってこない。と言っても、ハードディスク…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 1

1995年1月17日、朝。 まだ寝ていた。けれど、揺れが来た時にはもう起きていた。五時四十六分ーーの数分前か、数秒前か、地鳴りを感じた。それが伝わってくる気味悪い気配で目が覚めた。方角は分からなかった。でも、それが遠くの方からものすごい速さ…

緊急地震速報

10月21日14時過ぎ、いつものように6時間目の授業が始まろうとしていたとき、校内放送が響いた。 「鳥取県で地震発生、強い揺れに備えてください。緊急地震速報 震度3 およそ25秒後 最大震度6強 震源地 鳥取県中部」 これは来る、と感じた。近くに…

森を出た理由

山猫は、ときどき創作をする。書くのは小説。のつもりだ。 いきなり、ブログの記事に載せて、日記だと勘違いされるといけないので、ここでお断りしておく。誰に? とも思うが、いつか誰かが読んだ時のために。 山猫はときどき、フィクションを書くことがある…

山猫ノート13

「野音」32ページ目からはところどころに書いた日の日付が残っている。 83年12月14日 ・人はたったの一、二分で人生をやり直せる。宮本輝 ・「馬鹿ね。あなたは私にただの通りすがりの人ですか、それとも私の人生にはいって来る方ですかって、聞いてみ…

お台場にガンダム、新長田に鉄人28号あり。

鉄人28号が立つ若松公園(神戸市長田区若松町・鉄人広場)で、10月16日(日)第14回琉球祭 in 新長田が行われた。 鉄人の足元に設けられた特設ステージでは民謡や沖縄ポップスなどのライブ演奏が催され、客席の横では沖縄料理の屋台も出店していた。…

山猫ノート12

「野音」31ページ。 ・人生を幸福にする為には日常の瑣事を愛さなければならぬ。 芥川龍之介 ・子供というのは、どうして夜はあんなに眠かったのだろう。「寝る子は育つ」というから、育つためによく眠っていたのかも知れない。 向田邦子 ・待ってなくてい…

山猫、青春18きっぷで東京へ行く 5

島田から乗った熱海行きの普通電車が途中の富士駅で4分遅れになった。乗り入れている身延線からの電車の到着を待っての発車だったからだ。仕方ないが、よりによって次に乗り換えをする熱海駅での乗り継ぎ時間は4分しかない。今回の旅でこれが一番短いのに…

山猫、青春18きっぷで東京へ行く 4

8月14日(日)第一日目 〈神戸から東京へ、皇居周辺散策〉 第一日目は東京駅から江戸城、皇居周辺を散策する予定にしていた。 そのため、往路は途中下車はせず、できるだけ早く、まだ明るいうちに東京に着くことをめざした。だから、昼食は電車内でとるこ…

山猫、青春18きっぷで東京へ行く 3

青春18きっぷを使って、神戸駅から上野駅まで行く。3泊するホテルはそこから都営バスに乗った先にある。 上野を起点にして、浅草寺、スカイツリー、アメ横、秋葉原。お台場、フジテレビ、ガンダム。江戸城、皇居、国会議事堂、東京駅、上野公園。そして、…

山猫、青春18きっぷで東京へ行く 2

「青春18きっぷ」というのは名称だけで、若者しか利用できない、というわけではない、と本や雑誌やネット上のいたるところに書いてある。勘違いする人がそれほど多いのだろうか。 山猫は、友人が「青春18きっぷ」を利用した一人旅をよくしていたので、そ…

山猫、青春18きっぷで東京へ行く 1

この夏、青春18きっぷで東京に旅行する、と決めた。 後で詳しい行程に触れるが、出発地は神戸にした。東海道本線の端から端までの電車の旅である。 旅行を計画した理由は3つあった。 理由の1つ目は、山猫が鉄道の旅をしてみたかったこと。新幹線ではなく…

街の歌が聴こえてきて

佐野元春の『SOMEDAY』が好きだ。 その昔、スナックでカラオケを歌うとき、有線にリクエストして曲を予約した。曲がかかるまでしばらく待たなければいけなかった。どこか別のスナックで誰かが歌っているはずのカラオケを聴きながら。 ♫ 街の歌が聴こえてきて…

まだ負けてない ハイキュー/日向翔陽

『ハイキュー!!』の主人公、日向翔陽にとって中学校生活3年目にして最初のバレーボール公式戦となる中学校総体の初戦。対戦相手は優勝候補筆頭に挙げられる北川第一中だった。「コート上の王様」と呼ばれる天才セッター影山飛雄がこの北川第一中を率いてい…

これぞ柔道、大野将平

リオデジャネイロオリンピック柔道で男女を通じて初の金メダルを獲得したのは、男子73キロ級、大野将平。男子柔道では北京オリンピック100キロ超級の石井慧以来8年ぶりとなる金メダル獲得だった。 日本男子柔道界に重くのしかかっていた重圧を跳ね飛ば…

山猫ノート11 自分自身の図書館を作りたい

*注「野音」28ページ。 日付が書かれている。1983年11月25日。 ・私は人を羞しめ傷つけることは好きではない。人を羞しめ傷つけるに堪えうるだけの自分の拠りどころを持たないのだ。吐くツバは必ず自分へ戻ってくる。私は根底的に弱気で謙虚であっ…

山猫ノート10 川端康成、村上春樹

「野音」27ページ目。このページの前後だけ使った筆記用具が明らかに違う。 「野音」の大半は黒のボールペンで書いているが、このページの前後だけ文字が少し太い。細字のサインペンを使っているはずだ。 使う筆記用具の書き味が良ければ、すらすらと文章…

山猫ノート 9 向田邦子

「野音」26ページ目、死にまつわる言葉を3つ書いている。 ・死に出あうと大人になる。 刑事コロンボ ・もし地球が金でできていたら、人々はひと握りの土のために命を落としただろう。 宝島 ・自分にとっての最大のお祭りであるのに本人が参加していない、…

バレーバスケ部奮闘記 3

山猫Mが通う高校では、存続させる部活動をいくつかに絞ったようだ。 一度減らしてみて、希望者が多ければ同好会から改めてスタートさせるつもり、らしい。山猫Mがそう言って悔しがっていた。 1年生の勧誘は諦め、2年生から人を集めるしか手はない。1人は…

小鼠、ニューヨークを侵略(THE MOUSE THAT ROARED)

北アルプス連峰のけわしい山ひだの一つに位しているグランド・フェンウィック大公国には、三つの盆地、一つの川、高さ二千フィートの山が一つと、それに城一つとがある。北部の峰々の斜面は地味豊かで陽あたりもよく、香り高い小粒で黒色の葡萄がみのる。こ…

山猫ノート 8

「野音」22〜25ページ 最初にレナード・ウイバーリーの言葉から、 ・ペンは剣より強いけれども、剣はいついかなる時でも烈しく力強く口をきく。 レナード・ウイバーリーの名前をノートに見つけて思い出した。 「小鼠シリーズ」だ。 そのシリーズのどれか…

バレーバスケ部奮闘記 2

今日、春高バレー地区予選最終戦があった。 この試合に勝てば一ヶ月後に県南部で行われる県大会に出場できる。あと一つ。目標まであと一つ。 だが、その一つ前の試合からセッターの動きに精彩がなかった。 トスが思ったところに上がらない。得意のサーブが決…

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山猫ノート 7

運動会、体育会シーズン真っ最中のこの時期、やたらと雨が多い。 この行事ばかりは中止するわけに行かず、日程を変更したり、プログラムを短縮して半日で終わらせたり、といろいろ大変だ。 4年後の東京の天候を今から心配している。 ・わたしが人生を知った…