森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

2022-10-10から1日間の記事一覧

不快な存在 (創作短編小説)1/6

順番待ちの外来患者が、ようやく片手で数えられるほどになっていた。お昼で終了するはずの診察時間はもうすでに二時間は超過している。昼食を昼にとれないのはいつものことだが、その日の片岡にはかなりこたえていた。 要領を得ない老人との面談にも気長に付…