森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

阪神淡路大震災

日常と非日常。                         

私は阪神淡路大震災を経験した一人です。 あの大震災はほんの数日のうちに何百、何千と言う人の命を奪いました。 あの日の後も、大災害が日本や世界を繰り返し襲っています。地域紛争という名の戦争も止みません。 人が一生のうちでたった一度でも経験するか…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 7

*その日の日記。 だが、その日に書いた日記ではない。数日後にその日を思い返して書いたものだ。 1月17日(火) 不気味な地響きを感じて目がさめた。直後、激しい揺れに襲われる。前夜軽い揺れを感じていたのですぐに地震だと気づいたが、だからといって…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 6

あの日の昼頃まではそうやって、ずっと家の瓦礫を掘り返して過ごしていた。 いつ頃家に戻ったのかよく分からない。覚えているのは、わが家の薄暗い一階のダイニングで、食器棚から飛び散ったお皿や茶碗の山と、中身を全部放り出してドアが開いたままだった冷…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 5

しばらくして、瓦礫の下から声が聞こえてきた。うまい具合に空間があって、そこに老夫婦がいるのが確認できた。おばあさん、おじいさんの順に引き上げた。どちらも怪我はないようだった。おばあさんは薄着だったから、後で家からセーターを取ってきてそれを…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 4

ラジオからは朝のパーソナリティが地震の状況を伝える緊迫した声が聞こえてきていた。声は堅くぎこちなかった。けれど、地震のひどさを推し量ることができたのはそんな声の表情からだけで、大阪のラジオ局の情報でさえ、思うように状況を把握できないもどか…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 3

その後、私は一度、部屋に戻る。パジャマ姿のままだったから、着替えをしようと思った。でも考え直して、パジャマを脱がず、その上にジーパンとトレーナーを重ね着して、スキーウェアもさらに着込んだ。スキー用のグローブも持った。さほど寒さは感じなかっ…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 2

地震から何日か停電していたから、個人的な一番の心配事といえば、家のことなんかじゃなくて、パソコンのハードディスクの中のデータのことだった。パソコン本体ならまた買い直すことができる。でも中身が消えたら戻ってこない。と言っても、ハードディスク…

山猫ノート 阪神淡路大震災記 1

1995年1月17日、朝。 まだ寝ていた。けれど、揺れが来た時にはもう起きていた。五時四十六分ーーの数分前か、数秒前か、地鳴りを感じた。それが伝わってくる気味悪い気配で目が覚めた。方角は分からなかった。でも、それが遠くの方からものすごい速さ…