２６年前、わたしは神戸市兵庫区で震度７の揺れを経験しました。その記憶を日記とパソコン通信のログとで振り返ってきました。あの日からちょうど５０日目です。長いお付き合いありがとうございました。日記編はこの日で終わります。
３月７日（火）
母からの電話で目が覚める。しばらく声が出せなかった。あまりに息苦しく、胸が痛い。身体を動かすと、胸膜に溜まった水が、右の肺の表面を押しながらゴロリと流れる感触がはっきりと自覚できる。
兵庫区役所を訪ね、Ｋ芝先生（※本来の職場の同僚、先輩）に入院することになった旨を告げる。他の本庁からの応援職員や区役所の課長、Ａ田さん（※区役所で一番親しく思っていた先輩職員）らには区役所に戻ってこられなくなったことだけを伝え、今までお世話になった礼を言う。
その後、南蛮美術館（※わたしの本来の職場）に行く。美術館職員の事務長さん、Ｍ田さん、Ｙ村さん、館長さんに挨拶する。あやまってばかりだった。アルバイトの女性たちにも挨拶しておこうと思っていたがチャンスがなかった。清掃員のおばちゃんには朝挨拶を済ませておいた。
神戸大学Ｍ上先生との打ち合わせはＭ田さんが代わりに行ってくれることになったが、罹災関係の手続きは今日中に済ませておかないといけない。そのため、その後、何カ所か回る。
夜、母が突然仕事を抜けて帰ってくる。
因幡さん（※大学時代の先輩）にメールを出し、そろそろ寝ることにする。
#山猫 M*I00*04 95/03/08 0:55
題名：・・・。
男の厄は何歳でしょうか。
天中殺か貧乏くじか、
はたまた世紀末かなんだか知りませんが、
とりあえず僕のぼやきを聞いて下さい。
あまりにも風邪が長引く上に、
就寝中突然背中に激痛が走ったりして
なんだか様子が変だなぁと思っているうちに、
夜中に呼吸困難に陥ったりし始めて、
どうにもおかしいので、昨日（正確には一昨日？）
病院に行ってみました。
レントゲンを撮ったりするので、
最悪肺炎で点滴１本くらいは覚悟しました。
ところがお医者さんの口から出た言葉は「入院やね」。
僕の頭に去年の悪夢が蘇りました。
ちょうど１年前の３月、場所も同じ名谷の国立病院、
担当医も同じＫ田先生。
しんどくてしんどくてたまらないので
生まれて初めて訪れた病院の外来で、
彼は僕に「入院」を宣告したのでした。
病名はＡ型肝炎でした。
それで一カ月ほど入院しました。
そして、今回です。
まさか、二度目に訪れた病院の外来でも
前回と全く同じ言葉をもう一度聞くことになるとは。
今回の病名は「肋膜炎（胸膜炎）」。
「肺に水がたまっとる！」そうです。
結核性、とのことです。
僕の方も去年と同じ言葉を返しました。
「どうしても入院しないとだめでしょうか。
今、仕事が忙しいので・・・」
「仕事に代わりはあっても、身体の代わりはないよ」
彼の答えもまた去年と同じでした。
入院。地震。入院。
まだまだ僕の人生は波乱万丈です。
因幡さんもお身体に気を付けて。
しばらく通信はお休みさせて頂きますが、
また一度お電話で直接お話したいと
思っています。
また近いうちに。
※この日以降、わたしは日記をつけるのをやめました。あくまでも震災を記録するためだけにつけていた日記でしたから。翌日からは結核病棟での生活が始まりました。そこには、震災とはまた別の非日常がありました。
この日以降のことをまだ少し書きますので、明日からも、もうしばらくお付き合いいただければ幸いです^_^
会下山公園より東を望む（1995年1月18日）
写真提供；神戸市
※震災の翌日、わたしが当時住んでいた会下山町の丘の上にある会下山公園から東を向いて撮られた写真です。おそらく、わたしが震災直後に自室の窓から見た風景はこんな感じだったと思います。写真の上の方に南北（左右）に続く並木が見えますが、これがおそらく湊川公園。その北（左）側に立ち昇っている煙のすぐ左手の白い建物が兵庫区役所・兵庫消防署だと思います。この建物の中で、震災から約５０日間、被災者支援や被災家屋再調査の仕事に、わたしは悪戦苦闘しました。当時のわたしの自宅はこの写真には写っていませんが、写真手前側に建ち並ぶ住宅の一角にありました。震災から二年後、結婚を機にわたしはここから引越しました。
※下のリンクは震災当日の記録です。
