森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

2017-01-01から1年間の記事一覧

山猫家、家族あわせて空手4段となる。

「武道館ひびき」で、今日、山猫家の次男Kが習っている空手の昇級審査会がありました。 山猫家における少林拳空手道の位置づけについては、以前、このブログで触れたことがあります。 十数年前、山猫の奥さんが当時幼稚園児だった長男Mを連れて、近所の空…

空から降ってきた・・・ (創作短編小説)

寒くて目が覚めた。僕は手足をぎゅっと縮めて身体を丸くした。 鼻先に何か当たる。むずがゆい。背中もチクチクする。誰かが突っついているみたいだ。 まったく。ひとがせっかくいい気分で寝てるって言うのに・・・。悪戯するのだれ?でも、目を開けないぞ。…

我が家のクスリ箱 (創作短編小説)

えっとクスリ、クスリ・・・ 「ねえ和子。クスリ箱どこにあるのー」 久しぶりの病気だった。 頭が割れそうに痛い。そして胃が重い。心臓の鼓動がこめかみを切り刻んでいる。体を動かすたびに、頭の芯に釘を打ち込まれるような激痛が走る。生唾が口の中に広が…

誕生日の今夜は縁側でバーベキュー。子供たちも火起こしを手伝ってくれるまでに成長しました。

家族で楽しむイベントといえば、お正月、クリスマス、そして誕生日でしょうか。 今日は私の何十何回目かの誕生日でした。 毎年欠かさず誕生日を祝ってくれるのは、まずは大手家電店さんです。誕生月の期間中は、なんと5%引き。しかも他の割引券もあわせて…

一番最初の記憶。ぶかぶかの革靴を履いた日。

記憶は欠けらでしか存在できない。 私たちは立ち会った出来事のほんの一部しか覚えていられなくて、その出来事の前と後とを思い出そうとしても、それらは白い混沌とした靄の中をどんどん加速しながら遠ざかっていくばかりだ。 ようやく見つけた記憶の欠けら…

私は子供の頃、家のお風呂を薪で焚いていた。

お風呂の中でブログのネタを考えていた。 考えるにはもう少し温まらないといけない、と思い、「追い焚き」ボタンをタッチした。すると、モーター音のようなものが聞こえて、噴き出し口から暖かいお湯が流れ出てきた。 便利なものだ。 と思った瞬間、そう思っ…

朝食にお茶漬けをよく食べます。私はお茶漬けで浮世絵を知り、バブルの恐ろしさを知りました。

平日の朝、私の目覚ましは5時半にセットされています。寝起きはいい方だと思います。寝ぼけて不機嫌になったことはたぶん一度ありません。家を出るのは6時20分です。 えっと、このことは今回の内容にはほとんど関係ありません。 朝、慌しく朝食をとらな…

バレーバスケ部、母校最後の高校総体を戦う。~5月、バスケットボール部県予選~

今日(5月13日土曜日)、バスケットボール高校総体県予選がありました。長男のMはバレーバスケ部に所属しています。 バレーバスケ部誕生の経緯については、別の記事『次の春、学校がなくなる。男子バレーボール部、部員2人から高3最後の大会、春高を目…

シャワーを浴びる方法。 (創作短編小説)

不動産屋の車で案内されたマンションまでは、駅から徒歩15分と聞かされてはいたが、実際に歩けばもう少しあるように思えた。 1階にはコンビニが入っていたらしいが、締め切られたシャッターはどこかで見たスプレー画の落書きで賑やかに彩られ、真ん中に貼…

iPhoneの位置情報で標高差を確認しつつ帰宅する。

ある休日の朝。私は朝帰りをしました。 とても気持ちのいい朝でしたので、最寄の駅から自宅まで歩いて帰ることにしました。 自宅は大阪湾を望む、ある山中にあります。ですので、最寄駅から自宅までの移動手段を、普通の人はこれを歩くとは表現せず、登ると…

5月の家庭菜園、野菜の種まき。いんげんと大根の植え付けをしました。

好天に恵まれたゴールデンウィーク最終日の今日、ずっと後回しにしてきていた庭仕事にやっと取り掛かりました。 雑草だらけ庭の草抜きと野菜の種まきです。 5連休あれば、あれもできるこれもできる、といろいろ皮算用していましたが、結局ほとんど何も達成…

眩暈 めまい。 (創作短編小説)

電車が駅に着く。ガタリと体が揺れて私は目を覚ました。少し寝ぼけている私はゆっくりとあたりを見回した。酔客で一杯だった車内はいつの間にかひっそりとしている。この車両には私しか乗っていないようだ。 電車の扉が静かに開く。冷えた夜の風とアルコール…

急性チョコレート中毒。 (創作短編小説)

「ま、おひとつどうぞ。いける口なんでしょう。今夜は御社と弊社とが、めでたく手をとりあって、新たなる旅立ちを始めようと言う門出でございます。ま、遠慮なさらずに、どんどんいって下さい。支払の方はこちらで持たせて頂きますから。はははは」 男はうす…

次の春、学校がなくなる。男子バレーボール部、部員2人から高3最後の大会、春高を目指す。

今週のお題「部活動」 次の春、学校がなくなる。 男子バレーボール部、部員2人から高3最後の大会、春高を目指す。 金曜日の仕事帰り、私は電車のドア近くに立って、発車時刻を待っていました。 スマホの画面を見ていると、誰かが肩を叩きます。 顔を上げる…

円卓で食事をする場合の父親の居場所について。

私と奥さんと長男Mと次男Kがいて、私の家は4人家族です。 朝の6時半くらいに家を出て、仕事から帰ってくるのは8時くらいなので、家で過ごすのは1日の半分に満たない時間でしかありません。けれど、まぎれもなくここが私の居場所です。私にはここよりほ…

三日月の夕。 (創作短編小説)

寒い寒い夜だった。風がガタガタと病室の窓を叩いていた。しっかりと締め切ってあるはずなのに、部屋の暖房は全然効いていなかった。冷たい風は僕の心のぽっかりと空いたすき間に吹き込んでいた。僕と両親はばあちゃんの危篤の知らせを受け、少し前に病院に…

スナフキンならなんて言うだろう。

仕事や人間関係に迷ったとき、悩んだとき、僕はスナフキンに相談します。 スナフキンは僕の心の中にいるから、詳しい事情を説明する必要はありません。 スナフキンはしばらく考えて、「答えは君自身が見つけるしかないね」とか、「海を見に行けばいい。一日…

「ミンチ肉のレタス包み」を作る。誰が作っても絶対に美味しくできるはず。

炒め終えたばかりでまだ温かさが残るミンチ肉をシャキシャキのレタスに包んでガブリと頬張ります。 うま! と、奥さんや子供たちが声を上げてくれると、それだけでご馳走を食べた気分になります。 この「うま!」を聞きたいのが料理を作る最大の理由でしょう…

やまさま ~朝靄に沈む村・街~ (創作短編小説)

土曜日の朝、起きると街は朝靄に沈んでいました。 桜がやっと咲きそろい、この週末の花見を楽しみにしていたのに、木曜から続く雨。そして気味が悪いくらいの生暖かさ。条件は十分整っていました。 窓を開けると、景色がモノクロに変わっていました。道をは…

山猫家、家族そろって少林拳空手道に挑む。

山猫家では家族4人(私、奥さん、長男M、次男K)で近くの公民館で開かれている空手教室に通っていた。 K以外は黒帯をもらっていて、Kも次の昇級審査に合格すれば初段、黒帯を巻くことができる。練習は日曜の午前にあり、家族4人そろって習っていた数年…

百万ドルの夜景を肴に呑む。 (創作短編小説)

いやぁ、なかなか結構な見晴らしではありませんか。 …… ええ、ええ。坪百万で? それはそれは、いい買い物をなさいましたな。いずれはこんな所に住んでみたいものです。 …… 元は池ですか。こんな山の上に池? …… ひめがいけ? ああそうですか。お姫様の姫に…

NHK100年インタビュー小田和正 時は待ってくれない。でも、夢を追いかける人のために時は待ってくれる。

『NHK100年インタビュー 時は待ってくれない「アーティスト 小田和正」』(NHKBS3月20日放送)を観た。 小田和正がプロデビュー以来約50年間歌い続けてこられた理由がそこで語られ、彼の生き方、考え方が示されていた。 心に残ったのは、自分をあ…

イノシシの森に群生するふきのとう。

山猫の家は山の傾斜地にある。 辺りの山が住宅地として拓かれたのは、つい五十年ほど前のこと。 それまでは、イノシシやサルたちが棲む雑木林だった。だから、イノシシたちは平気で家の近辺を闊歩している。 ”あとからやってきて偉そうにするな” と、きっと…

関東煮(かんとだき)は生姜醤油で食べるに限る。

山猫家のきのうの夕食メニューは関東煮だった。 入っていた具材は、大根、じゃがいも、ちくわ、ごぼ天、ゆで玉子、餅いり巾着、がんも、こんにゃく、手羽先、あと練り物が何種類か。 え? それって「おでん」のこと? と思われるかもしれない。 そう、「関東…

紙とペンと海鼠腸と白衣、そしてたくさんの花。

配偶者の互いの両親のことを義父、義母と言うが、それとは別の言葉があって、奥さんの父親のことを『岳父(がくふ)』と呼ぶことがある。 語源は中国の故事で、娘婿の昇進に関われるほど力がある人物という意味らしい。奥さんの母親のことは岳母(がくぼ)と…

尻尾の短い野良猫ポチ、飼い猫になる。

猫には2種類の尻尾がある、ということをポチと出会って初めて知った。 尻尾が長い猫と短い猫の2種類だ。 ポチの尻尾はとても短かった。鞭のようにしなやかに自在に動き、第3の手のように、いや、第3の前足のように、かな? 便利に使える細長い尻尾では全…

牛もも肉のタタキ レシピ覚書

今日は奥さんがお出かけだったので、お昼も夕食も山猫が作った。 料理を頑張ったからそれで今日のブログを書こう! と皮算用していた、のにっ。 写真撮るの忘れたーーーーー 一応途中経過の写真と残り物の写真は撮ったんだけど、盛り付けた写真じゃないと少…

ガラス越しの猫

大学生になって一人暮らしを始めた。 初めて親元から離れて住んだのは6畳の和室に流し台とガスコンロがついただけの部屋だった。1畳分の押入れもついていたが、トイレと風呂はなかった。トイレは共同。風呂は、そもそもそのアパートにはなかった。そのアパ…

猫の日に猫のことを書かずに山猫は名乗れない。

2月22日、猫の日である。 猫の日に、猫について書かずに山猫は名乗れない。 もちろん猫好きだから山猫を名乗っている。 飼っていたこともあるし、友達になったこともある。小説の題材にしたこともあるし、スマホケースの柄もそれで選んだし、次男の名前を…

野良犬は消えてしまったが、野良イノシシはたくさんいるのだ。

子供の頃、もう少し具体的に言うと昭和四十年代の頃かな。その頃は野良犬をよく見かけた。 人に飼われていたのが逃げ出した場合もあっただろうけど、たぶんほとんどは捨てられた犬が自活してるうちに大きくなったやつだったんだろう。 鎖でつながずに犬を飼…