森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

震災通信(阪神淡路大震災体験記) ***26日目(2月11日)***

 
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 26年前、わたしは神戸市兵庫区で震度7の揺れを経験しました。その記憶を日記とパソコン通信のログとで振り返っています。あの日から26日目です。

 

 

2月11日(土)
 6時45分、起床。
 今日は土曜日で罹災証明書の発行は受け付けていない。10時より湊川公園の掃除をする。仮設トイレ周辺が悲惨な状況。汚物があふれ、臭いもひどく、正視できるものじゃない。
 1時より拠点配布の荷物積み込み。本庁の職員は配布に同行しなくてよいとのことで、午後は物資の搬入と明日配布するロープ作り。隣では海外から救援物資として贈られてきた巨大テントを設営していたが、組み立て方が分からず、ずいぶん手こずっていた。
 5時頃より夕食をとり、5時半終了。
 夕食を少なめにして家でビールを飲むつもりだった。缶ビールを買って帰り、昨日母が大量に作ってくれていた煮物をあてに飲む。
 途中、電話。I淵
(※高校時代の親友、東京在住)からだった。3月の第一日曜日に高校で同級だったH城(※高校時代の同級生)が大阪で結婚式を挙げるのでこっちに来るらしい。交通機関の復旧状況によるが、できれば救援物資を持っていこうか、とのこと。娘さんのY子(※当時小学生)ちゃんとも話す。

 

※り災証明書の発行は、神戸市では2月6日から始まりました。窓口には、連日のように長蛇の列ができていました。神戸市での罹災証明書発行のための取り組みの様子を(財)神戸都市問題研究所作成の『阪神・淡路大震災 神戸市の記録1995年』から紹介します。

○神戸市においては、り災証明の発行を2月6日に開始した。り災証明書は、事前調査により作成した「り災台帳」に基づいて発行した。焼失分については消防署長が、損壊分については区長が証明書を発行した。[『阪神・淡路大震災 神戸市の記録1995年』(財)神戸都市問題研究所]
○元来、災害による被害に関する証明は、被災者からの申し出内容を「被災届出証明書」として被災地の区長が発行するものであったことから、神戸市においては、り災証明の法的位置づけについて急遽検討した。その結果、「法律、条例で発行にあたっての規定はないが、『防災に関する事務が市町村の事務』(地方自治法第2条)の規定をもとに、災害対策の一環と位置づけ、事実行為として神戸市が発行する」ものとした。[『阪神・淡路大震災 神戸市の記録1995年』(財)神戸都市問題研究所] 

(http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/chosa/pdf/056.pdf)

 

 この証明書の発行や取扱い、そしてり災証明内容への不服が殺到していること、外国人被災者の平等救済など、多くの問題点を震災当時の内閣総理大臣・村山富市あてに、神戸弁護士会が「阪神・淡路大震災被災地復旧、復興に関する緊急要望書」を出しています。その中から、り災証明書の取扱いに関する部分を紹介します。

www.hyogoben.or.jp

4.被災証明の取扱いと被災者の各種権利行使手続の弾力的運用

 現在、神戸市、西宮市、芦屋市等被災地の各自治体において、り災証明書の発行手続が実施され、被災者がこれを求め、あるいは出された結論への不服が殺到するという事態に至っている。
ところで、このり災証明書は、本来今回の阪神、淡路大震災により被災したことを証明する便宜のために発行されることとなったものであるが、現状は、あたかもこの証明書が得られないと権利行使の機会を奪われ、あるいは証明された内容にもとづいてしか権利行使が許されないかのごとき混乱を招いている。

 然しながらり災証明書は、法的根拠もあいまいで、且自治体間でも判断基準に不統一があり、また証明が建物の全壊、半壊、一部損壊という外観からの目視による不充分な確認によってなされているにすぎない。
このようなり災証明書が、義援金の配分、建物撤去取壊の申請、特例融資の申請、損害保険金等の請求等の種々の手続に提出を求められ、このり災証明書の提出があたかも必要要件視されるかのごとき混乱を生じている。

 り災証明書の発行については、建物の経済的効用を含めて、実質的な被害程度について出来るだけ被災者に救済的に判断し、且円滑に発行事務が運用されるべきである。
従って、既になされているり災証明が、各種救済手続によってより不利益に扱われるべきでないことはもとよりであるが、加えて被災者の被った経済的被害は、単に建物の損壊状況のみで図れるものではなく、家財等動産の被害、事業の被害等も含め実質的被害に対して救済が図られるべきであって、柔軟に各種の救済手続が運用されるべきである。

(神戸弁護士会「阪神・淡路大震災被災地復旧、復興に関する緊急要望書」より)

 

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仮設のプレハブ教室、自衛隊の設備やテントが並ぶ校庭。神戸市東灘区1995.3.10 (http://17jan1995.jp/jp/photo/index.html)

 

 ※下のリンクは震災当日の記録です。 

www.keystoneforest.net

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
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イラスト/バリピル宇宙さん (id:uchu5213)