森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

震災通信(阪神淡路大震災体験記) ***28日目(2月13日)***

 
 
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 26年前、わたしは神戸市兵庫区で震度7の揺れを経験しました。その記憶を日記とパソコン通信のログとで振り返っています。あの日から28日目です。被災家屋を回りました。

 

 
2月13日(月)
 今日から日勤。本庁の職員7人全員で家屋の再調査の応援をすることになった。Y村、T井、M井、F井、M崎、K上と僕の7人。
 8時半、区役所3階の課税課に集合。顔合わせ、説明のあと、区内へ散らばっていく。ペアは、課税課のA田さん。午前中2軒、午後9軒を回る。
 家屋の再調査は、罹災証明を申請した時に被災の判定内容に不服を申し立てた人の家を個別に回って再調査をする仕事だ。家屋を基礎、壁面、屋根の各部分に分けて調査し直し、それぞれにポイントを付けて合計点数で判定する。五割以上の損傷があれば半壊になる。
 実際に家を回って話を聞いていると、何割かは申し立て通りになる。地震後の混乱がまだ治まらない時期に大急ぎで判定して回ったものだし、危なくて近寄れなかった地域もあっただろうから、どうしても十分に見極められていないのは仕方ない。でも、中に1軒、どう見ても一部損壊程度でしかない家があったが、その人の言い分は、区役所前で9時間も並ばされた結果半壊を認められないのは納得がいかない、それならそうと、あらかじめ、家に通知するなりして知らせて欲しかったとのこと。彼は区役所で罹災証明書を受け取らずに帰ってしまったので、現在の避難所から、証明書のない者は出て行って欲しいと言われたらしく余計にカチンときていたようだ。
 言いたいだけ言うと納得して、一部損壊でも証明されればいいと言ってくださったが、隣家の調査をしている時にやってこられて(隣は聴覚障害者の方で、事情を聞くのにかなり手間取っていた)この人だけはなんとか半壊を認定してあげて欲しい、と良心的な話をされるので、とうとう最終的には、彼の家も半壊を勝ち取ってしまった。
 聴覚障害の方とは筆談をしたが、これがなかなか難しかった。話が通じるまでかなり時間がかかる。途中からその人の息子さんがやっこられてようやく話が通った。
 その次に行ったおばあさん宅は全壊状態なのに、呑気なもの。A田さんと二人で全壊を認定しようとしているのに、他人ごとのような感じでしか話を聞いてくださ
らない。
 4時半区役所に帰る。
 他班の人の話を聞くと、家のどこにも損傷が無いのに苦情を言ってきて、結局半壊を認定させてしまった人もいて、結構トラブルがあったようだ。A田さんとも話したが、結局、言い方はよくないが、「ごね得」という結果が多いようだ。
 久しぶりに歩き回って足がダルイ。
 まだ水が出ない。浴槽に貯めておいた水もほとんど底をついてきた。弟からお風呂においでコールをもらう。

 

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※り災の程度は全壊、半壊、一部破損の3つでした。
震災直後に判定された方は専門家の方だったかもしれませんが、判定を不服とされた住民の方々の家を回ったわたしたちは、ほとんどが専門外の職員でした。
破損の程度は、基礎:屋根:4方の壁面の割合が3:3:4で判定したと思います。壁面は1方が1点ずつです。
 それぞれの破損の程度を目視で判定します。そして足し算していって総合判定する、、、そんな流れでした。たとえば、屋根の破損を目視できれば3点、壁面を目視で調べて1面に破損が確認できれば1点、あわせると4点になるので、半壊判定、みたいな感じだったと思います。
 再調査には必ず2人ペアで回りました。ペアの相手の方の協力がないと、1人では挫けてしまいそうなことがたびたびありました、、、

 

 ※下のリンクは震災当日の記録です。 

www.keystoneforest.net

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
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イラスト/バリピル宇宙さん (id:uchu5213)