森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

あぶさん、軒醒め、お酒好きになった理由。

 
f:id:keystoneforest:20170801214436p:plain

 

 

アルコールのお話です。

前回の記事について KONMA08さん (id:konma08) から、小さい頃赤ちょうちんのお店に連れていってもらったときに見た、ご自身のお父様の飲み方が「カッチョええ」と思った(のがお酒好きになったきっかけ)、というコメントをいただきました。

あ、カッコ内はわたしの想像です。 

 

この記事へのブックマークコメントを読ませていただくと、コメントをお寄せくださった方々が抱いておられるそれぞれのアルコール観がとても興味深くて、いろいろと想像をたくましくさせていただきました。

いつもコメントいただき、ありがとうございます(^_^)

思ったよりアルコールNGの方が多くて意外でした。

長男Mを擁護してくださったのでしょうか。

お気遣いありがとうございます。

ところで、KONMA08さんは、、、けっこういける口のようですね。

ブックマークコメントの中で、ナマけものさん(id:flightsloth)から、

ネットを越えて、冥界を越えて、みんなで一緒に吞みましょう。なにもお酒でなくても、気持ちだけで一献交わせますから。

(全文そのまま引用させていただいています。)

と、お誘いいただきました。

熱くなりました。

猛暑のせいじゃなくて、感激のあまりに、です。

ナマけものさん、ありがとうございます。

 

ところで、KONMA08さんには、こう返事しました。

育った家にアルコールが全くなかったのに、わたしが飲むようになったのは、飲むことを楽しそうだと思うようになったのは、、、ひょっとしたら『あぶさん』のせいかもしれない、と今思いました。水島新司の『あぶさん』です。大好きな漫画のひとつです。
あぶさんの飲み方もカッチョええですよね(^_^)

そして、

『軒醒め』の回が最高に面白いです。
あぶさんの飲兵衛ぶりが強烈なエピソードだったと思います。
あー、今日帰ったら読み返そうっと。

と、続けました。

で、帰宅後早速読み返しました。

『軒醒め』は「あぶさん」シリーズの第3巻に所収されています。

「あぶさん」シリーズの魅力は、代打のプロフェッショナルとして試合に登場するときの、野球のプレーに関するエピソードの面白さもさることながら、試合を離れたときに描かれる人情味あふれるエピソードの秀逸さにこそある、と思います。

野球のスイッチがONに入っているときのあぶさんは、ピンチヒッターを告げられると、アブサン(どこかの国のきついお酒です)を口に含んで、ブフォッとばかりに勢いよく愛用の物干し竿(バットです)に酒しぶきを吹きかけるのです。

そしてバットを一振。

軽々と代打ホームランを放ちます。

野球のスイッチがOFFになったあぶさんは、口数少なく居酒屋の隅で酒を飲んでいます。

別に聞き耳を立てているわけではないのに、あぶさんのまわりでは安酒で憂さを晴らす飲兵衛たちが悲喜こもごもの立ち回りを演じ始め、その喧騒が聞こえてきます。

あぶさんは行きがかり上仕方なく、そこにからんでいくことになるのです。

ああ、思わずダラダラと書いてしまいました。

『軒醒め』のことです。

 

昔々、野村克也さんが南海ホークス(今の、、、ソフトバンク)の監督をしていた頃のことです。

次の試合地(富山)へと電車で移動する車中で、南海ホークスの選手であるあぶさん(景浦安武)はたまたま席が隣り合わせになったおじさんと言葉を交わします。

おじさんは、富山の薬売りをしていて全国を回っています。

富山の薬売り、ご存知でしょうか。

まだ薬のチェーン店などなかった時代のことです。

薬売りの人は家庭用常備薬のセットを薬箱ごと、全国各地の家庭に預けておくのです。

その家の人は必要ならそこから薬を使ってかまいません。

代金は使った分だけ、定期的にやってくる薬売りの人にまとめて後払いすればそれで済みます。

薬売りの人は代金を受け取り、薬を補充してまた帰っていきます。

今となれば驚くべき商法です。

箱ごと持って引っ越されたらどうする?

人を信じることができなければこんなやり方、とうてい成立しません。

わたしの故郷の家にも、薬売りの人が置いていった薬箱がありました。

薬売りのおじさんは薬の代金を受け取ると、紙風船をくれました。

わたしはそれがうまく膨らませられなくて、いつも母親に手伝ってもらっていました。

ああ、また話が逸れていました。

ここからは『軒醒め』のあらすじになります。

ネタばれ、になるかもしれません。

それでもよければ続きをお読みください。

 

 

 

 

いいですか?

 

あぶさんとおじさんとの会話はお酒のことになります。

県醒め村醒め軒醒めというてな、県醒めは特級、村醒めは一級、二級酒を軒醒めというんじゃ。つまり県醒めは県を出るまで醒めない。村醒めは村を出るまで……そして、軒醒めは軒を出たらもう醒めてるってこっちゃ。

お酒のランク付けが今とは違います。

平成の初め頃までは、日本酒はアルコール度数に基づいて、特級、一級、二級の三段階にランク付けされていました。

それによって税率も変わったので、一番値段が高くてアルコール度数も高いのが特級酒、一番安くてアルコール度数が低いのが二級酒になります。

ところが、日本酒は銘柄によってアルコール度数がそれほど違うわけではありません。

それにアルコール度数と品質が関係するものでもありません。

ですから、二級酒が不味い酒とは一概に言えなかった、らしいです。

知らんけど(^^; 

もう、、、脱線してばかりで話が進まん。

 

で、駅に着いて二人は別れますが、偶然富山の居酒屋で再会します。

そこでひと悶着あって、あぶさんは薬売りのおじさんの家でお酒をご馳走にしてもらうことになります。

二人はそれぞれ一升瓶を抱えて手酌で飲みます。

飲みつつ語ります。

薬売りをしとっても、生死の病となると、薬など役にたたんでのォ。

おじさんは手酌でぐびぐび飲んでいます。

訊けば、

肝臓がやられちまってる。

とのこと。

それなのに、豪快な飲みっぷりをするおじさんをあぶさんは心配します。

ああこれか、これはのみざめよ。

 おじさんは言います。

飲みおさめですか?

と、あぶさんが訊き返すと、

いや、飲み醒め。飲む後から醒めるというやつさ。つまり水よ。

夜が更け、あぶさんは豪快に酒(軒醒め)を飲み干して、おじさんの家を出ます。

その軒先で、

本当に軒を出たら醒めちまった。

と、あぶさんはすっきりした表情で言います。

ちぇっ、ありゃ二級酒のレッテルが貼ってあっても、中味は県醒めだぜ……あいつにかかっちゃ、県醒めも軒醒めかよ……

 と、おじさんはあきれかえるのです。

 

そうそう。

このエピソードにしびれてわたしはアルコールを飲める人になりたい、と思ったのでした。

先日の白内障の手術後、一週間禁酒しました。

ドクターの許可が出てからまた晩酌を再開しましたが、気のせいか、弱くなった気がします。

もし自分がアルコールがダメだったら、どんな人生を送っていただろう、と少し想像しました。

一つはすぐに思いつきました。

結婚相手は別の人になっていただろう、ということです。

一緒にお酒を飲むことがなかったら、知り合うことはなかったでしょうから。

とすれば、あぶさんがいたから今のわたしがある、と言っても過言ではありません!

焼酎を飲み飲みキーボードを打っていて、気がついたら24時をはるかに過ぎていました。

こりゃあかん。

 

 

 

今日の記事は KONMA08さん (id:konma08) のコメントと、 ナマけものさん (id:flightsloth) からお寄せいただいたブックマークコメントを使わせていただきました。

あぶさんとおじさんとの会話は、昭和52年10月1日小学館発行の水島新司「あぶさん」第3巻所収の『軒醒め』から引用させていただきました。

ありがとうございます。

 

 

KONMA08さん、ナマけものさん □\(^_^ )

  

f:id:keystoneforest:20180810011431j:plain

 

 

 

 

 

 

 

  
よければtwitterものぞいてみてくださいね。山猫 (@keystoneforest) | Twitter
 

f:id:keystoneforest:20180211232422j:plain

山猫@森の奥へ
似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。