こんなところに咲いていました。
春から初夏にかけての時期、庭を一巡りするだけでたくさんの命の芽生えに出会えます。
あ、庭を一巡り、、、と言ってもほんの数歩で巡れますが(^^;
草木や花たちの育つ勢いがほかの季節と断然違います。
でも、この花には気づきませんでした。
視線がはるかに高すぎたようです。
最後に足元に目を落としてやっとその声が聞こえました。
”わたしも咲いています”
プランターの中にどっさりと溢れるように咲いている花々の横で、プランターの陰で、静かにそれは咲いていました。
わたしも咲いています。
中島みゆきの『彼女の生き方』という曲を思い出しました。
♪酒とくすりで体はズタズタ、、、
と淡々とした無表情なトーンで中島みゆきは歌い始めます。
彼女の2作目のアルバム『みんな去ってしまった』にある曲です。
そうさあたしはタンポポの花
風に吹かれて飛んでいく
行きたい町へ行きたい空へ
落ちると思えば飛び上がる
思い通りには動かない
世の中なんて何もかも
だけどあたしだって世の中の
思い通りなんか動かない
タンポポの面白さは黄色の愛らしい花にではなく、その綿毛の付いた種にあると思います。
地面にへばりつくように生えているギザギザのある葉から勢いよく伸びた、枝葉がひとつもないすらりとした茎。
その先に咲いた黄色い花。
少しでも太陽に近づくようにと、茎は花を持ち上げているようです。
しばらくするとその花は、無数の綿毛に姿を変えていきます。
枝葉を持たない緑色したストローのようなその茎は、いともたやすく摘み取ることができ、わたしたちは茎ごとその綿毛を口元の高さまで持ち上げて、思い切りよく、フゥッと息を吐きかけたい誘惑に誘われます。
タンポポの構造は、種をより遠くへと飛ばすためだけにできているように思えます。
そうやって翼はもちろん足さえ持たない種たちが、住み心地の良い街を探して空を駆け巡るのです。
世の中の思い通りなんか動かない
わたしは野の花。
プランターの中で咲くには似合わないけど、好きな街に飛んでいって、根を張り、花を咲かせます。
タンポポはそう言っているようです。
ちなみに、松任谷由実が歌うタンポポは違います。
風にのり飛んで来た
はかない種のような
愛はやがてくる冬を越えてゆく
きみはダンデライオン
タンポポとダンデライオン。
名前の響きを比べると、同じ花でもずいぶんとイメージが違ってきます。
中島みゆきは曲の最後にこう歌います。
♪彼女の人生 いつでも晴
わたしはタンポポの方が好きかな。。。