森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

見ないんじゃなくて忘れてるだけ

――夢をあまり見ない方です。

人にそう言うと、見ないんじゃなくて見た夢を忘れてるんですよ、と正されます。
夢を見るのはレム睡眠のときなんだそうで、レム睡眠は約90分周期で訪れます。ですので、誰でも一晩で3回から5回は夢を見ていることになるんですよ。と、理屈を説明されます。
そうかも知れません。きっとそうなんだと思います。
つい先ほどもトイレに行こうとして、ついでにトイレットペーパーを補充しておかないといけなかったと思い出し、納戸から持ってきたのがティッシュペーパーだったりしました。
納戸にストックしておいたティッシュペーパーはそれが最後の1箱だったので、冷蔵庫に貼ってあるお買い物メモに「ティッシュ」と書いて、それから慌ててトイレに駆け込んで、やっと便座に座ることができました。
ティッシュペーパーの箱を持ったまま便座に座り、トイレットペーパーの取り出し口に手を掛けようとしたところで、なんか違うなぁと気付いたのです。
トイレットペーパーはあと少ししか残っていませんでした。
起きているときにだってすぐに忘れるんです、あれもこれも。寝ているときのことをなんにも覚えていないのは当然だと思うんです。
でも、「見ないんじゃなくて忘れてるだけ」。そう言われるたびに、ひどく物覚えが悪いと指摘されているようで、なんか嫌だな、、、

 

――見ないんじゃなくて忘れてるだけ。

きっとそうなんでしょう。
あの時もそうでした。
居間のソファでわたしはうたた寝をしていました。ひどく酔っていました。
のどが渇いて水を飲みたくなって目を覚ましました。
よろよろとソファから起き上がろうとすると、どうぞ、と声がしました。
声の主は氷水を満たしたグラスをわたしに差し出してくれました。
居間は薄暗く、何があるのかないのかよく見えませんでしたが、グラスの中で氷が揺れる音が聞こえた気がして、わたしはそうイメージしました。
音がした方に手を伸ばすと、伸ばしたわたしの手に、誰かがぴたりとグラスを掴ませてくれました。グラスを受け取ると、わたしは何の迷いもなく、グラスの中の液体に口を付けました。
冷たくて甘い液体でした。
のどを潤すただの水が欲しかっただけなのですが、美味しかったし、まぁいいか。
それで渇きはおさまりました。
ところで、この液体は何なんだろう。
ねえ?
と訊こうとしたところでわたしは気付いたのです。
声の主は誰?
居間は相変わらず薄暗くて、そこに誰かいるのかいないのか、確かめることもできかねました。
灯りを点けないと…
と思った途端、あたりはすっかり明るくなりました。
わたしは

 

 

 

 

 

 

 

 

 


夢をあまり見ない方です。
人にそう言うと、見ないんじゃなくて見た夢を忘れてるんですよ、と正されます。

夢を覚えているかどうかの個人差には、性格が関連しています。①せっかちで心に余裕がなく限られた時間で最大限の成果を上げようとするタイプの人、②のんきな人はあまり夢を覚えていません。
(『江戸川大学保健だより』No.024より)

わたしの場合は②かな? え?①?
そうかも知れません。きっとそうなんだと思います。

今回も山猫のつぶやきです。ただそれだけです。

 



 

 

 

 

 

 

 

 

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山猫🐾@森の奥へ

似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。