森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

新月の夜に夢を声に出して明らかにするとその夢は叶うらしい。

 
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少し前のことです。

 

夢を見ました。

普段あまり夢を見る方じゃないです。

夢の中の出来事は詳細が分からないことが多いのです。

ですので、事情は忘れてしまいましたが、一通の封筒が机の上に置いてあって、それをひっくり返すと中から500円玉が一つと10円玉が二つ転がり出てきました。

 

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何故だかそれをわたしは飲み込まないといけないらしいのです。

何故だかその520円全部を。

このお金で飯でも食え、ではなくて、このお金を食え、と何故だかわたしは指示されているのです。

夢の中のわたしは淡々とその理不尽な課題を遂行しようとしているのです。

はじめに10円玉を一つ飲み込むことに決め、恐る恐る口の中に挿し入れます。

ところがそれは意外なほどするりと喉の奥に滑り落ちていきました。

しっかりと胃袋まで流れ落ちるように、わたしはごくりと唾を飲み込みます。

そしてもう一度、ごくり。

飲み込むのはうまくいったのですが、口の中に苦い不味い味が残りました。

唾をさらに飲んでも、その味は消えません。

続けて二つ目も飲み込みました。

そして次は500円玉です。

わたしはそれを取り上げ、いろいろと角度を変えて眺めてみます。

これは、、、

さすがにこのサイズを飲むのは無理です。

夢の中のわたしはそう判断を下しました。

わりと冷静です。

たとえ夢であったとしても、苦しい思いは極力避けたいです。

と、

そこで夢はプツリと途切れました。

ああ、良かった。

 

次の日、職場の歓迎会がありました。

何人か着任してきた新人さんたちが順番に自己紹介をしていきます。

決して強制したわけではありませんが、一発芸もありです。

一番若い新人男性に順番が回ってきました。

彼は手短に自己紹介を済ませたあと、500円玉を鼻の穴に入ます、と言い出しました。

そうです。

あの500円玉です。

ぐぐぐいっと、彼は慣れた手つきで500円玉を捻じ込んでいきます。

そしてしばらくすると、あの500円玉はものの見事に彼の右の鼻の穴の中にすっぽりと納まっていました。

わたしが飲み込むはずだった500円玉は、彼が代わりに鼻の穴に入れてくれたのです…

ひょっとして、前夜わたしが見た夢には彼も登場していたのかもしれません。

 

当たり前のことですが、

夢は夢を見ないと叶わないです。

その代わり、夢見た夢は絶対に叶います。

すべてを肯定的に捉えられる気質を持ってさえいれば、絶対に叶います。

 

いつだったか、こんな夢を見ました。

 

わたしは母校の体育館にいました。

卒業生たちがぎっしりと席を占め、誰かの講演を聞いていました。

わたしもそのうちの一人として体育館の隅に座っていました。

講師は夢について語っているようでした。

館内はかなり薄暗くて、そのせいなのか、集まっている卒業生の中にわたしが知っている顔を全然見つけられません。

けれど、そこは確かにわたしの母校の体育館であり、話を聞いているのはわたしの知っている卒業生たちであるらしいのです。

みんな薄暗い顔をして座っています。

講師は声高にしゃべり続けています。

どうやら、この場面からその夜の夢は始まったのかもしれません。

夢は必ず叶います。

講師は強く言いました。

この学校を巣立っていった生徒たちはみんなそれぞれの夢を叶えました、と。

それを聞いたわたしは、みんな叶うなんてそんなことない、と心の中で抗います。

少なくとも自分の夢はまだ叶っていない、とわたしははっきりと思います。

すると講師は続けて言うのです。

ここに集まったあなたたちは、夢を持たなかった人たちです。

夢が叶わなかった人ではなくて、持たなかった人です、と。

そこでわたしは気づきました。

どうやら講師もわたし自身のようです。

館内に重い空気が流れていきます。

それをわたしはステージの上から感じているのです。

体育館の隅に、薄暗い表情をして座っているわたしが見えました。

講師のわたしはステージの上から、その薄暗い表情をしたわたしを見据えて言います。

夢を見れば、それは必ず叶ったのに。

そのことを信じなかったあなたは夢を見なかった。

いえ、見ていたはずの夢を途中で捨ててしまったのです。

この薄暗い体育館には、そんなあなたたちが集められているのです。

講師のわたしは厳しく言い捨てるようにして話を終えました。

 

あまりにリアリティがある夢でした。

 

新月の夜に夢を声に出して明らかにするとその夢は叶うらしい。

感謝の言葉と一緒に、はっきりと世界中に伝わるように、具体的な言葉と具体的なイメージにして、口にしないといけません。

夢を声に出して言う。

夢を持てることに、夢を信じられることに、夢に向き合えることに感謝しながら、自分の夢を明らかにするのです。

その作業を経て夢は具現化するのだそうです。

それはあの夜の夢に出てきた講師が説いた言葉だったかもしれません。

それとも、別の夜に見た夢だったのかもしれません。

夢の中の出来事は詳細が分からないことが多いのです。

 

ちなみに、次の新月は5月23日の早朝です。

 

 

 

 

あっ

 

ところで、

とっても大事なことを書き忘れていました。

良い子のみなさんは、

お金を、10円玉どころか、たとえ1円玉であっても、

絶対に、口や鼻の中にはいれないようにしてくださいね。

約束です。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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山猫🐾@森の奥へ

似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。