森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

秋深けてまだ生きてをり螽斯 〜教育実習生担当日誌⑵

教育実習日誌に書いたわたし(指導教官)側の文章を、備忘録として、そして40年ほど前に教育実習生だったわたし自身への応援メッセージとして書き残しています。
教育実習は2週間(10日間)。4日目からの記録です。

1日目から3日目はこちらに書きました。→捨て猫の小さき肉球いわし雲 〜教育実習生担当日誌(1) - 森の奥へ

 

4日目
(重度の肢体不自由のある)子供たちの中には学校でもあまり覚醒が上らず、眠ってしまう場面が見られることがあります。体調面を考えると無理に起こす必要はないと思いますが、刺激が足りずに居眠りしてしまう場合もあるのでケースバイケースだと思います。本人が楽しめる活動を取り入れることで覚醒が上がることはよくあります。本人をより深く知る(実態把握をする)ことが重要なのは、こういう側面があるからだと思います。

5日目
以前には、生徒たちの名前を呼び捨てにしたりあだ名で呼んだりする教師が多い時代もありました。ですが、今ではほとんどの場面で「さん、くん」付けで呼んでいます。子供たちの人権を尊重する、一人の人間として対応するという考え方が広く理解されるようになってきたからだと思います。言葉遣いについても同様です。S先生(実習生さん)の場合は、語尾に普段の会話口調が出てしまっただけだと思いますが、正しい言葉遣いを意識するという意味で指摘させていただきました。

6日目
特別支援学校ならではの授業形態や内容などにようやく目が向き始めたところで、残り1週間を切ってしまいました。少し慣れてきたところで実習期間が終了してしまうことになりますが、今週もより多くの気付きがあることを期待しています。明日は研究授業です。十分な説明や打ち合わせができないままで申し訳ありません。ですが、生徒たちはS先生の話にぐいぐいついてきてくれるはずです。頑張ってください。

 

日誌の記録はあと2回続きます。

以下は、Twitterに投稿した自作の俳句(11月14日〜11月18日)です。

 

 

 

昨日ごと冬菜を洗ひ玉子焼く

わたしの家の庭に今植えているのはチシャ(サンチュ)とサニーレタス、そして青ネギです。週末の朝は、一週間育った分を摘んできて土を洗い落とします。何かの幼虫が付いていることもたまにあります。水道から流れる水は冷たいですが、念入りに洗います。指先がじーんと冷えます。仕事のあれこれもいらぬ思いも、気にしないようにして洗い続けます。洗った葉っぱと今朝もうまく焼けなかった玉子焼きとで朝ごはんにします。食べ終わったらコーヒーを淹れて、新聞に隅から隅まで目を通します。それが週末の一日の始まりです。こんな朝をけっこう気に入っています。

 

棉の実とお家に帰つてただいまを言ふ

家で待ってくれている誰かがいるから「ただいま」を言うのです。「おかえり」の声が聞きたいのです。棉の実と一緒なら、ふんわり飛んであの家に帰っていけるような気がします。「綿の実の猫と微睡む縁側へ」という句を前に詠んだときに一緒に考えた句です。どちらもイメージだけの句なので、良くないですね。ごめんなさい。

 

秋深けてまだ生きてをり螽斯

螽斯はキリギリスと読みます。秋の季語です。でも、字の中には冬があります。アリとキリギリスの童話を思い出します。草原でバイオリンを弾いていたキリギリスの頭に雪が舞い始めます。寒くて凍えそうなのでアリの家を訪ねますが、キリギリスの声はアリには届かず、バイオリンの音色もやがて途絶えてしまいます。晩秋に虫がか弱く鳴く声を聞くとたまらなく寂しくなります。

 

螽斯闇夜に鳴きて返事来ず

晩秋に虫がか弱く鳴く声を聞くとたまらなく寂しくなるくせに、その続きを詠みました。夜になっています。月の出が遅くてあたりは真っ暗です。キリギリスが鳴いています。一匹分の声しか聞こえてきません。誰かいないかと呼んでいるように思えてなりません。今年最後のキリギリスの声なのかもしれません。蝉たちの死も同様ですが、季節が終わるとそれに合わせて一斉に死んでしまう生き物がいます。夏の虫も秋の虫も、それぞれの季節が終わるとみんな死んでいきます。みんな同時に死ぬというのも残酷ですが、最後まで生き残った虫一匹。その一匹の虫の気持ちを思うと胸が張り裂けそうになります。だから、そんなこと考えないようにします。

 

早朝の庭に落ちたり虫の羽

……→秋深けてまだ生きてをり螽斯→螽斯闇夜に鳴きて返事来ず→早朝の庭に落ちたり虫の羽→……

俳句でお話が書けるかもと思いました。キリギリスのお話です。でも、どう考えてもハッピーエンドになりそうにないのでやめました。悲しい物語は苦手です。一番苦手なのは『フランダースの犬』です。朝刊を取りに玄関を出ると、虫の羽が一枚落ちていました。何の虫かは分かりません。羽はやがてアリたちが運んで行ってくれるでしょう。年越しをするキリギリスもいるそうです。きっとキリギリスはまだ生きている。そう思って、現実を見ないようにします。

 

 

もし、お心に留まった句がおありでしたら、コメントいただければ幸いです。感想をいただくことで、たくさんの気付きを得ることができます。
また、いただいたコメントをブログ中で紹介させていただくことがあります。どうぞご了承くださいますようお願いします。

 

 

① 昨日ごと冬菜を洗ひ玉子焼く

 

② 棉の実とあの家に帰りただいま言ふ

 

③ 秋深けてまだ生きてをり螽斯

 

④ 螽斯闇夜に鳴きて返事来ず

 

⑤ 早朝の庭に落ちたり虫の羽

 

 

 

 

 

以下、大変手前みそで恐縮ですが、、、前回の記事何を追ふ地下道を往く木枯らしや - 森の奥へ にいただいたコメントから、良かったよと言っていただいたコメントと句を紹介させていただきます。

今回も2句が同点(団栗の背比べ…)でしたが、家族会議の結果、④の方がマシじゃない?ということになりました(^^;

 

④ 止まれ木枯らしその先は袋小路

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気ぜわしい季節と人生と。その先は何があるかわからないのに止まれないのですね。④ に親しみを感じます。句に添えていらっしゃるお写真が いつも素敵です🌿

URURUNDOURURUNDO

人生と被る2重の意味を持つ句だと感じる。辿り着いた袋小路からどうやって抜け出せるのか。

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この中でこれが印象に残りましたが、それよりも何よりも木枯らしでこれだけ句が書けるんですか〜。

 

⑤ 凩やただ前だけを見てきたり

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私の背中を押して前へ進めてくれるような、そんな気がしました。😄

こんばんは、山猫さん。わたしは⑤が良いです(#^.^#)。

よいすね

 

 

 

snow36(id:snow36)さん、ururundo(id:URURUNDO)さん、シンクロナスくーかん(id:ArtStone)さん、チャーコ(id:harienikki)さん、スフレ(id:sufuretan)さん、yom-amota(id:yom-amota)さん、そしてこのほかにもコメントをくださったみなさま、ありがとうございました。

 

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よければtwitterものぞいてみてくださいね。山猫 (@keystoneforest) | Twitter
 

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山猫🐾@森の奥へ

似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。