森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

ヴァージニア・ウルフのメノウのボタン… ~ The Blue Hearts “手紙” ~

 
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“手紙”

1993年7月に発表された The Blue Hearts 7枚目のアルバム“DUG OUT”の冒頭に収められている曲です。

♪ヴァージニア・ウルフのメノウのボタン…

と歌い出す甲本ヒロトの歌声が、切なくて不思議な世界へ聴く人を誘います。

初めて聴いたのはこの春でした。

シングルカットされなかったからというだけではなくて、 The Blue Hearts のさほど熱心な聴き手ではなかったせいもあって、出逢うのがこんなに遅くなってしまいました。

 

 

聴いたことがないという方がいらっしゃったら、以下がYouTubeのリンクです。
The Blue Hearts "手紙 Letter" 凸凹 オーケストラ 歌詞 English subtitles

 

歌詞は難解です。

その一方で、あまりに鮮やかに美しい映像が浮かび上がってくる、この曲の不思議さ。

詩はイメージを味わうもので、意味を読み解くものではない。

そう思いつつも、

詩的な感性を持たないわたしは、どうしてもこの歌詞の意味を知りたくて何度も何度も聴き直しました。

今も聴きながら書いています。

 

ヴァージニア・ウルフのメノウのボタン
セロハンのバスのシートに揺れている
ジャングルジムの上 ひろがる海に
ぬれている君と 淡い月明り
ねじれた夜に 鈴をつければ
月に雪が降る
水平線の見える場所は もう春だ

 

背骨で聴いてる ハチミツの雨
ヒマワリ畑で ラジオが歌うよ
手紙を書いたなら 空に飛ばすんだ
風が運ぶだろう 君のところまで
青空の下 怪獣退治
ギターを片手に
輝いている夜明け前は もう夏だ

 

ろうせきの道 走り抜けてく
ギターを片手に
輝いている夜明け前は もう夏だ

 

(作詞・作曲;真島昌利)

 

曲は、重く低く響くバイオリンの奏(かなで)から始まります。

♪ヴァージニア・ウルフのメノウのボタン
セロハンのバスのシートに揺れている
ジャングルジムの上 ひろがる海に
ぬれている君と 淡い月明り

イントロに続く詩は、言葉のリズムがあまりに美しい。

ヴァージニア・ウルフはイギリスの女性作家なんだそうですが、言葉の意味に引きずられてはいけない。たぶん。

♪セロハンのバスのシートに揺れている…

少し力を加えれば容易に引き裂いてしまえるセロハン。

光を透かせば世界はセピア色に見えるのかもしれない。

そんなシートに君は座っています。

僕を待ってくれている?

それとも僕を忘れようとしている?

揺れているのは君?

それとも僕

言葉とメロディーが一体になって、世界が揺れています。

詩の中に「君」は二度登場します。

「ぬれている君」と「君のところまで」。

けれど、この詩の中のどこにも僕は現れてきません。

僕はずっと君のことを見つめています。

ただ、見つめています。

ヴァージニア・ウルフはきっと君のこと。

淋しげなその名前の響きは僕の心の裡をあらわしている。

僕はきっとこの世の存在ではないに違いありません。

君がいる、君が生きている、その美しい世界を僕は海の底から見上げています。

空の上から見下ろしています。

そしてまた、ろうせきの道を風になって駆け抜けていきます。

僕には肉体がありません。

だから、背骨で聴いて、ラジオで歌う。

手紙をポストまで運ぶ身体がないから、風に預ける。

風は君のところまできっと吹いていってくれるはずですから。

イントロのバイオリンの音色…

それは命ある世界と命が尽きた後の世界とを繋ぐ音色。

僕はジャングルジムの天辺に座っています。

見上げれば、遙か上方に、穏やかな波に揺れる海が広がっています。

海面を照らす月明かりが、その向こうにほのかに滲んで見えます。

そこに君がいる。

僕は海の底からずっと君を見ている。

君の横顔を見ている。

ひとりの春、

君は水平線を見つめている。

僕は手紙を書きます。

君に前に進んで欲しくて手紙を書きます。

風が運んだ手紙は君のところに届いたろうか。

もうすぐ季節が変わります。

水平線の彼方から陽が昇ってこようとしています。

もう夏だ。

さあ、ギターを片手に走り出せ!

 

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“手紙”に心を揺さぶられてこの記事を書き始めた頃は、まだ桜が咲いていたのです。

久しぶりの投稿。やっと書けました。

山猫🐾は、ぼちぼちやっています(^_^)

 

 

手紙 (デジタル・リマスター・バージョン)

手紙 (デジタル・リマスター・バージョン)

 

 

 

 

♪月に雪が降る…

それは、月面に降る雪じゃない。

その雪は、上弦の三日月の窪みにふわりと積もる雪に違いない。

そんな夜を描いた小説です。

良かったらのぞいてみてください。 

 

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山猫🐾@森の奥へ

似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。