願いを叶える天使と悪魔。
すべてに絶望し、自らの命を絶とうとしている男がいた。
そこに、天使が現れて言った。
「ひとつだけ、あなたの願いを叶えてあげましょう」
男は答えた。
「俺に夢をくれ」
天使がウインクすると男には夢が生まれた。
夢は男に生きていく希望を与えてくれた。
夢はなかなか果たせない。
男は自分の不運を嘆き、力のなさを呪った。
男は絶望し、自らの命を絶とうとした。
するとそこに、今度は悪魔が現れて言った。
「ひとつだけ、おまえの願いを叶えてやろう」
男は大喜び。
天使に与えてもらった夢を悪魔に告げた。
悪魔が空に向かって口笛を吹くと、即座に夢は現実になった。
ところが男は夢を失い、生きていく気力をなくした。
すべてに絶望した男は、、、
南の島の怒りん坊の王様。
南の島に怒りん坊の王様がいました。
怒ってばかりなので、いつも顔が真っ赤です。
おでこからびっしょり汗を噴き出させ、よけい暑くなってまたまた汗をかいていました。
王様は暑くて暑くてたまりません。
ある日、王様は島人たちに北の島に氷を取りに行くよう命じました。
冷たい氷で自分の部屋を涼しくすればいいと思い立ったのです。
島人たちは王様に喜んでもらおうと、一生懸命に舟を漕いだり泳いだりして北の島へと出かけました。
「王様、氷を持ち帰ってまいりました。」
南の島一番の力持ちの男が、大きな箱を引っ張って真っ先に帰ってきました。
力持ちの男が得意満面の表情で箱の蓋を開きます。
王様と力持ちの男が箱の中を覗き込みますと、、、どうしたことか、中はからっぽ。
「お前、私をだましたな。」
王様はかんかんになって怒りました。
「いえ、王様、そんなはずは」
力持ちの男が汗をかきかき調べてみますと、箱の中は底だけがびっしょりと濡れていました。
どうやら氷は持ち帰る途中で溶けてなくなってしまったようです。
力持ちの男はおでこを地面に押し付けて平謝り。
その後も、何人もの島人たちが北の島めざして舟を漕ぎ出しました。
ところが、どれほど大きな氷の塊でも、南の島に持って帰る途中で溶けてなくなってしまいます。
氷を持ち帰れなかった島人たちは、そのたびに、王様に大声で叱られました。
やがて、北の島に向かった島人たちは帰ってこなくなりました。
それを探しに行った島人もまた帰ってきません。
島人たちは、涼しいうえに、うるさい王様のいない北の島に住みつくことにしたようです。
島人は一人減り二人減り、とうとう南の島は怒りん坊の王様だけになってしまいました。
海辺に座り、水平線の彼方に目をやって、誰かの舟が帰ってこないかずっと待ち続けました。
くる日もくる日も、王様は海辺に座って遠くを眺めていました。
でも、誰も帰ってきません。
また夕方になりました。
おーい みんなー
氷なんかもうどうでもいいから
もう怒ったりなんかしないから
帰ってきておくれよー
おーい みんなー
おーい
王様は海に向かって大声で叫びました。
いつも怒ってばかりいた王様は、そのとき初めて涙を流しました。
すると、その涙は王様の頬を伝い、ポタリと砂浜に落ちて、
ジュッ
ジュジュジュジュジューっと湯気が立ちました。
その湯気がおさまりますと、今までの暑さがうそみたいにシューンとやわらいで、涼しい海風が吹いてきました。
しばらくしますと、はるか彼方の水平線に、島人たちが漕ぐいくつもの舟影が小さく見えてきました。