森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

緊急地震速報

10月21日14時過ぎ、いつものように6時間目の授業が始まろうとしていたとき、校内放送が響いた。

「鳥取県で地震発生、強い揺れに備えてください。緊急地震速報 震度3 およそ25秒後 最大震度6強 震源地 鳥取県中部」

これは来る、と感じた。近くにいた子供の頭をかばうように手を伸ばした。数えていた訳ではないので正確ではないが、30秒後くらいだろうか、床が動いた。微かな揺れだ。ただの気のせいかもしれないと思うほどの揺れだった。でも、少し離れたところに立ててあるポール状のマットが、誰も触れていないのに左右に揺れるのが目に入った。

気にせずに立ち歩いている者もいた。揺れていることを伝え、座るように促した。また来るかもしれない。

しばらく揺れに備えるように、との校内放送が入り、子供と手をつないだまま待ったがそれきり何も起こらなかった。

二十年前の神戸の地震を思い出した。

 

あの日の前夜、予兆があった。すでに布団に入っていたと思う。結構な揺れを感じた。家全体が歪んだような音がした。それまでに体感した中でも最も大きな揺れだったかもしれない。それでも、今から思えば震度3か4くらいだったか。翌朝の新聞記事にはなるな、とのんびり考えて眠りについた。

そしてあの朝。5時46分の少し前、私は目を覚ました。不気味な地鳴りが私を起こした。遠くから低く鈍い震動が近づいてくるのを感じた。数十秒後か、あるいは数秒後か、床が、天井が、家全体がガタガタと大きく揺れ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

  
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