『ハイキュー!!』の主人公、日向翔陽にとって中学校生活3年目にして最初のバレーボール公式戦となる中学校総体の初戦。対戦相手は優勝候補筆頭に挙げられる北川第一中だった。「コート上の王様」と呼ばれる天才セッター影山飛雄がこの北川第一中を率いていた。
日向にとっては、相手がどこかは問題ではなかった。「やっと出られた大会」だった。「やっと、ちゃんとコートで、6人で、バレーができる」。試合ができること自体がうれしくて仕方なかった。
実は、日向が入学した雪ケ丘中にはバレー部はなく、バレー愛好会しかなかった。部員がいないからだ。「小さな巨人」を目指す身長160cm台の日向は、たった1人で2年間練習を続け、そして、3年生の春、新入生が3人入ってきた。そこに、バスケ部、サッカー部の友人を助っ人に頼み、中学校最後の総体にやっと出場することが出来たのだ。
勝つこと以前に、プレーすることが楽しい。まさに、スポーツの原点かもしれない。
人数が足りないあたり、山猫Mの環境とちょっと似ている。
試合は、北川第一中のワンサイドゲームだった。サーブレシーブすら満足に出来ない雪ケ丘中。
レシーブミスしたボールはコートの後ろに大きく飛んでいく。あきらかに追いつけないようなボールを日向は全力で追う。フライイングレシーブ。日向の手の先はわずかにボールに届かない。得点は北川第一中に入り、7対24。北川第一中のマッチポイントとなった。
「ゴメン次はとる!」と謝る日向は1年生から「なんで、そこまで」と訊かれ、
「まだ負けてないよ?」
と、当たり前のように応える。
───追う理由はひとつ ボールは落ちてないから どんな劣勢だろうが 戦い続ける理由はひとつ まだ 負けてないから───
この次のプレーで、日向は強烈なスパイクを決め、北川第一中から8点目をもぎ取る。
(『ハイキュー』第1巻第1話「終わりと始まり」より)
山猫Mは、春高地区予選最終戦に負けた日の翌日学校を休んだ。その翌日も休んだ。さらにその翌日は登校したが、台風の接近による気象警報の発令のため学校は午前で終わり、部活動をせずに帰宅した。その次の日、木曜日はバスケ部の練習日だった。
木曜日のバスケ部は朝練からある。朝練の日はいつもより少し早く起きないといけない。山猫Mの部屋から目覚ましの音が聞こえ、起きる気配がした。でも、早起きはしたものの朝練には行かなかった。
放課後の練習には数日ぶりに参加したようだ。が、あまりに無気力な山猫Mの練習態度を、バスケ部のキャプテンは、やる気がないなら帰れ、と叱った、らしい。
TVアニメ『ハイキュー!!』第3期の放送が始まった。山猫Mは食い入るようにそれを観ていた。