森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

バーベルにハグ。重量挙げ三宅宏実選手

 

 

重量挙げ女子48キロ級、メダルをかけてジャーク3回目の試技に挑む三宅宏実選手のバーベルの重さは107キロ。

リオデジャネイロ到着後、三宅は持病の腰痛を悪化させ、痛み止めの注射を射ってこの日を迎えていた。

これを失敗すればもう後はない。

バーベルを肩の高さに抱えて立つ三宅は奥歯を食いしばり、頬をパンパンに膨らませて何かを必死に堪えている。

腰の痛みか、メダルへの重圧か。

その姿勢から一気にバーベルを頭上高く持ち挙げる三宅。そして、バーベルが静止する。

審判の合図を確認した三宅の表情が笑顔に変わる。子供のような愛らしい笑顔だった。

彼女は跳びはねて喜び、ステージを降りる時には、バーベルにハグをして愛おしそうにそれをなでた。

ロンドンオリンピック銀メダルに続く2大会連続のメダルとなる銅メダルを獲得した瞬間だった。

「バーベルは16年間ずっと一緒に練習してきたパートナー。メダルが獲れた時に、バーベルに『ありがとう』と伝えたかった」

三宅の心に込み上げてきたのはこんな想いだった。

メキシコオリンピック銅メダリスト、三宅義行を父に持つ彼女が、父から指導を受けて、初めて重量挙げを志したのが中学3年の時。以来、人生の半分近くをともに過ごしてきたバーベルだった。

前回の銀メダルから順位を1つ下げたリオデジャネイロの銅メダルだったが、メダルへの想いを三宅はこんな言葉にしている。

「前回とは年齢が違うので、重みが全然違う。一番うれしい」

と。

今の自分がベストを尽くせたかどうかが大事なのであって、メダルの色など関係ない。

三宅宏実選手の笑顔はそう語っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

  
よければtwitterものぞいてみてください。山猫 (@keystoneforest) | Twitter