森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

次の春、学校がなくなる。男子バレーボール部、部員2人から高3最後の大会、春高を目指す。

今週のお題「部活動」 次の春、学校がなくなる。 男子バレーボール部、部員2人から高3最後の大会、春高を目指す。 金曜日の仕事帰り、私は電車のドア近くに立って、発車時刻を待っていました。 スマホの画面を見ていると、誰かが肩を叩きます。 顔を上げる…

円卓で食事をする場合の父親の居場所について。

私と奥さんと長男Mと次男Kがいて、私の家は4人家族です。 朝の6時半くらいに家を出て、仕事から帰ってくるのは8時くらいなので、家で過ごすのは1日の半分に満たない時間でしかありません。けれど、まぎれもなくここが私の居場所です。私にはここよりほ…

三日月の夕。 (創作短編小説)

寒い寒い夜だった。風がガタガタと病室の窓を叩いていた。しっかりと締め切ってあるはずなのに、部屋の暖房は全然効いていなかった。冷たい風は僕の心のぽっかりと空いたすき間に吹き込んでいた。僕と両親はばあちゃんの危篤の知らせを受け、少し前に病院に…

スナフキンならなんて言うだろう。

仕事や人間関係に迷ったとき、悩んだとき、僕はスナフキンに相談します。 スナフキンは僕の心の中にいるから、詳しい事情を説明する必要はありません。 スナフキンはしばらく考えて、「答えは君自身が見つけるしかないね」とか、「海を見に行けばいい。一日…

「ミンチ肉のレタス包み」を作る。誰が作っても絶対に美味しくできるはず。

炒め終えたばかりでまだ温かさが残るミンチ肉をシャキシャキのレタスに包んでガブリと頬張ります。 うま! と、奥さんや子供たちが声を上げてくれると、それだけでご馳走を食べた気分になります。 この「うま!」を聞きたいのが料理を作る最大の理由でしょう…

やまさま ~朝靄に沈む村・街~ (創作短編小説)

土曜日の朝、起きると街は朝靄に沈んでいました。 桜がやっと咲きそろい、この週末の花見を楽しみにしていたのに、木曜から続く雨。そして気味が悪いくらいの生暖かさ。条件は十分整っていました。 窓を開けると、景色がモノクロに変わっていました。道をは…

山猫家、家族そろって少林拳空手道に挑む。

山猫家では家族4人(私、奥さん、長男M、次男K)で近くの公民館で開かれている空手教室に通っていた。 K以外は黒帯をもらっていて、Kも次の昇級審査に合格すれば初段、黒帯を巻くことができる。練習は日曜の午前にあり、家族4人そろって習っていた数年…

百万ドルの夜景を肴に呑む。 (創作短編小説)

いやぁ、なかなか結構な見晴らしではありませんか。 …… ええ、ええ。坪百万で? それはそれは、いい買い物をなさいましたな。いずれはこんな所に住んでみたいものです。 …… 元は池ですか。こんな山の上に池? …… ひめがいけ? ああそうですか。お姫様の姫に…

NHK100年インタビュー小田和正 時は待ってくれない。でも、夢を追いかける人のために時は待ってくれる。

『NHK100年インタビュー 時は待ってくれない「アーティスト 小田和正」』(NHKBS3月20日放送)を観た。 小田和正がプロデビュー以来約50年間歌い続けてこられた理由がそこで語られ、彼の生き方、考え方が示されていた。 心に残ったのは、自分をあ…

イノシシの森に群生するふきのとう。

山猫の家は山の傾斜地にある。 辺りの山が住宅地として拓かれたのは、つい五十年ほど前のこと。 それまでは、イノシシやサルたちが棲む雑木林だった。だから、イノシシたちは平気で家の近辺を闊歩している。 ”あとからやってきて偉そうにするな” と、きっと…