森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

傷口にはいつかカサブタができます。

 
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去年の夏ごろ酔っ払って転んだときにつけた傷がまだ治りきりません。

歳をとると傷が治るのが遅くなります。

新陳代謝が若いころほど良くないし、免疫力が衰えているからでしょう。

ですが、歳をとっても時間が経てば傷は治ります。

なので、若いころならなおさらです。

よほどのことがない限り、治らない傷はありません。

 

たとえば、バレーボールの試合で自分はセッターとしてコートに立ち、プレイしています。

この試合に勝てば県大会出場が決まります。

負ければ高校3年生である自分はチームを引退しないといけません。

試合に出場できる機会はもう巡ってきません。

1セット目を取って2セット目を迎えています。

スコアは24対23。

あと1点でチームは勝利します。

相手チームのエースアタッカーが打ち込んできた強烈なスパイクをリベロがナイスレシーブ。

勢いをうまく殺したボールはセッターである自分のところに返ってきます。

こちらのスパイカーがライトに1人、センターに1人準備しているのが視界に入ります。

センターからの速攻と見せてライトに上げよう。

そう狙いを決めます。

目の前に勢いよく走りこんでくるセンターのスパイカーと目を合わせながら、そこに短いトスを上げる体勢に入ります。

相手チームのブロッカーがセンターからの速攻を読んで位置取りを変えます。

狙い通り。ライト側はがら空き。

このトスをライト側にさばけば、がら空きのライトから強烈なスパイクを決めてくれるはず。

マッチポイントが決まって、みんながガッツポーズをとる映像が頭をよぎります。

ところが、

 

ボールは指先を滑り中途半端な高さにあがってしまいます。

審判の笛が強く鳴り、ダブルコンタクト(ドリブル)の反則がコールされます。

24対24。

 

一瞬、、、頭の中が真っ白に。

試合はデュースに入り、流れは変わってしまいました。

2セット目を落とし、3セット目はワンサイドの展開となり、チームは負けてしまいます。

大学進学後や社会人になってからもバレーボールを続けることはできなくはないですが、結局はその機会がないまま。

これが人生でバレーの試合をする最後になってしまいます。

 

平日は早朝練習から放課後遅くまでの練習。

土日は他校への遠征。

体中疲れ果て、眠かったり、遊びに行きたいのを我慢したり。

一生懸命練習に打ち込んできたのに、結局は大した成果も得られずに引退してしまう。

少しくらいはバレーボールが上手くなったかもしれないけど、それが一体なんの役に立つ?

それにしても、あの1本のトス。

あれさえ決められればもっと高いところまで行けたのに。

なんでもない普通のトスだったのに。

どうしてよりによってあんな時にミスをする?

思い返すたびに悔しくて悔しくて、拳骨で壁を殴りたくなる衝動に襲われる。

チームの誰も自分を責めなかった。

それどころか落ち込む自分の肩をたたいて励ましてくれた。

 

チームメートが責めない分だけよけいに自分で自分を責めます。

 

 

たとえばそんなことってありますよね。

 

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血が流れるわけではありませんが、心にも傷がつきます。

ひょっとして、心についた傷の痛みは血が流れる痛みよりひどいかもしれません。

血が流れれば、その痛みを血を見た人たちと共有できますが、心の傷は誰にも見えません。

痛みを誰とも共有できません。

なにより、その傷をより深くえぐるのは他でもない自分自身です。

誰とも共有できない痛みをひたすら自分だけが見つめます。

何度も何度もあのときのミスを振り返って自分を責めます。

痛みはひどくなるばかりです。

 

だから、傷口をやたらと触ってはいけませんよね。

 

 

傷口にはいつかカサブタができます。

傷の様子を見つめるのはカサブタができてからでいいですよね。

カサブタができるそのころには、きっと痛みは消えているはずですよね。

そして今では、きっとそのカサブタさえ消えてしまっています。

 

 

それにしても、酔っ払って転ぶなんて、

若いころと比べるとずいぶんアルコールに弱くなったな(^^;

 

 

 

翌朝追記

 

いや?

そうじゃなくて、運動神経が鈍ってきたのかも??

 

 

 

 

 

 

  
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