創作
電車が駅に着く。ガタリと体が揺れて私は目を覚ました。少し寝ぼけている私はゆっくりとあたりを見回した。酔客で一杯だった車内はいつの間にかひっそりとしている。この車両には私しか乗っていないようだ。 電車の扉が静かに開く。冷えた夜の風とアルコール…
「ま、おひとつどうぞ。いける口なんでしょう。今夜は御社と弊社とが、めでたく手をとりあって、新たなる旅立ちを始めようと言う門出でございます。ま、遠慮なさらずに、どんどんいって下さい。支払の方はこちらで持たせて頂きますから。はははは」 男はうす…
寒い寒い夜だった。風がガタガタと病室の窓を叩いていた。しっかりと締め切ってあるはずなのに、部屋の暖房は全然効いていなかった。冷たい風は僕の心のぽっかりと空いたすき間に吹き込んでいた。僕と両親はばあちゃんの危篤の知らせを受け、少し前に病院に…
土曜日の朝、起きると街は朝靄に沈んでいました。 桜がやっと咲きそろい、この週末の花見を楽しみにしていたのに、木曜から続く雨。そして気味が悪いくらいの生暖かさ。条件は十分整っていました。 窓を開けると、景色がモノクロに変わっていました。道をは…
いやぁ、なかなか結構な見晴らしではありませんか。 …… ええ、ええ。坪百万で? それはそれは、いい買い物をなさいましたな。いずれはこんな所に住んでみたいものです。 …… 元は池ですか。こんな山の上に池? …… ひめがいけ? ああそうですか。お姫様の姫に…