森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

内村航平を好きなのは審判だけじゃない

 

 

体操男子個人総合は内村航平選手の最後の鉄棒演技による執念の逆転劇で幕を下ろした。内村の個人総合連覇の瞬間だった。

試合後、一人の外国人男性記者から内村に少し皮肉な質問が飛んだ。

 「あなたは審判に好かれているから良い得点が取れると感じていますか?」

 一瞬、怪訝な表情を浮かべた内村は

「僕が審判に気に入られてるってことですよね?」「ジャッジは公平だと思う」

と返した。

すると、内村に逆転され銀メダルとなったオレグ・ベルニャエフ選手が口をはさんだ。
 「審判も個人のフィーリングは持っているだろうが、スコアに対してはフェアで神聖なもの。コウヘイはキャリアの中でいつも高い得点をとっている。それは無駄な質問だ」と。

それは無駄な質問だーー、敗者が勝者をかばう。胸のすくような潔い言葉だった。

今回のリオデジャネイロオリンピックのインタビューの中で最も印象に残る言葉の一つだ。

もちろんオレグ選手の発言の通り、審判は公平である。この日のジャッジも公平だった。

だが、本当のところ、審判に好かれて何が悪い? 裏から手を回した、なんて卑怯なことは一切していない。審判を味方につけるほどの演技を内村がした、というだけのことだ。

そもそも、内村を好きなのは審判だけじゃない。一緒に戦ったライバルからも彼は心底好かれている。

オレグ選手はこうも言っている。

「コウヘイを一生懸命追っているが簡単じゃない。この伝説の人間と一緒に競い合えていることが嬉しい。彼は世界で1番クールな人間だ」

と。

一人の人間としての内村航平の人となりを全く知らないが、ライバル選手にこうまで言わせたという一点だけみても、内村の凄さが思われる。

そして、これまで一番間近で内村を見てきてその強さを痛いほど味わい、その上でオリンピックの舞台で僅差で敗れたにもかかわらず、悔しさをみじんも見せずに素直に負けを認めたオレグ選手もまた、いずれ近いうちに審判に好かれる存在になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

  
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