森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

猫になる

お気に入りのチェアを庭に置いてみた。
サイドテーブルも置いてみた。太陽は少し西に傾いたばかり。ちょっぴり飲みたい気分。でも、飲むには少し明る過ぎ。
太陽を消すリモコンスイッチを太陽に向けてOFF。太陽までけっこう遠いからOFFになるには時間かかりそう。

庭は六畳ほどの広さ。隣家とはカーテンで仕切っている。
隣家の屋根の向こうに太陽が沈んだ。つるべ落としの夕闇。少し冷えてきたけど、ここは庭だから暖房はない。
仕方ないから、猫を三匹ポケットに詰めて、上着をもう一枚重ね着。
サイドテーブルの上のコーヒーカップから湯気が立ち上っている。お気に入りのチェアに深く体を沈めてコーヒーを一口。
体の内を熱いものが巡る。
飲みたかったのはアルコールだったけど、ま、いいか。
猫が鳴いている。ああ、あったかい。
明日はベッドも運んでくることにしよう。それと、ビールと猫も。
今夜はホントに星がきれいだ。

 

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山猫🐾@森の奥へ

似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。