今年の小説初読みは『九月の雨はクラゲ色』(秋風堂書房)でした。
作者は秋野紅人 あきのくにん さん。はてなブログではくにん (id:kuninn)さんとして活動されています。
横道にそれますが「初読み」は新年の季語。
俳句風に書くと「初読みは九月の雨はクラゲ色」となります。
ついでにもう少し横にそれて、わたしの俳号は遠野山人です。
秋野紅人、遠野山人、秋野紅人、遠野山人、、、字面が似てるのはただの偶然です。
はてなブログでのお付き合いを始めたのが2017年の暮れ頃でしたが、以降4年ほどの間は、わたしは山猫、秋野さんはくにんさんでした。
あとに書いていますが、くにんさんとは実際にお会いしたことがあります。
ですが、お互いの本名もペンネームも知りませんでした。
お会いしたときには、お互い「山猫さん」「くにんさん」と呼び合っていましたから。
今回の『九月の雨は、、、』の発売に際して、はじめてくにんさんのペンネームを知りました。
二人のペンネームが似ていることにくにんさんも驚かれています(^^;
本題に入ります。
『九月の雨はクラゲ色』はくにんさんの第一作品集になります。
えっと、正しくは「秋野さんの第一作品集」と書かないといけないのかもしれませんが、わたしのなかに実在しているのは秋野さんじゃなくてくにんさんなので、そう呼ばせていただきます。
出版までの経緯や入手方法については、以下のくにんさんの記事をお読みください。
続いて、本の紹介をさせていただきます。
『九月の雨は、、、』は、ファンタジー色の濃い作品から歴史や戦争に題材をとった作品、青春もの、恋愛ものなど多岐のジャンルにわたる短編20編、そして作者自身による後書きまで含めた264ページの文庫本サイズの本になっています。
作品の面白さはもちろんのこと、ジャンルの幅の広さに、くにんさんの作品を読ませていただいていつも驚かされるのですが、扱うジャンルに合わせて文体も自在に操られるところが、これまたすごいところでもあります。
いずれの作品も初出は「コトゴトの散文(https://www.kotogotono.com/)」となっていて、掲載時期は2017年11月から2019年10月のようです。
ブログ掲載時に読みそこなっていた作品もありましたが、リアルタイムで読ませていただいた作品も何編もありました。
リアルタイムで読んだとき印象に強く残っていた作品に、今回改めて紙媒体で接することができて、またさらに印象を強くした作品もありました。
表題作の 九月の雨はクラゲ色 そして レディ・ジェーン・グレイのダンス マトリョーシカの中身 の3編がその作品です。
それと、今回初めて読ませていただいたなかで一番楽しめた作品が 開ける でした。
今回の作品集収録作は、どの作品ももちろん面白く読ませていただきました。
ですが、そのなかでも、わたしの推しはこの4編です。
そして、なんといっても、マトリョーシカの中身 が抜群にすばらしいと思っています。
ちなみに、ブログ掲載時にリアルタイムで読む機会があった作品にはブックマークコメントを残していましたので、以下にそれをまとめます。
ひょっとしてネタバレになってしまっていたらごめんなさい、、、
近未来的デイサービス
間違えて交差点を曲がったら、「あかん、そこ曲がったらあかんやないか。しゃあないな、ほな、次の角を右や、そこそこ、そこを右に曲がるんや」とか、その地方の方言で叱ってくれるカーナビがあったらおもろいな(^^;
子供の視点
桜さんのその後の成長、いつかまた読みたいです。
※ブログ掲載時は桜さんでしたが、今回の作品集では彩音さんになっているようです。そして、その彩音さんは今回の作品集に収録されている 一致団結! 五年三組 にも登場しています。くにんさんによると、二人は同一人物のようです。
夏、青空、そして、花火
夜空を鮮やかに彩る花火は、あんなに華やかなのにどうしてこんなに深い郷愁を誘うのでしょう。花火の光が時空を超えさせてくれるのでしょうか。夢のような切ない世界、ありがとうございました(^_^)
九月の雨はクラゲ色
クラゲ色の雨。透明のビニール傘を差したら、わたしもクラゲになってフワフワと雲間を漂っていけそうです。
レディ・ジェーン・グレイのダンス
淡々と描かれるジェーンが切ないです。その最期の顔に柔らかな微笑みが浮かんでいてよかったです。今夜悪夢を見ないですみそうです(^^;
どうして忘れていたんだろう
前に進めなくなった時、スタート地点に戻って頭をリセットしてみる。そのスタート地点が故郷であったり、初めての友人であったり、ひょっとして初恋であったりするのでしょうか。
渦
そして、まさか、、、大爆発? あっ、ちょっと目を逸せているうちに二人はどこかへ消えてしまいましたね(^_^;
ココロにパフュームを
くにんさんのバリエーションの広さに圧倒されています…
マトリョーシカの中身
くにんさん、素晴らしい物語をありがとうございます。また泣きました。焦土となった北の果ての街、飛び交う銃弾の音、黄色いひまわりの海…咲き誇るひまわり畑が今と言う日常を過ごせる奇跡を教えてくれるようです。
※この作品は第二次世界大戦中の独ソ戦を舞台としています。ソ連の少年兵が地獄を見た戦場がウクライナの現状とあまりにダブって見えるのです。
今日は2022年3月3日。
偶然ですが、ちょうど3年前に以下の記事をアップしていました。
関西在住のはてなブログ繋がりのおっさん4人が大阪梅田に集まってブログのことを語り合った呑み会の記録です だったかな…。
下の写真は記事中に掲載している4人のおっさんたちです。
右下のおっさんがわたし山猫 、そのお隣に座っておられるふくろうの顔 をしたおっさんがくにんさんです。
このときは、あとお二人とご一緒していますが、興味がおありでしたら、上記の拙記事をお読みください。
くにんさんが手に持っておられるのは、集合場所で初めて出会うおっさん同士の目印になるように用意されていたミッフィーです(^^;
今回この記事を書くにあたって、これまでに「コトゴトの散文」に発表されてきたくにんさんの小説を振り返らせていただきましたが、この第一作品集に未収録の作品がまだまだたくさんあって、改めてくにんさんの多作ぶりに驚いています。
なにしろ、くにんさんは月の砂漠のかぐや姫という一大長編 現在第243話でさらに連載は続いています を月5,6回のペースで連載されているのです。
その長編の連載と並行して短編を書き続けられている、このパワーと尽きることのない想像力に驚くと同時に憧れもし、尊敬もしています。わたしも小説創作頑張ります…
なお、くにんさんは『月の砂漠のかぐや姫(第1巻)』を今年の上期にまとめるご予定だそうです。