森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

裸木の固き蕾の先に天 ~俳句tweetより~

句集を買いました。
『自選自解 山口誓子句集』(白凰社)です。
誓子自身が選んだ俳句215句に、やはり誓子自身による解説を加えた句集です。
巻末には「わたしの俳句のつくり方」という文章も添えられています。
この一文を読みたくて、この本を買うことにしたのです。
俳句の解説も含めて、とても興味深い内容でした。
ですが、それについてはここでは触れません。
またいつか機会があれば紹介しようと思います。

山口誓子は、以前の拙記事 何を追ふ地下道を往く木枯らしや - 森の奥へ  のなかで好きな句の一つとしてご紹介した「海に出て木枯帰るところなし」の作者です。

 

山口誓子やまぐちせいし(1901―1994)
俳人。明治34年11月3日、京都市に生まれた。本名新比古(ちかひこ)。旧制三高を経て東京帝国大学法学部卒業。京大三高俳句会で鈴鹿野風呂
(すずかのぶろ)、日野草城(そうじょう)に指導を受け、『京鹿子(きょうかのこ)』『ホトトギス』に投句。東大俳句会では高浜虚子(きょし)の指導下に水原秋桜子(しゅうおうし)らと活躍する。樺太(からふと)(サハリン)での幼時を万葉の語調で追憶した作品を発表し「ホトトギスの4S」とよばれ、さらに都会的な素材を簡潔・明快に詠む硬質の句風を樹立。『ホトトギス』の諷詠(ふうえい)趣味を排し、新興俳句運動の先駆者となり、連作俳句を試みた。(小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』より)

 

山口誓子の木枯の句以外に、わたしの好きな句を5句、いえ7句紹介させていただきます。

 

突き抜けて天井の紺曼殊沙華

夏草に機缶車(きかんしゃ)の車輪来て止まる

月光は凍りて宙に停(とどま)れる

ひとり膝を抱けば秋風また秋風

蟋蟀(こおろぎ)が深き地中を覗き込む

悲しさの極みに誰か枯木折る

蟷螂(とうろう)の眼の中までも枯れ盡(つく)

 

 

さて、今回は去年の12月4日から12月8日までのtweet句です。
この記事を書いている今日の前日に立春を迎えました。
記事更新のペースを上げていかないと、どんどん季節がずれてしまいそうです(^^;

 

 

冬晴れの朝の三日月白き息

「冬晴れ」を季語にして詠んだつもりでしたが、「息白し」も冬の季語でした。tweetする前に歳時記で確認しているつもりなのですが、季重なりになってしまいました。それに、情景としてもありきたりで、うまくいってませんね、、、ごめんなさい。

 

冬入日帰る場所ありや鳥一羽

tweetしたときは、「歸る」と旧字を使いましたが、旧字体は読みにくいので、これ以降は、新字体を使うことにしようと思います。
烏にしろ雀にしろ、よく見かける鳥たちは集団でいることが多いのですが、なかに一羽で飄々と飛んでいる鳥を目にするときがあります。どこへ行こうとしているのか、ちょっと心配になります。

 

猫に訊く冬の陽射しの通り道

わが家の庭には、近所を縄張りにしているらしい野良猫がよくやってきます。黒いのとまだらな焦げ茶のと、よくやってくるのはこの二匹です。黒いのは大人猫のはずなのに、サイズはいつまでも大きくなりません。まだらな焦げ茶猫は、庭の木の陰に潜んでいたりして、知らずに水遣りをすると、潜んでいた場所から飛び出してきます。潜んでいたのはキンモクセイの陰です。庭の東南の角にあるその木の向こう側がわが家で一番陽当たりが良い場所なのでしょう。

 

裸木の固き蕾の先に天

葉をすっかり落としてしまった木の枝に、着実に蕾が育っている。蕾は枝の先に付き、枝は天を差している。それで、今更ながらに気付いたのです。草も木もすべての植物たちが伸びていく先に天があることに。

 

風止んで虫死に絶えて空夜かな

「空夜」は静かな夜、さびしい夜という意味だそうです。季語ではありません。冬の静まり返った夜を表現する言葉を探していて見つけました。この言葉の字面と響きにちょっと痺れました。

 

 

もし、お心に留まった句がおありでしたら、コメントいただければ幸いです。感想をいただくことで、たくさんの気付きを得ることができます。
また、いただいたコメントをブログ中で紹介させていただくことがあります。どうぞご了承くださいますようお願いします。

 

 

① 冬晴れの朝の三日月白き息

 

② 冬入日帰る場所ありや鳥一羽

 

③ 猫に訊く冬の陽射しの通り道

 

④ 裸木の固き蕾の先に天

 

⑤ 風止んで虫死に絶えて空夜かな

 

 

 

 

 

以下、大変手前みそで恐縮ですが、、、前回の記事 落ち葉には夢ありいつか花にならむ - 森の奥へ にいただいたコメントから、良かったよと言っていただいたコメントと句を紹介させていただきます。

 

④ 通勤の朝ひとつづつ冬新た

harienikkiharienikki

毎朝、同じようで新しい冬の朝、そんな感じがして良いなぁと思いました。

私は④、がすきです。
寒い冬ですが、1日1日、気温も空気も違います。
今日という冬の1日を大事にさせて頂きたいです。
毎日の通勤のとき、新しい冬ですよね。昨日とは違う冬です。

kuninnkuninn

僕は④が好きです。通勤で毎日毎日寒い思いをしておりますが、冬が「進む」、あるいは、「厳しくなる」のではなく、「新た」になるという表現が、とても素晴らしいと思いました。(#^.^#)

わたしは ④ 通勤の朝ひとつづつ冬新た がいちばんすきです(#^.^#)。キピッとしていて冬の朝らしい、きもちの良い句だなぁっておもいます(#^.^#)。

 

 

 

 

 

チャーコ(id:harienikki)さん、happy-ok3(id:happy-ok3)さん、くにん(id:kuninn)さん、スフレ(id:sufuretan)さん、そしてこのほかにもコメントをくださったみなさま、ありがとうございました。

 

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よければtwitterものぞいてみてくださいね。山猫 (@keystoneforest) | Twitter
 

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山猫🐾@森の奥へ

似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。