同じ朝、同じ昼、同じ夜。
仕事を終えて帰宅して、何はともあれ、まずお風呂。
夜はのんびり食べて飲む。
家族みんなが揃うのは夕飯の時くらい。
少し話して、少し聞く。
子供らは数回ご飯をお代わりし、それでもすぐに食べ終わり、部屋へ戻って誰かとゲーム。
わたし一人食べ終えずに飲んでいる。
家族と一緒に食べて飲む、話して聞くのが生きること。
そのために働いた。
楽しい仕事の日だけじゃない。
あれこれ気持ちを塞ぐ日も、腰や肩が重い日も、なかったと言えば噓になる。
話して聞いて食べて飲んで、それですっかり忘れてしまう。
忘れてしまって酔っ払う。
酔っ払ったら眠くなり、布団をかぶってふと思う。
今日という日の延長に必ず明日が来るのだろうか。
今日と明日とが違うのは、存在するのかしないのか。
存在するのは今、一瞬。
その先を信じて今日まで生きてきた。
これからもそれでいい?
本当に必ず明日は訪れる?
春と秋とが出会ったのは、夏の海を漕いでゆく、舟の網カゴの中でした。
気持ち良い香りがしています。
陽は傾いて、西の果てにすぐ沈みます。
穏やかな風を受け、海鳥たちが静かに空を舞ってます。
風に乗って流れています。
花びらが欲しい、秋は春に頼みます。
両手いっぱいの柔らかな花びらを、春は秋に託します。
葉っぱが欲しい、春は秋に頼みます。
両手いっぱいの錆びた葉っぱを、秋は春に託します。
舟の網カゴは空っぽになりました。
香りが甘く揺れてます。
風が吹いていきました。
香りを一緒に運びます。
波のしぶきの天辺を蹴り、軽々と進みます。
花びらの流れる香りを嗅ぎますと、葉っぱの流れる様を見てますと、風の通り道が分かります。
上へ下へ、右へ左へと流れます。
流れ流れて花びらは、いつか葉っぱと海底へ。
花びらも葉っぱも全部消えてしまったら、そこから先、風の行く方は見えません。
見えない先をそれでも風は進みます。
さらにさらに進みます。
次の花びらに出会うまで、その次の葉っぱを散らすまで。
それでまた、きっと風が見えるはず。
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