森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

仁淀ブルーと室戸岬への旅(前編)

 
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令和改元を祝う10連休。

わたしの職場もカレンダー通りの10連休でした。

仕事のことをまったく忘れて10日間過ごせたのは初めてだったかもしれません。

あれから1カ月が過ぎました。

まだ1カ月です。

たった1カ月しか経っていないのに、あの10連休は、、、おそらくもう二度と巡ってこないあの10連休は、すでに遠い過去のことのようにさえ思え始めてきています。

あの連休を利用して、わが家も旅行に出かけたのでした。

今回の記事はその記録です。

わたしの家族はわたしと奥さんと息子2人の4人家族です。

はじめは家族4人で出かける予定でしたが、大学生の長男Mには連休中にも授業があり、それをサボるわけにはいかないとのことで、わたしと奥さん、次男Kの3人で行くことになりました。

行き先は四国を選びました。

わたしの家は神戸にありますから、淡路島経由で高速道路を走ればさほど遠いところではありません。

2泊3日で、高知市近辺と室戸岬とを回る計画です。

四国に決めたのには理由があって、それは鰹のトロを食べるということでした。

鰹のトロ、、、聞いたことないですよね?

魚好きの次男Kがたまたま観ていたテレビ番組で鰹のトロが紹介されたそうです。

美味い、しかも値段が安い、なのに全国的には流通していなくて地元高知の人しか食べていない、、、と聞いてKが興味を示した、そうです。

Kと一緒にテレビを観ていた奥さんから聞きました。

次男Kはどちらかと言えば出不精で、10連休の10日間とも家で過ごして少しも苦にならない、そんなたちなのです。

ですが、せっかくの連休なので、外に出かけよう! 普段と違う景色を観に行こう!

誘うきっかけとして、鰹のトロを食べに行くことを提案したのでした。

 

 

初日5月2日(木)

往路の一番の難所は神戸から淡路に渡る明石大橋に続く道路の渋滞だと予想していました。

少しでも早く淡路に渡ろう。

自宅を出発したのは6時45分。

明石大橋を渡ったのは8時前でした。

この時間はまだ車の数はさほど多くなく、快適に進むことができました。

順調な旅の始まりです(^_^)

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初日の行程は、

自宅(神戸市)~仁淀川・安居渓谷(高知県吾川郡仁淀川町)~高知市街散策・はりまや橋(高知市はりまや町)・夕食(高知市帯屋町)~ホテル(高知市はりまや町)ð´

 

仁淀ブルーを観に行って土佐料理を食べるのが初日の目的です。

 

高知自動車道を大豊インターで下りしばらく西へ車を走らせて、見つけたファミリーマートのイートインで昼食を済ませました。

さらに西へ車を走らせ、国道から分かれて県道へ。

そこから先、最初の目的地・安居渓谷に至るまでの県道は、車1台がようやく通れるだけの道幅しかありませんでした。

対向車が来ないことを願いながらおそるおそるアクセルを踏みました。

何度か対向車と出会いましたが、たまたま少し道幅が広くなっている場所だったので、なんとかすれ違うことができました。

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神戸を出てから約6時間。

もうすぐ13時になろうとする頃、仁淀川の源流の一つ安居川を威勢良く泳ぐ鯉のぼりたちに出会いました。

谷間を駆け抜ける初夏の風が気持ち良いばかり。

みんな同じ方に顔を向けてチームワーク抜群です。

この先、谷川を渡る吊り橋やら、作家宮尾登美子が若い頃教師として勤めたという小学校を過ぎ、細く長く続く県道をさらに30分ほど進みます。

一番奥まったところに宝来荘という宿がありました。

その一角だけ少し開けていて宿の駐車場がありました。

車をそこに停め、そこからは歩きます。

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高知を流れる清流としては四万十川が広く知られていますが、実は仁淀川の方がさらに美しいと言う人もいます。

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ところで仁淀ブルーです。

はじめに仁淀川ですが、源流は石鎚山系、長さは124㎞あり、国土交通省の「水質が最も良好な河川」として何度も選定されています。

「仁淀ブルー」は写真家高橋宣之氏が名付けられました。

透明度の高い渓谷などの水中では、青色の光線が最も長く進むそうです。

ここ安居渓谷一帯は、川底の石が白っぽくて、神秘的な仁淀ブルーが見やすい条件がそろっていると言います。

仁淀ブルーは毎年8月中旬頃から1月中旬頃まで見られ、その時期以外では、ブルーというよりはグリーンに近い色になります。

これは藻類などの生育と関係しているようで、川の上から見ると、藻の色が映るため、完全なブルーには見えないそうです。

わたしたちが訪れたゴールデンウィークは、仁淀グリーンの時季でした。

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飛龍の滝です。

落差30mほどの2段の滝で、龍が身体をくねらせ飛び立つような姿から名付けられたと言います。

近くまで行くと水しぶきを浴びてびっしょりに。

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小さいながらも、沈下橋です。

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水面が滑らか。

七色を帯びてゆるゆると流れていきます。

印象派の絵画のようです…

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せり割り洞窟。

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水辺と車道とを繋ぐ石段は濃い苔に覆われています。

木漏れ日が石段のところどころを照らしています。

まだ蝉の声が聞こえてくる季節ではありません。

渓谷には、時折さえずる山鳥の声と、あとは川の流れる音だけが響き渡っています。

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背龍の滝です。

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そして、さらに川を遡り、見つけました。

 

水晶淵。

この淵が仁淀ブルーが一番鮮やかに見える場所だそうです。 

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豪快に水を落とす二段の滝。

砂防ダムが作った滝です。

人工の滝ですが、深い森の緑にすっかりと馴染んで息を飲む美しさでした。

滝壺にあたる手前の淵を水晶淵と呼ぶそうです

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水晶淵はこの時季、見事な緑色に輝いていました。

もう一度、夏にここを訪れたい。

仁淀ブルーに会ってみたい。

強くそう思いました。 

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新緑の渓谷を写真を撮りながらのんびり歩いて2時間弱。

豊かな水の恵みが生み出した光景にすっぽりと包まれ、心洗われる気分に浸ることができました。

 

ところで、安居渓谷散策でお世話になった宝来荘の駐車場は、なんと無料です。

これほどの美しい景色がまったくの無料で観られるって、、、

得した、というより、こんなことで本当にいいの?

心苦しさを覚えてしまうほどでした。

何かお返しをする手がないか探しましたが、宝来荘さんのレストランは昼間だけの営業のようで、すでに閉まっていました。

見つけたのはジュースの自動販売機くらい。

とりあえず、そこでペットボトルのお茶を買いましたが、、、

宝来荘さんのホームページはこちらです。

https://yasuikeikoku-horaiso.com/

 

駐車場に戻ってきたのが15時過ぎでした。

仁淀川流域にはもう一つ、中津渓谷という美しい場所があるそうなのですが、残念ながら時間が足りずにそちらには寄れませんでした。

一路、高知市に向かいます。

 

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着きました。

時刻は18時頃です。

高知市は路面電車(とさでん)が走る街です。

夕日を浴びて、高知市はりまや町を走る電車。

写真では見づらいですが、電車の行き先は「ごめん」と表示されています。

道路のど真ん中を走ってみんなを脅かして「ごめん」と謝っているわけではありません。

この電車が走る路線の東側の終点が後免町(ごめんまち、高知県南国市)で、行先を「ごめん」とひらがなで表示しているのです。

高知市には何度か来ましたが、この表示を目にするたびに心が温かくなります。

 

さて夕食です。

土佐料理です。

鰹のトロを探しに街に出かけます。 

先にホテルにチェックインし、荷物を置いてから出かけることにしました。

ホテルに着いてから何軒か電話してみましたが、ガイドブックで紹介されている土佐料理のお店はどこも予約で満席でした。

ですが、ガイドブックに載っているだけがお店じゃないし、商店街を歩いて探すことにしました。

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途中で見つけた「はりまや橋」。

平成10年に再建されたものです。

日本三大がっかり名所のひとつに数えられているとかいないとか。

橋のたもとで老夫婦が自撮棒で記念写真を撮っていらっしゃる姿を見かけました。

時代の移り変わりをしみじみと実感したわたしには、とても興味深い名所でした。

その先の帯屋町商店街を歩いて行くと、数組の行列ができているお店を見つけました。

メニューには「ハランボ」もありました。

ハランボはこの旅行の目的のひとつである、鰹のトロです。

少し待たないといけないようでしたが、もうお腹もぺこぺこだし、そのお店に決めました。

厨房の一角で勢いよく炎が上がります。

藁で鰹を焼いているのです。

写真は撮れなかったので、「もっと素材太郎さんによる写真ACからの写真」をお借りして紹介させていただきます。

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こんな感じで勢いよく鰹は炙られていました。

藁特有の香りは燻製の香りにも似ています。

状態のいい空洞のある藁は、瞬時に800度もの高温に燃え上がり、鰹の表面だけを炙ることができます。

鰹の表面を高温の炎で一気に焼き上げることによって、鰹の旨みを閉じ込め、中まで熱を通さないことで、鮮度の良い状態を維持することができるそうです。

これが本場の鰹のタタキ。 

藁焼きにして天日塩で食べる鰹の塩タタキです。

いつものスーパーで買ってくる鰹のタタキは、これとはまったく別の食べ物だとつくづく思い知らされました。

藁焼き鰹の塩タタキ、絶品です(^_^)

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左手前が鯨、中央奥が藁焼き鰹の塩タタキ、そして右側の黒いお皿にレモン、大根おろしと一緒に乗っているのが鰹のトロです。

やっと出会えた鰹のトロは地元高知ではハランボと呼ばれていました。

ハランボは鰹1尾から1枚しか取ることができないカツオの腹の部位(ハラミ)になります。

希少部位で、鮮度が命のため、県外にはほとんど出回ることがないというご当地食材だそうです。

塩焼きで食べると、脂がとろけるように出てきて、それがたまらなく美味しい、とのことでした。

が、マグロのトロをイメージしていたわたしたちには、このハランボの食レポをする資格はそもそもなかったように思われます。

鰹のトロについてはお忘れください。

その代わり、なんと言っても美味しかったのは、藁焼き鰹の塩タタキ

これに尽きると思います。

 

お店からの帰り、お腹いっぱい満ち足りたわたしたちは、ホテルに戻ってからさらに食べるおやつを探すべくコンビニに立ち寄ったのです。

そこで見つけたのが、ミレーのビスケット。

神戸では滅多に見かけないミレーのビスケットがファミリマートで普通に売られていました。

しかも、キャラメル風味だって。

これもなかなかの美味でした。

今回の旅行に一緒に来れなかった長男Mへのお土産のひとつに買って帰ったのは言うまでもありません。

 

 

これで、旅行初日が終わりましたが、思ったより長くなってしまいました。

今回はとりあえず、ここまでにしたいと思います。

続きはまたいずれ書きますので、よろしくお願いします<(_ _)>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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山猫🐾@森の奥へ

似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。