森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

白内障日帰り手術 多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術 体験記

  

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数日前、目の手術を受けました。

手術名は「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」、白内障の手術です。

今回の記事はその覚書、体験記です。

 

 

目次 

 

 

白内障の診断を受けてから手術に至るまで

 

白内障の症状を指摘されたのは数年前、コンタクトレンズ購入のために眼科を受診したときのことでした。

左眼が見づらいとか、曇ったように見えるとか、虫が飛んでいるように見えるとか、ありませんか?

と、ドクターに訊かれました。

自覚症状はまったくありませんでした。

まさか、大げさ。

というのが正直な思いでした。

わたしはもうすでに若いと言える年齢ではありませんが、それにしても早すぎる、、、そう思いました。

白内障の原因はいくつかあるようですが、わたしの場合は「加齢」です。

後で調べると、Wikipediaにはこうありました。

加齢による発症を特に「加齢性白内障」と呼ぶ。(老人性白内障という表現もあるが実際には50代の半数がこの症状を起こしているという調査報告もあり「老人性」という言葉は不適切という見解もある)

ちなみにわたしは50代。

なんだ、、、決して早すぎるわけではないんだ。

少し安心しましたが、それで症状が軽くなるわけではありません。

とりあえず、

自覚症状がないようなので、今後も様子を診ていきましょう。

ドクターとはそういう話になりました。

それから数年が過ぎ、左眼で見る世界は常に靄がかかったような状態になってきました。

思っていたより早く、症状は進行してきたようです。

この春以降、コンタクトレンズ(近視用です)の度数をいくら調整しても視力があまり改善されなくなってきました。

そのうえ老眼も始まりました。

老眼鏡をかけていても、スマホやパソコンの画面を見たり、字を書いたりするのに不便を感じるようになってきました。

わたしの職場は夏に休暇を取りやすいので、この夏に手術することを決め、ドクターに相談しました。

手術は2カ月待ちくらいだと以前教えてもらっていましたから、相談したのは6月のはじめ頃だったと思います。

わたしがかかっている眼科には入院施設がなく、日帰り手術だけを扱っています。

手術を希望してから何度か通院し、いくつかの検査(手術のための情報を得るための検査と、手術後の見え方を決定するための検査)を受けました。

また、別の病気で診てもらっている場合は、そこの担当医と手術に向けて体調を確認したりする必要もありました。

こうして、わたしの左眼の手術は7月26日と決まりました。

 

 

白内障の手術と費用、眼内レンズについて

 

白内障とは、眼の中のレンズである「水晶体」が白く濁る病気です。

薬物治療では、濁ってしまった水晶体を元に戻すことはできないそうです。

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そこで、濁った水晶体を取り除き、人工の水晶体である眼内レンズを挿入する手術を施します。

手術は以下のような流れで行われます。

①水晶体前嚢を切開する

 黒目と白目の境を3mmくらい切開する。

②濁った水晶体の中身を吸い出す

 超音波で水晶体の中身を細かく砕いて吸い出す。

③眼内レンズを挿入する

 空になった水晶体嚢内に、直径約6mmの眼内レンズを折りたたんで挿入し、固定する。

一般的に手術時間は10分~15分くらい。

わたしの場合もほぼこのくらいの時間で終わりました。

両眼とも手術する場合が多いようですが、そのときは1週間あけて片眼ずつ行います。

わたしの右眼はまだ症状が強く出ていない段階でしたので、左眼だけ行うことになりました。

費用はどの眼内レンズを使うかで変わってきます。

レンズには単焦点レンズと多焦点レンズとがあり、多焦点には遠近の2焦点レンズと遠近プラス中間距離の3焦点レンズがありますので、おおまかに言えば3種類に分けられます。

単焦点レンズを使う場合は、費用はすべて保険対象となります。

自己負担額は負担割合によって異なりますが、片方で1万5,000円~5万円程度とのこと。

多焦点レンズには保険は適応されません。

ですので、費用は自己負担となります。

2焦点は片方で40万円ほど、3焦点レンズの場合が最も高額で、左右両方手術すると100万円近くになると聞きました。

単焦点レンズの場合は遠くか近くかのどちらかにしか焦点が合っていないので、遠くに合わせた場合は近くが見づらく、近くに合わせた場合は遠くが見づらくなってしまいます。

それで不都合なら、手術後も近視用か老眼用のメガネを使うことになります。

では、2焦点レンズなら遠近両方に焦点が合っているので両方がよく見えるようになるのかというと、それほどでもないらしくて、遠くも近くもそれなりに見えるようにはなるけれど、単焦点レンズの方が見え方としては優れているとのことでした。

そのうえ、多焦点レンズは人によっては視界全体がとても明るく、眩し過ぎるほどになる場合もあるから過度の期待はしないように、とドクターからは釘を刺されました。

費用のことも含めて、どのレンズにするのか難しいところです。

悩んだ末、わたしは遠近2焦点の多焦点レンズを選びました。

うまくいけば、老眼が始まった近視のわたしの視力は劇的に回復するかもしれません。

ちなみに、眼内レンズの素材は特別な手入れは必要なく、30年以上もつといわれています。

他の病気を起こさない限り、視力が落ちることはないようです。

実は、わたしが加入している生命保険で先進医療特約というものに入っていたので訊いてみると、厚生労働省が認可した多焦点レンズであれば保険適用が可能とのことだったのです。

一番便利そうな3焦点レンズはまだ認可されていませんが、いくつかある2焦点レンズのうち厚生労働省が認可したレンズがありました。

これなら、手術費用は全額保険会社に負担してもらえます。

それを使って手術してもらうことにしました。 

 

 

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術 体験記

 

手術の一週間前から一日4回、細菌感染を抑える目薬(クラビット)の点眼を続けてきました。

7月26日、いよいよ手術の日です。

手術自体はほんの短時間で終わって、その日のうちに帰宅できます。

ですが、だからと言って決して簡単な手術ではないようです。

最悪の場合は失明の危険性がないとも言えません。

それなりに緊張感はありました。

数日洗髪できないので、家を出る前にシャワーを浴びて頭をしっかり洗いました。

それにしても、先日の西日本豪雨以来続く猛暑。

この暑さの中、少なくとも4日間頭が洗えないなんて、、、

このことも心配の種ではありました。

予約していた11時30分の少し前、眼科に着きました。

時間ちょうどにわたしの名前が呼ばれ、手術準備が始まりました。

最初に「ひだり」と書いたプレートを胸に付けられ、左眉の上にシールを貼られました。

眼圧、血圧、体温を測ったあと、瞳孔を開かせるための目薬の点眼が続きます。

待合室には同じプレートを付けた人があと3人いらっしゃいました。

そのうちの1人はわたしと同世代かな? 残り2人は70代か80代くらいの女性でした。

わたしを含めた4人のプレートには同じく「ひだり」と書いてあります。

この日は左眼手術の日らしいと分かりました。

左右の間違いを防ぐためでしょう。

1人目の方が手術室に入って行かれました。

それが1時ちょうど。

3人目のわたしは1時半頃に名前を呼ばれました。

手術室手前にある控室に入ると手術着を着せられ、胸に心電図検査用の吸盤を付けられました。

そして、前の人の手術が終わるのを控室で待つ間、ベッドに寝かされたまま瞼の上や目の中を丁寧に洗浄されました。

BGMが流れていますが、その音に混ざって、イヤアアアアア…という甲高い女性の声が聞こえてきます。

いや、そんなわけはない。

空耳です。

きっと空耳に違いありません。

しばらくして、手術室から70代くらいの女性がナースに手を引かれて静かに出てきました。

聞こえてくる会話からすると、何事もなく手術は終わったようです。

やっぱり空耳でした。

そしてとうとうわたしの順番がきました。

ベッドが電動で傾き、身体を起こされます。

ナースが手を取ってわたしに立つよう促します。

わたしは足裏に力を入れて立ち上がろうとしますが、身体がふわふわした感じで力が入りません。

よほど緊張していたんでしょうね、、、

手術室には執刀のドクター以外に3人のスタッフがいらっしゃいました。

手術台に寝かされ、右腕に血圧計、左手の親指にパルスオキシメーターを付けられました。

そして、わたしが着ていた手術着の首の後ろの部分から布状のものが引っ張り出されて、それで顔が覆われ、左眼の部分に開けられた穴から眼だけが外に露出する状態にされました。

眼を閉じないように周りを固定され、さらにもう一度眼を洗浄されて、最後に麻酔を点眼されました。

眼だけの局所麻酔です。

実は、これを一番怖れていました。

麻酔が効いて眼は痛みを感じないでしょうけれど、わたしの意識ははっきりしているはずです。

ですから、手術中に起こることすべてを見ることができるのです。

見たくないけど、見てしまうのです。

手術を受けることを決めてから何度も想像しました。

わたしの左眼に、先端が鋭利に尖ったメスが近づいてきてキラリと怪しく光り、それが眼に突きたてられる、、、その場面を、です。

水晶体がえぐり取られた後、わたしの左眼は一体何を見るのだろう。

真っ暗になるんだろうか。それとも真っ赤か?

そんなことを何度も想像していました。

 

さて、手術開始です。

不思議な光が見えました。

瞳孔がすっかり開ききっているせいでしょうか、実は、強い近視の左眼に映る映像は少しもはっきりせず、ぼんやりとした光がただ広がって見えるだけでした。

ぼんやりとした光の中に何かが動いている影が映るばかりです。

何かが、多分メスが、目玉を押してくる圧迫感みたいなものを感じました。

麻酔が効いているせいで痛みはまったくなかったのに、手術着の内側で組んだ手の指先に強く力が入りました。

それに気づいて力を弛めても、すぐにまた指先にはガチガチに力が入っています。

メスが入ったな、という瞬間───

白いペンで落書きしたみたいな泡が視界の左隅に現れました。

輪郭だけを丸く描いた大小いくつかの泡でした。

すぐにそれらは流れていって、どこかに消えてしまいました。

眼の上で何かが動かされる気配があり、それに合わせて眩しいほどの光がゆらゆらと動いていきました。

一瞬、光がクリアになりました。

天井のようなものが見えた気がします。

おそらくその瞬間に新しいレンズが入ったのだと思います。

しばらくして眼帯が付けられて視界が暗くなり、手術は終わりました。

10分ほどの出来事だったでしょう。

 

手術室から出てしばらくベッドで休みました。

術後は眼帯をしているために歩きづらく転倒する危険があるからでしょうか、眼科から自宅まではタクシーで帰るか、誰かに自家用車で迎えに来てもらうように、と言われていました。

手術跡は鈍い痛みがありましたが、帰宅後痛み止めを飲んですぐに治りました。

 

 

術後のこと

 

7月26日の手術後の通院は、手術翌日の27日と翌々日の28日、一日おいて30日、そして手術から一週間後の8月2日、二週間後、一ヵ月後となっています。

入院する必要はないものの、手術から一週間は自宅静養が望ましいようです。

抗生剤の服用と目薬をしばらく続けます。

重いものを持ったり、スポーツをしたり、旅行、運転も、もちろんタバコも飲酒も、しばらくは我慢です。

手術当日は入浴は禁止、翌日からは顔から下の入浴は可能ですが、洗髪・洗顔はダメです。

食事の制限はありません。

お酒を飲めないのでただただ貪欲に食べます。

女性の場合は、いや、男性もかな? 眼の周囲のお化粧や毛染め、パーマにもしばらくは制限があるようです。

頭が洗えないので、手術の何日か前に散髪に行って短く刈ってもらってきました。

手術から4日後の30日の通院後には、頭も顔も洗うことができるようになるそうです。

洗髪解禁までは、できるだけ汗をかかないよう涼しい部屋でおとなしく過ごし、濡れタオルや濡れティッシュで頻繁に頭を拭いています。

どうしても洗いたければ、美容室に訳を話して、術部に絶対に水などがかからないようにして洗ってもらう方法もあるそうです。

でも、手術から二日目、わたしは今のところ濡れタオルで頭を拭き拭き、何とか無事に過ごしています。

 

手術翌日の通院で眼帯を外してもらいました。

ドラマでよく観るような、眼帯を外しても眩しくて眼が開けられない、そんな状況を少し思い浮かべ、眩しさに備えてすぐには眼を開けないでいました。

でも、まだ開けないでよかったらしくて、眼の周囲の洗浄が先でした。

眼の周りと瞼の上を、それこそ腫れ物に触るように丁寧に拭ってもらって、そして、眼を開ける流れになりました。

、、、と言うほど大したことではなくて、そもそも眼帯をつけているときから時々薄く目を開けて、眼帯越しに外の光を感じていました。

眼帯を手でふさげば暗くなったし、手を離せば明るさを感じることができていました。

なので、ただゆっくりと眼を開いて、光だけでなく、視力が戻っていることを確認するだけでした。

眼帯が外れてからの第一印象は視界が明るいこととあまりにクリアなこと。

あれから数日経ってそのときの感動は薄らぎましたが、本当に世界が輝いて見えました。

世界には光が満ち溢れていて、本当に綺麗だと思いました。

診察の結果、術後の経過は順調であること、視力も正常で、遠方と近くと、それぞれが想定した通りに見えていることを確認してもらいました。

 

手術跡がしっかり塞がるまでしばらくは左眼の保護のためにゴーグルを着けて寝ます。

手術跡が完全に塞がるまでは1か月ほどかかるそうです。

度は入っていません。

外部からの衝撃に備えるものです。

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写真は昼間着用する場合のもので、寝るときには耳にかかるフレーム部分をヘッドバンドに付け替えて使います。

眼鏡と違って鼻あての部分がありませんので、ぴったりと顔に密着できる仕組みになっています。

 

 

見え方の変化について

 

・眼帯をしているとき(術後から翌日まで)

眼帯をしているため見えるのが片方だけになり、遠近感がとりにくくて慣れるまでは足元がおぼつかない感じでした。

世界が平面に見えました。

家に帰り家事のあれこれで1階2階を何度か行き来しました。

そのうち、最初は壁に触れてバランスを取りながらだったのが、片方の眼だけでなんとなく階段の段差が立体的に見えてくるようになりました。

ところが、翌日の通院の際に外に出て道を歩いていくときは、世界はまた元の平面に戻って見えました。

家の階段が立体的に見えたように思えたのは、眼が慣れただけのことだったのかもしれません。

初めての場所では平面にしか見えないのです。

眼は繰り返し見ることで平面を立体にとらえる力を持っているようです

 

・眼帯が外れてから(手術の翌日)

手術しなかった右眼には近視用のコンタクトレンズを装着しています。

眼帯をしている間は、その右眼だけで見ていました。

新しく左眼で見えるようになった世界は3Dメガネを通したような膨らんだ映像に感じられました。

自分の方に向かって眼科の待合室の壁が勢いよく浮き出ているように見えました。

立体的と言うよりすべてが飛び出してくるようでした。

一方で、右眼で見る世界はぼんやりと曇ってしまいました。

左眼の方があきらかに視力が良くなったからのようです。

眼帯が外れて、やっと左右両方の眼で世界を見ることができるようになったのに、3Dメガネをかけたまま歩くようで、頭がくらくらしました。

くらくら感はその後もしばらく続きます。

スマホの画面を見てみました。

すぐには画面に焦点が合わずスマホの文字はぼやけて見えました。

近くの見え方は手術前とそれほど変わっていないのかもしれない。

視力が劇的に回復するなんて調子良すぎた、そうも思いました。

帰宅してから、新聞を読んでみることにしました。

新聞から眼を遠ざけたり、近づけてみたり。

それを繰り返すうちに、紙面から30cm~40cmくらいのところで新聞記事の活字に焦点が合うことが分かりました。

焦点が合ってから記事を読み始めると、苦労することなく活字を追っていくことができました。

少しずつ新しい左眼の使い方が分かってきたような気がしました。

 

・両方の眼で見続けて(手術の翌々日)

右眼を閉じて左だけで見てみます。

次に左眼を閉じて右だけで見てみます。

あきらかに、新しい眼内レンズが入った左眼で見る方が視界がはっきりとしています。

遠くを見ても近くを見てもそれは変わりません。

手術の翌々日を迎えた頃には、両眼を開けていても左眼を主に使って世界を見るように変わってきたのを感じました。

左眼優位で見ることに慣れると、近くで見る文字も見やすくなってきました。

わたしが意識して左右の眼の使い方を変えているわけではありません。

脳がひとりで使い方を調整しているようです。

左眼で得た視覚情報と右眼から得たそれとを脳のどこかに集めて解析し、よりリアルで立体的な映像に加工して映し出す。

そんな作業を、わたしが何も考えずとも、脳が勝手に行っているようです。

それも、おそらくとんでもない速さで。

その解析力はどんどんと精度を上げていき、すぐにわたしは苦もなく遠くや近くを見分けることができるようになっていく、そんなふうに思えてきました。

ヒトにはヒト自身が知らない能力がまだまだ隠されているようです。

 

 

その後の経過

 

2018年7月30日追記

 

ブックマークやコメント欄、Twitterなどにたくさんのお見舞いメッセージをいただきました。

とても励みになりました。

ありがとうございます。

手術から4日目の検査を終えました。

順調な経過とのことでした。

見え方には概ね満足しています。

洗髪洗顔の許可が出ました\(^o^)/

 

 

2018年8月2日追記

 

手術から1週間経ちました。

頭を洗えるようになるまでは時間が過ぎるのが遅く感じましたが、洗髪洗顔の許可が出てからは早く過ぎたように思います。

今日の通院で、術後の経過が順調であることを確認してもらい、日常生活全般について元通り、普通にしてよいとの許可をもらいました。

今日からはアルコールもOKです。

帰り道、開放感のせいでしょうか、散歩したくなりました。

バスを途中で降り、少し遠回り。

汗びっしょりになりました。

これで、美味しくビールが飲めます(^_^)

 

 

 

 

 

 

 

 

  
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山猫@森の奥へ
似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。