森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

早朝の奇妙な出来事~大雨洪水警報発令中の神戸から~

 
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7月5日未明に出された大雨警報が7日時点でまだ解除されず、3日目に入りました。

神戸アメダスの記録によれば、こちら神戸市内では6日22時30分現在で48時間の総雨量が368.5mmに及んでいます。

これだけ激しく長時間降り続く雨は、わたしには経験がありません。

雨雲レーダーで見る濃い雲の流れが南西方向から次々に阪神間に襲いかかってくる解析画像はあまりに不気味です。

予想図を見ると、さらに新手の雨雲が絶え間なく海から供給され、こちらに向かってどんどん流れくるようです。

今神戸の雨は小休止していますが、勢いが弱まったわけではなくて、雲の流れが西に移っただけです。

移っていった先の九州、中国地方では大雨特別警報が出されました。

大阪北部地震の発生からまだ二十日足らずです。

相次ぎ猛威を振るう自然災害に心が冷える思いがしています。

駅前の道路が水につかり、マンホールから泥水が吹き上げていました。

ニュース番組で何度も見たこの映像をわたしは初めて自分の目で直接目撃しました。

六甲山南麓の傾斜地では土砂崩れの被害が伝えられ、いくつかの地区に避難指示が出されました。

わたしの自宅近隣でも崩れた土砂が道をふさぎ、避難指示が出ています。

 

6日早朝3時半頃のことです。わたしは浅い眠りでうつらうつらとしていました。

突然部屋が明るくなりました。

すぐに身体を起こし隣で寝ていた家人を確認しました。

確かに家人は寝ていました。

えっ? 一体、誰が灯りを点けたんだ……

 

「ねえ、電気点けた?」

と、わたしは家人に小さく声をかけました。

目を覚ました家人は眩しそうに顔を歪ませてから、ふと、その顔を寝室から廊下を隔てた先にあるリビングの方に向けました。

暑いので寝室のドアは開けたままにしていました。

「何かが光ってる。」

家人が言います。

リビング側のドアは閉めていましたが、ドアのすりガラスに白く光る何かがぼんやりと映っていました。

わたしはすぐに寝室を出て行き、リビングのドアを開けました。

白い光と、そしてもう一つ光が見えました。

正面にある壁の上方に赤い光が点滅していました。

すぐに点滅は終わり、それは白い小さな点になりました。

それきり光は動きません。

「デンワデス」

奇妙な声がしました。したような気がしました。

背筋を冷たいものが走りました。

ざわざわと激しく降りしきる雨音が思い出したように不意に聞こえてきました。

わたしはゆっくりとリビングに入っていきました。

初めに見えたぼんやりとした白い光は固定電話の液晶画面の明かりでした。

しばらくお待ちください

画面のメッセージはそう告げていました。

何を待てと?

わたしは待たずに、リビングの右手にある玄関に向かいました。

そして照明を点け、玄関のドアがしっかりと施錠されているのを確かめました。

知らない誰かがこの家にいたわけではなかった。

わたしが一番知りたかったのはそのことでした。

それから改めてリビングの壁の上を確認しました。

小さな点はガス漏れ警報機からの光でした。

それだけのことでした。

何の異常もありませんでした。

わたしは寝室に戻って、光の正体について家人に報告しました。

 

「あれ? 今度は玄関の方が明るいよ。」

家人が言います。

あっ、あれは、、、

 

わたしが玄関の照明を消し忘れたみたいです。

今度は家人が行きました。

玄関の照明を消し、戻ってきた家人が気味悪げに言います。

「電話の画面に日付が出てて、最初は『1月1日』とあったのに、帰ってくるときもう一度見ると『7月6日』になってた。」

と。

たぶん、停電していたのが復旧して、いくつかの電気製品が再起動したせいだろうね。

二人でそう合点することにし、またもう一度眠りにつきました。

 

数時間後の朝、まだまだ雨が激しく降っていました。

駅まで車で送ってもらう道すがら、道路を快適な水路のようにして雨水が勢いよく流れていくのが見えました。

水の流れを踏みながら車を走らせます。

用心しないとハンドルを取られてしまいそうでした。

車が三叉路にさしかかりました。

そこで一旦停止。

右手の道路は中央にフェンスが立てられ、通行止めにされていました。

一瞬そちらを見ると、電力会社の工事車両がクレーンで人を乗せたワゴンを持ち上げているのが目に入りました。

電線に何かが引っかかっているように見えました。

どうやら朝の停電の原因はこれだったようです。

わたしは小さくため息を吐きました。

本当のところ、その朝の出来事は何かの怪奇現象だったんじゃないか、と少しだけ、ほんの少しだけ疑っていたのでした。

 

 

そして駅に着きました。

遅れてホームに入ってきた電車に乗っている乗客はまばらでした。

安全を最重視しつつ超徐行運転で走るので、わたしはもう少しで遅刻するところでした。

 

途中で見かけた増水した川の映像ですが、危険ですのであまり川に近づいてはいけません(^^;

 

そして案の定、行きに走っていた阪急電車神戸線はその後止まってしまいました。

だから言わんこっちゃない(^^;

ですが、、、阪神間にはJRと阪急電鉄、阪神電車の3本の鉄道が東西に並走しています。

ですので、阪急がだめでも阪神で帰れます(^_^)

 

 

家に帰ると、庭が水没の危機に瀕していました。

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今回の豪雨で「線状降水帯」という言葉をしばしば聞きました。

それで思い出しました。

ちょうど一年前、わたしはこんな記事を書いていました。 

www.keystoneforest.net

 

兵庫県内にも大雨特別警報が発令されました。

雨は明日8日まで降り続く予報です。

広範囲に被害をもたらしている今回の豪雨はまだまだ勢いを衰えさせていません。

さらに猛烈な強さを持つ台風8号も近づきつつあるようです。

くれぐれもお気をつけください。

わが家も、いつでも避難できるように荷物をまとめています。

 

 

 

 

 

 

 

  
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山猫@森の奥へ
似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。