森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

線状降水帯と特殊詐欺とカマキリと。

 

 

各地に酷い雨が降った一週間でした。

「ゲリラ豪雨」という言葉が流行語大賞ベスト10に入ったのが2008年だそうです。
2013年には気象庁が「警報」のさらに一段階上に「(大雨)特別警報」という区分を設けてその運用を始めました。
今回の豪雨では「線状降水帯」という気象用語を知りました。

従来なかった異常気象が新しい言葉を作り出すのでしょうけれど、新しく生まれた用語がさらにまた別の災害を生み出していくような気味の悪さを感じます。

 

幸いなことに、私の住む街では雨はさほど降りませんでした。
庭の花や野菜たちにも被害はありませんでした。

そして、週末。
またも、野菜の収穫です。
今日も大根を抜きました。
2本抜いたうちの1本です(2本並べて写真に撮るのを忘れていました)。

 

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もう1本はまっすぐ立派に育っていたのです。言い訳じゃないです。
そのすぐ横に生えていた大根なのに、なぜか途中から迷走してしまっています

先週だったか、収穫した大根には、やたらと色っぽく足を組んだような二股に分かれた大根がありました。

大根足って、足が太いという意味じゃなくて、色っぽい足という意味があるのかもしれません。

で、今日収穫した2本のうちの立派な方は、隣家のおばさんにお裾分けしました。
おばさんとは庭仕事をしているときに、塀越しにおしゃべりを交わす間柄です。
野菜の種を何度かもらったことがあったので、そのお返しのつもりでもありました。

野菜作りのことを少ししゃべって、「今度は冬大根の種をあげるね」と言ってもらったのを機に庭仕事に戻ろうとしたところ、おばさんはこんな話を始められました。

 

オレオレ詐欺の電話がかかってきたのよ、と。

電話の主は、とある信用保証協会を名乗り、心斎橋のある銀行の個人情報が流出してしまった、と切り出したそうです。
そして、「お宅も口座を止めないと被害があるかもしれない」と言い出すので、おばさんはすっかり怖くなってしまったそうです。
どこどこ銀行のなんとか支店に口座を持っているでしょう? と最寄り駅の近くにある銀行・支店の名前を相手が言います。
この辺りの住民ならたいていそこのATMを使いますから、おそらく適当に言っただけだと思いますが、おばさんはそれですっかり信用してしまわれたみたいです。
口座番号を教えてほしい、とか、キャッシュカードを作り直した方がいい、とか、作り直してあげるから暗証番号を考えて、とか。
巧みにおばさんを誘導しようとしたらしいです。
暗証番号の数字は忘れるといけないのでよく考えてから返事する、とおばさんが伝えると、相手は、夕方担当の者がお宅に伺うから、と言ってようやく電話を切った、とのことでした。

おばさんは電話の後、すぐにその支店に確認の電話をかけられたので、話を聞いた行員の方が警察に通報し、難を逃れられた、ということでした。
ちなみに、警察官がしばらく張り込みをしたようですが、犯人は残念ながら現れなかった、という話です。

 

「オレオレ詐欺」が多発し始めたのが2003年頃だそうです。
その翌2004年には警察庁が「振り込め詐欺」と命名します。
そして、2013年には実態に見合う新名称として、「母さん助けて詐欺」「ニセ電話詐欺」「親心利用詐欺」が発表されました。
それらの総称が「特殊詐欺」です。

ここでも、生み出された新しい言葉が、また新しい犯罪を呼び寄せているような不気味さを感じます。

 

ところで、今日収穫した大根をシンクで水洗いし、土を落としていると、シンクの底で動くものを見つけました。

ちなみに、この収穫した野菜の水洗いは、わが家では大変重要な任務です。
わが家の野菜は完全無農薬、有機栽培ですから、葉っぱの裏にはいろんなものがくっついています。
蟻やアオムシやダンゴムシたちです。
これを洗い落とすことができるのはわが家では私しかいません。
丹念に葉っぱの表に裏に水を流し、水を張ったボウルに着けて、絶対に何もいないのを確認してから冷蔵庫にしまいます。

 

で、今日見つけたのは、こんなやつでした。
 

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シンクの中でもがいているのを捕まえて、いや、救出して写真を撮りました。
とてもシャイな子で、写真を嫌がり、どんどん逃げていこうとします。

 

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見えますか。

こんなに小さいくせに、私に向かってカマを振りかざし威嚇してきました。

虫だって生きていくために必死で戦います。

 

生きていくために正しく努力している人に対して、天災や犯罪者たちはあまりにも非情なことを平気でするのです。

私たちにできるのは、忘れないこと、怖れること、警戒すること、そして支えあうこと、でしょうか。

 

おばさんは別れ際にこうおっしゃいました。

「何かあったら、お願いしますね」と。

それは、お互い様です。

 

 

 

 

 

 

 

  
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