あの日の昼頃まではそうやって、ずっと家の瓦礫を掘り返して過ごしていた。
いつ頃家に戻ったのかよく分からない。覚えているのは、わが家の薄暗い一階のダイニングで、食器棚から飛び散ったお皿や茶碗の山と、中身を全部放り出してドアが開いたままだった冷蔵庫の前で、一人で座っていた情景だ。
電話が鳴ったんだ。それで初めて電話が使えることが分かった。職場の上司からの安否を尋ねる電話だった。
電話って使えたんですね、そんな間の抜けたことをしゃべった覚えがある。
その後も何人かから電話があり、病院にいた母からもかかってきた。母も無事だった。次の日、一度家に戻ってくるという。その時初めて気づいた。内ポケットに入れていた父の位牌がない。それを謝ると、受話器の向こうから、お父さんが身代わりになってくれたんだね……、と母の小さく震える声が返ってきた。
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