森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

山猫、青春18きっぷで東京へ行く 2

「青春18きっぷ」というのは名称だけで、若者しか利用できない、というわけではない、と本や雑誌やネット上のいたるところに書いてある。勘違いする人がそれほど多いのだろうか。

山猫は、友人が「青春18きっぷ」を利用した一人旅をよくしていたので、そういう先入観はなかった。でも、友人からその旅行の話を聞いた何年か前は、「青春 18きっぷ」の旅の魅力を少しも分かっていなかった。今からすれば、「きっぷが余った。さあ、どう使おうか」と友人がボヤいていたときに、「一緒に連れ てって」とか「1回分譲って」とか頼めばよかった、とつくづく思う。

ちなみに、このきつぷは1枚で5回使える。バラして使うことはできない が、1枚を複数の人で使うことはできる。あまっても払い戻しは出来ない。値段は1枚11,850円(1回分が2,370円)。1回分でその日1日、JR線 の普通・快速列車の普通車自由席、BRT(バス高速輸送システム)、JR西日本宮島フェリーに自由に乗り降りできる。

山猫はMとKを含めて3人で神戸・東京間を往復したので、6回分必要だった。だから、きっぷ1枚では足りなかったのだ。

まだ一度しか「青春18きっぷ」の旅をしていないので自信を持って言える立場にはないが、この旅は絶対に面白い。マイカーで旅行すると、車内で過ごす時間は 単なる移動に費やすだけの大して意味のない時間だが、電車で旅をするとなれば、その旅は自宅を一歩外に出た時から始まる。それくらいの違いがある、気がす る。

目的地の観光や風物を楽しむことだけが旅行ではない。その目的にたどり着くまでの移動のあれこれも旅行の面白さなのだ、と今回当たり前のことを改めて感じた。

マイカーの車内には、その地方の方言丸出しでしゃべるおばさんも、部活帰りの高校生も、絶対に同乗してこない。マイカーで自宅から目的の宿まで直行すれば、 乗り継ぎのたびにホームの端から端まで走り回る必要もないし、乗り継ぎの時間をぼんやり待ちながら駅周辺の景色を眺めることもない。バスに乗るとき、前か ら乗るのか真ん中から乗るのか、料金はいつ支払うのか悩むことも全然ない。

が、そういう出会いが面白い。無駄な時間が楽しい。ワクワクするほどに。

目的地まで1分1秒でも速く快適に着けることを競ってきたのが、時代の趨勢だった。新幹線、高速道路、航空路の発達はその結果だ。

でも、「青春18きっぷ」の旅は、お金ではなく時間をたっぷりかける遠回りの旅だ。乗り心地もよくない(が、思ったほどひどくなかった)。時代の流れとは全 くの正反対。でも、それが面白い。このことにもっと早く気づけばよかった。もっとたっぷり時間があったときにこのきつぷで旅をすればよかった。

「青春18きっぷ」は国鉄(現JR)が増収策のひとつとして「青春18のびのびきっぷ」という名前で1982年に発売を開始した。1983年春季発売分から今の名前になったから、山猫がフリーターをしていた頃はちょうど発売されたばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

  
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