森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

散乱するごみと個人情報、ごみは宝の山か。

 
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山猫がすむ某市某地区では、火曜日と金曜日が燃えるごみの回収日です。

某市では、燃えるごみ、燃えないごみ、プラスティックごみ、缶びんペットボトルごみの4種類に分別してごみを回収することになっています。
11月3日文化の日は、休日ですが、金曜日なので、いつも通り燃えるごみの回収が行われました。
いつも8時半頃にパッカー車がやってきて、山積みになったごみ袋を持って帰ってくださいます。
この日の朝は8時過ぎに、仕事が休みだった山猫がごみを持って出ました。

 

ああ。。。

 

ごみが散乱していました。
遠めに見てもすぐに分かりました。

ごみ袋の一つが何者かによってごみ袋に掛けてあるネットの下から引っ張り出され、食い荒らされているようでした。

この惨状はちょっとひどくて、視覚的にあまり気持ちの良いものではありませんでしたので、もう少しましな、別の日に撮った写真を以下に掲げます。

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燃えるごみの内容の大半は紙類、衣服、そして残飯です。
何者かはこの残飯を食い荒らします。

ほかの地域でも同様の被害は見られると思います。
おそらく今朝の犯人はカラスでしょう。

某市某地区では、ある時季になるとイノシシも犯行に及ぶことがあります。
ですので、燃えるごみの日はあまり早朝にごみ出しをすると、大変なことになる場合があります。

山猫家がパッカー車がやってくる時間に合わせてごみ出しをするのは、こうした理由からでした。

ですが、今は食べ物が山に豊富にある時季なので、イノシシの犯行ではないと思われます。

犯人はカラスに間違いありません。

 

前置きが長くなりました。
書きたいのはカラスのことではありません。

山猫は一度家に戻って、しばらく考えました。

このままごみ回収場の惨状を見なかった知らなかったことにしてコーヒーを飲もうか、それとも掃除しに戻ろうか。

掃除するとなると、けっこう大変な清掃作業になるのは明白でした。

それをスルーすることで得られるコーヒー1杯の美味しさと、スルーしたことで後々味わう後悔の苦さとを天秤にかけて、しばらく山猫は考え込みました。

考え込みました。。。。。。。。。

そして、熟考の結果、後悔の苦さのほうが勝ると思い至り、ごみ袋と手袋とを持って重い腰を上げ、山猫はごみ回収場に引き返すことにしました。

 

えっと、ここから後の部分は生理的に気持ちのよくない描写が含まれますので、もし、気になるようでしたら、読み進めるのをおやめくださいね。

 

現場周辺には異様な匂いが漂っていました。

匂いの元はすぐに分かりました。

納豆のパック容器がいくつも落ちています。
粘って食べきれなかったらしき納豆が貼りついたままになっている容器もいくつかあります。
また、ごみ袋が食い破られたときの衝撃で飛び散ったと思われる納豆片が路面に散乱している様子も見受けられました。
それらが匂い、いえ、臭いの根源でした。

 

これだけ臭えばカラスに気づかれて当たり前。

その辺のことを考えてごみ袋に入れて欲しかったなーーー。

 

ごみをただ拾えば片が付くと思っていた自分の甘さを、山猫は呪いました。

それにしても、このごみを捨てた人はなんと納豆好きなことか。
全部でいくつくらい拾った?
10パック近くはあったかもしれません。

ごみ袋に一緒に入っていたと思われる男性物、形状からして中年くらいの男性物の長ズボンも1本落ちていました。
ズボンには納豆片がこびり付いていました。

それ以外で回収したごみは、枝豆の食べた後の殻多数とキムチ鍋スープの素1パック、紙類多数とスーパーでくれるレジ袋数点でした。

ここから山猫が推理したことを以下にまとめます。

時節柄手軽に食べられる鍋物を市販のスープで作り、それ以外に食材を調理した形跡がほとんど見られないこと、中年男性のものと思われるズボンが見つかったこと、納豆と枝豆を大量に食べていること。

これらがヒントです。

ここから導いた推理は、

この燃えるごみを捨てた人物は、一人暮らしをしている大豆類が大好きな中年以上の男性である。
ちなみに、この散乱しているごみが前回の燃えるごみ回収日以降に溜まったものだとすると、この人物は1日3食、毎回のように納豆を食べていることになる。
なので、この男性はすでに仕事を退職された60代以降の方ではないか、ということです。

 

で、この大胆な推理が正しいかどうかはさておき、山猫が思うのは、家庭から出されるごみは個人情報がてんこ盛りの山である、ということです。

今回拾ったごみの中には見られませんでしたが、山猫は家に届いたダイレクトメールなどは何も考えずにごみ箱に捨てています。
長男のMとか次男のKとかは定期テストの答案用紙を捨てているかもしれません。
誰かからもらった手紙を捨てているかもしれません。
着古した衣服も捨てています。下着類でさえ。

それらのごみはそのまま燃えるごみの日に回収場に出されます。。

 

山猫が学校に通っていた頃は、クラス・学年の名簿、住所録は全員分配られていました。
それに異議を唱える人なんかいなかったです。

ですが、山猫の子供たちは、友達の住所どころか電話番号も知らされていません。
知りたければ自分で聞けばいい、というスタンスです。
個人情報保護が厳しく言われる時代、それに異議を唱える人はいません。

 

クラスメートに年賀状を書くときくらいしか、意味を持たなかった住所録が金銭で売買される時代にいつの間にかなってしまいました。

燃えるごみが金銭で売買される時代がいつか来ないとは誰も言い切れないような気がします。

だって、燃えないごみ、缶びんペットボトルごみ、プラスティックごみ、これらは全てリサイクルするために分別されています。
リサイクルすると言うことは、金銭化できると言うことです。

燃えるごみだって金銭化できないことはないかもしれません。

 

次の火曜日、燃えるごみ回収の火曜日。

ごみを引っ張り出しているのが、カラスでもイノシシでもなくヒトである、という事態が起こらないという保証はないなあ、と、納豆臭を洗い落としながら山猫は考えていました。

ああ。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

  
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