森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

ゴキブリとコオロギと次男Kと。

 

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※今回の記事中には、虫嫌いの方には生理的に受けつけがたい表現が含まれていますので、苦手な方は読み進めるのをご遠慮いただいた方がいいかも、、、

 

休日の朝、仕事が休みなのに勝手に目が覚めた。
時刻はまだ6時前。
まだ寝たりない気がするが、目を閉じてもそれ以上眠れそうになく、布団から出ることにした。

 

しばらくして、珍しく次男Kが起きてきた。
まだ6時半だ。
いつもは8時過ぎまで、いや、起こされるまでずっと寝ているのに。

訊くと、

部屋のゴミ箱の中からガサガサ音がした。きっとゴキブリや。

と答える。

次男Kは超がつくほどの虫嫌い。というか、虫が怖い。
虫がいたとしたら、もう部屋には戻れない。
しかもゴキブリだ。

 

という経緯があって、部屋難民のKと一緒に朝食をとることになった。
一緒に朝食を食べるのは久しぶりだ。

平日は私が家を出るころにKはまだ寝ているし、休日も私が朝食をとるころにはKはやっぱりまだ寝ている。

なんだ、Kって寝てばかりだ。
でも、寝る子は育つ。

Kも最近身長がニョキニョキ伸びて、あっという間に私の背を追い越してしまった。
なのに中身はまだまだ発展途上。というか、停滞というか。

 

Kは冷蔵庫からいろいろなものを取り出してきてご飯にまぶしている。
カツオ節にすりゴマにシソわかめに……
まるで猫まんまだ。が、とても美味しそう。

真似して同じような猫まんまを作って食べた。
うまかった。

 

食べ終えても、Kは部屋には戻らない。

昔遊んでいた、DSのゲームソフトを探してくる、と言って長男Mの部屋に入り込んだり、どうでもいいことを口実にして時間をつぶしている。
探しているゲームソフトはポケモンらしい。
やっぱり発展途上、、、

 

しばらく探してポケモンは見つからなかったが、どうしても部屋に入れない。

部屋のドアは開け放してあるし、もういないかも、と言って促しても、少し中をのぞいただけですぐこちらに逃げ帰ってくる。

というやりとりを1時間以上した挙句、仕方なく一緒に付き添って部屋に入ることにした


ベッドの足元にゴミ箱が倒れている。
音はそこから聞こえてくるという。
見てみると、中には学校のプリントの束と、その下敷きになったコンビニのレジ袋が一つ。
袋の中は空っぽ。

音の正体はおそらくこのレジ袋だ。

倒れているゴミ箱のすぐ上のベッドには問題集やら教科書やらが散乱している。
ここはベッドなのか、本棚なのか、勉強机なのか。

おそらく、寝ているときにプリントの束を蹴って、それが下に落ちてゴミ箱を直撃して、レジ袋をガサガサ言わせたのに違いない。
私はそう結論付けた。

ゴキブリなんて元からいなかった。

意外にもその説明で納得したのか、Kはまた布団にもぐりこんだ。
もう一度寝るつもりらしい。
が、まだ怖いのか、部屋のドアは少しだけ開けたままにしている。
いつもならぴったり締め切っているのに。

 

Kの部屋の隣は私の寝室になっているので、何度もKの部屋の前を行き来する。
私はKの部屋の前を通るたびに、少し開いたドアのすきまから中を覗き込んで、

ゴ、キ、ブ、リ」とささやくように声をかける。

Kが嫌そうにうなり声を上げる。

試しに「コ、オ、ロ、ギ」と言ってみた。
それでも、Kはやはり怖そうに小さく悲鳴を上げる。
 

おもしろくて、「ゴ、キ、ブ、リ」と「コ、オ、ロ、ギ」を何度か繰り返したら、さすがにKは怒った。

 

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よく見ると、コオロギもアップにすると怖い。

でも、こいつは野外でコロコロコロと、かわいく鳴くから許せる。

もし、ゴキブリが屋内でかわいく鳴く生き物だったら、人間とゴキブリとは仲良く付き合えただろうか。

キッチンの隅で鳴いているゴキブリを思い浮かべてみる、、、

思い浮かべてみる、、、
思い浮かばない、、、
思い浮かばない。

 

ま、当たり前だけど、ゴキブリと仲良くするなんて、そんなことありえないな。

 

 

 

 

 

 

  
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