森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

土鍋で釜飯を炊く。かなわなかった父とのサシ飲み。

 

 

「釜飯」という言葉の響きに、郷愁と食欲がいやおうなく誘われます。

もともと、炊き込みご飯や混ぜご飯が好きなのです。
カレーや炒飯、お茶漬けも好きです。
生卵を落としてみたり、ふりかけや海苔をかけてみたり、味のついたご飯ならなんでもいいのかもしれません。
そもそもご飯が好きなのです。

なかでも炊き込みご飯が大好きです。

その大好きな炊き込みご飯が陶製の容器に詰められ、しかもお行儀よく蓋をして出てきます。
容器が金属製の小さなお釜であったってかまいません。
超小型風呂釜みたいなお釜と、下駄をひっくり返したような木製の分厚い蓋の組み合わせは、五右衛門風呂のようです。

 

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蓋を開けると、暖かい湯気に包まれた出汁のほのかな香りがあふれ出てきます。

そういえば、亡くなった父は炊き込みご飯にお酢を垂らして食べていました。
アルコールをほとんど飲まなかった父ですが、日本酒からさらに発酵が進んだお酢は好物でした。

 

 

週末に時間があると、土鍋で釜飯を炊きます。
と言うか、自分が食べたくなって作ります。

で、土鍋で釜飯、作りました。

 

《 材料 》

お米   4合
油揚げ  1枚
鶏もも肉 1枚
ごぼう  1本
にんじん 1/2本
しめじ  1パック


お米は洗ってザルにあげておきます(約30分)。
油揚げ、にんじんは短冊に切ります。
鶏もも肉は1.5cm角くらいの大きさに切ります。
ごぼうはささがき、しめじは適当にカットします。

 

肉→ごぼう→にんじん→しめじの順に土鍋で炒めて、

しょうゆ 大匙3
日本酒  大匙6
みりん  大匙4

を加え、しばらく煮込みます。

 

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これに、

お米  4合
水   700cc
日本酒 大匙2
塩   小匙1

を入れて蓋をします。

 

さあ、ここからの火加減が勝負です。

はじめ中火で炊きます。
数分で沸騰して湯気が勢いよく噴き出してくるので、弱火にします。
そのまま約10分炊いて火を止めます。
この辺で焦げた匂いがしてきますが、中が真っ黒焦げになっているということはないはず、たぶん大丈夫です。
15分から20分蓋をしたまま蒸らせばできあがりです。

 

これを土間の竈で炊いていた頃は、竈にくべる薪の量を調節し、団扇で勢いよく扇いだり、薪を減らして火力を弱くしたり、竈の火とにらめっこしていたんだろうな、とそんなこと一回もやったことないのに、なぜか一方的に懐かしがったりしながら、いつしか額に汗をかいています。

 

何度作っても、出来上がりを確かめるために、一度蓋を開けてみたい、という欲求を抑えるのに苦心します。
焦げ過ぎてないだろうか、生煮えじゃないだろうか。
ちゃんと美味しく炊けていますように。
時計を気にしながら、蓋から噴き出す湯気の匂いを気にしながら待ちます。

食卓にはお膳立てがすでに整っています。
子供たちはお腹をすかせて待っています。
ここまできて失敗は絶対に許されません。

この辺の駆け引きが土鍋釜飯の面白みかもしれません。

 

無洗米を一度使ったことがあり、そのときは大変でした。焦りました。

あれ? 「焦る」と「焦げる」似てますね。
なにが共通してるんでしょう。
ちょっと考えましたが、よく分からないので、その謎は今回はスルーして先を続けます

で、無洗米のときは、蓋を開けてみたところ、まだ全然ご飯が炊けてなくて、水をもう一度加えて炊きなおし、それでもまだご飯が硬くてさらに炊きなおす、という工程を繰り返しました。
無洗米は水の量を増やさないといけなかったようです。
が、それきり土鍋釜飯には使っていないので、どれくらいが適量かは分かりません。
使わない方がいいと思います。

 

蓋を開けます。

 

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うまく炊けたみたいです。

 

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土鍋で炊くと、もれなくついてくる「おこげ」。
しっかりできていました。

 

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お茶碗によそいで、海苔をちらしました。

サーモンのお刺身ともずく酢とオクラの和え物をおかずにしました。

写真を撮るのを忘れて乾杯を先にしてしまったので、グラスのビールは少し減っています。

 

あ。

父の真似をしてお酢を垂らして食べてみようと思っていたのに、忘れていました。

今月は父の30回目の命日でした。

 

「楽天」が父の日を前に、親子の「サシ飲み」について調査した結果が新聞に掲載されていました。

親世代に、父の日に子供と一緒にしたいことを聞くと、1位が「お酒を飲む」で27.0%だったとのことです。
子供の頃の思い出話に花が咲き、子供が大人になったことを互いに実感するのでしょう。

 

思えば、父とは一度も一緒に飲んだことはありませんでした。

口数が少なくてお酒も飲まない人でしたが、どんな話が聞けたでしょう。
子供の頃の僕のエピソードをいくつも懐かしく振り返ってくれたでしょうか。

 

炊き込みご飯にお酢をかけて食べた父。
食べ終わった後のお茶碗にお茶を注いでぐるぐるお箸でかき混ぜて、ご飯粒をきれいに落として、最後にぐびりとそれを一気に飲み干し、ご馳走様をしていました。

 

今度こそ、忘れずにお父さんの真似してみよ。

 

 

炊飯器でも作っています。 

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