森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

我が家のクスリ箱 (創作短編小説)

えっとクスリ、クスリ・・・

 

「ねえ和子。クスリ箱どこにあるのー」

久しぶりの病気だった。

頭が割れそうに痛い。そして胃が重い。心臓の鼓動がこめかみを切り刻んでいる。体を動かすたびに、頭の芯に釘を打ち込まれるような激痛が走る。生唾が口の中に広がってくるのは、吐き気を催す前兆なのだろうか。

和子の返事がない。

もっとも、大きな声を出すと頭に響くので、ささやくような声しか出せないでいるのだが。

和子は珍しく僕より先に布団から抜け出すことに成功し、トイレの方へダッシュして行ったきりまだ帰ってきていない。こんなに早く起きるなんて、ようやく主婦としての自覚にめざめたんだろうか。

「テイケツアツ」という、心の病気なんだか体の病気なんだかよく判らない病名を自ら名乗っている和子は、いつも朝が大の苦手である。と、言うことになっている。クスリを飲めばいいのに、なぜかもったいないと言ってそのままにしている。

「テイケツアツ」でも朝に強い人を何人か知っているが、それを言い出すと和子に宣戦布告するようなものだから、反論しないでいる。ま、世の中には、治らない方が本人のためになる病気というものも、確かに存在するのである。

ひょっとして、和子がいつも使う「もったいない」という表現は、「クスリ」にではなく、「病気が治ること」に係るのかも知れない。

和子はまだ戻ってこない。

自分で治療するしかないようだ。

クスリ箱は探すまでもなかった。つい先日、大型のものに買い換えたばかりなのをすっかり忘れていたのだ。宅急便のお兄さんの前で、置き場所をめぐって和子とさんざん言い争いをした後、物置と化していた僕の机を粗大ゴミにして、その跡地に設置したのだった。クスリ箱は僕の身長ほどの大きさがある。

この頃、物忘れがひどい。こんなに大きな存在を忘れてしまうなんて、やっぱり歳なのかも知れない。後で、「物忘れ病」のクスリも探すことにしよう。

が、今はとりあえず、この頭痛を何とかしなければならない。

 

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クスリ箱の上に、『スッキリキリ』の空箱が転がっていた。便秘の薬だ。和子が帰ってこない理由がこれで判明した。

しきりに喉が渇く。

僕はクスリ箱の一番上の引き出しから分厚いマニュアルを取り出すと、「あたま」の項を探し始めた。

「あ」、「あ」、「あし」、「あすぴりん」、「あせ」、「あたま」、「頭」。

→ A-5。

「頭が割れる」、「頭がはげる」、「頭が軽い」、「頭がかゆい」、「頭が重い」、「頭が痛い」。→ A-5-ホ。

マニュアルはイラストや写真付きで色んな病気を説明している。ハゲたおじさんの頭部のアップをじっくりと見せられて、いよいよ頭痛が激しさを増したようだ。胃の具合もおかしくなってきた。

次は原因を究明しなければならない。A-5-ホの項目を開く。

ここから先はフローチャートだ。

「女である」ノー→「鼻水が出る」ノー→「くしゃみが出る」ノー→「咳が出る」ノー→「熱がある」熱はなさそうだ、ノー→「頭から血が出ている」ノー→「髪の毛がバサバサ抜ける」ノー→「たんこぶがある」ノー→「アルコールを摂取した」オー、イエス!→「アルコール摂取時に酔い止め薬を服用した」ノー→「ビール大瓶3本分以上摂取した」イエス。→ A-5-ホ-d。

和子はまだ帰ってこない。だんだん吐き気がひどくなってきた。口の中が生唾だらけで気持ち悪い。大きく深呼吸をして、静かにA-5-ホ-dのページを開く。

ようやくそこに僕の病名と、治療薬名が示されていた。

「A-5-ホ-d  →  病名=『二日酔い』、治療薬名=『ウワバミン』『ノミスギン』『ムカイZ』・・・」

『ウワバミン』が、効きそうだった。

 突然胃袋が裏返るような感覚が僕を襲ってきた。息づかいが激しくなる。生唾を飲み下すたびに、耳元でごくりと大きな音がする。『ウワバミン』はどこにあるんだ。

「ア」行は上からニ段目の引き出しだった。

気分が悪い。生唾の量が増えていく。胃の底で何か得体の知れないものが暴れまわっている。

「ア」、「イ」、「エ」・・・「ウッ」、『ウラミマス』、『ウーロンチャ』、『ウワバミン』。ようやく見つけた。『ウワバミン』はドリンク剤だった。助かった。これなら何とか間に合う。

もう胃の内容物は食道を逆走し始めていた。

緊急事態に陥って日頃の用心深さをすっかり見失ってしまっていた僕は、そのクスリの効能書をよく確かめずに一気に飲み干してしまった。

クスリは、酸味が効いていて口の中の生唾をすっかり中和してくれるようだった。吐き気は最終段階で何とか阻止された。トイレ方面からは水を流す音が聞こえてくる。

「あー、すっきりした」

 和子が意気揚々と凱旋してきた。和子の顔は心なしか赤みを帯び、その目許にはうっすらと勝利の笑みが浮かんでいるように思える。こういう時の和子はインタヴューして欲しくてたまらないのだ。

僕もあと一歩の所で敗北を免れた安堵感から、病気を克服した喜びを分かちあう同士として、インタヴューのマイクを和子に向けることにした。

和子はマイクに向かってピースサインを示しながらインタヴューに応え始めた。ちょっと浮かれすぎの感もある。

「二週間ぶりよ、二週間」

ピースサインではなかったらしい。何が二週間なのかを聞くのはインタヴュアーとして失格であろう。

「クスリ箱を買い換えたことだし、古いクスリをいつまでも置いとくと、傷んじゃいそうだったから、残ってたクスリ全部飲んじゃったの。さすがに、すっごく効いたよ」

和子はしみじみと自分のお腹をなでながらそう語るのだった。

「ところで、今朝のは何色だったと思う」

和子へのインタヴューは、これから核心に迫る。

「えー、色と言いますと、やはり、その、つまり、あの物体の色のことですよね」

このインタヴュアーはアドリブがきかないので、失言をしてゲストにお叱りを受けることが多い。「物体」という言葉の響きに、和子は少し冷めた目つきになった。「物体」とは、和子がさっきトイレに放出してきた例のもののことである。「色」はそのものの色だ。最近の胃腸薬は本来の働きとは違う、こんな効能を売りにしている。

「やはり、和子の好きなピンクとか」

「ばかねぇ、そんな色のものが便器に転がってるところ、想像してみなさいよ。

まるで巨大なタラコが落ちてるみたいじゃない」

和子はかわいい顔をして、こういう台詞をさらりと吐く。僕は先ほど回避したはずの吐き気攻撃の再来を受けてしまった。

「今朝のはねぇ、淡い水色。今回は繊維質の食べ物をよく摂るように心掛けていたから、うまく染まってて本当にきれいだったよ」

「まさか、記念にまだ流さずに置いてあるなんてことはないでしょうね」

和子はニコニコしながら、僕の話を聞き流している。

「まさか・・・」

インタヴュアーはさっき水を流す音が聞こえたのを失念していた。もうすっかり和子のペースであった。今朝の和子の機嫌は上々である。

「今度さぁ、匂い変えてくれるクスリ発売するらしいよ。座薬だってことだけど。ミントだとか、フローラルだとかあるんだって。でね、このクスリの一番の売りはね、『ガス』も、ちゃんとその匂いに変えてくれるところなんだよ」

さすがに薬局に勤めているだけのことはある。和子からの情報は会社の同僚にもなかなか評判が良くて、ありがたがられているのだ。今の世の中クスリのことを知らないと、生きていく楽しみを半分なくしたようなものだからね。

「『ガス』って、時々悲しい物音をたてて発生して、何とも言えない匂いを伴う奴のことですね」

「これでもう安心して、おイモさん食べられるってわけなのよ」

「それならいっそ、『ガス』も出なくなるクスリ作ればいいのにね」

これは我ながら名案だと思ったが、和子には一言の下に却下されてしまった。

「それってやっぱり、体に悪いんじゃないかなぁ」

なるほど。

「あれぇ、これ『ウワバミン』じゃない。どうしてこんなクスリがここにあるの」

和子は枕許に転がっていた『ウワバミン』の空き瓶を見つけると、1オクターブ高い声で叫んだ。

「ああそれ、起きたらすっごい頭痛がして、調べたら『二日酔い』という難病だってことが判ったんで、さっき飲んだんだ。よく効いたよ」

そう言えば、今朝の僕を苦しめていた悪夢のような頭痛攻撃は、もうすっかり撃退されていて、僕の頭には爽快な風が吹いていた。

「『ウワバミン』って、クレーム多いのよね」

和子の声が今度は3オクターブくらい低くなった。僕は和子の顔色が一瞬暗くなるのを見逃さなかった。

「かわいそうだけど、君、これからしばらく大好きなお酒はあきらめてね」

「はぁ」

和子の言う意味がよく判らない。

「君ねぇ、効能書よく読まなかったでしょ。『ウワバミン』って、「二日酔い」にも効くけど、でもそれだけじゃないのよ」

確かに、効能書を読む暇なんてなかったけど、じゃあ一体『ウワバミン』は何のクスリなんだ。

「『ウワバミン』って、お酒に強くなるクスリなの。お客さんもよく間違えて飲んじゃっては、こっちに文句言ってくるんだから」

「お酒に強くなるなら、一向に不都合なことなんてないんだけど・・・」

和子は僕の話しを聞きもせずに、日頃のうっぷんをぶちまけ始めた。

「大体ねぇ、自分の体くらい自分で管理しなさいよねって言いたいのよ。どいつもこいつも、自分の不注意を棚に上げて、何かって言うとこっちに責任を取らせようとするんだから・・・」

「あ、あのぅ」

和子の上機嫌は長続きしなかった。ええっと、こういう時の精神安定剤は、何てクスリだったっけ。

「・・・その挙げ句に、惚れグスリやら強壮剤の試供品を差し出すと、急にネコ撫で声になっちゃって、気持ち悪い薄ら笑い浮かべながら帰っていくんだから。最初からそれが目当てに決まってるんだよ」

和子はしゃべり続けながら、クスリ箱の二段目の引き出しを開けて錠剤をひとつかみすると、一気にそれを口に放り込んだ。ぼりぼりと小気味よい音をさせて和子はクスリを摂取した。『イライライラズ』だった。そうそう、『イライライラズ』。覚えとかなきゃな。これさえ飲んでいれば、わがままなクライアントにも腹をたてずに済む。

「あなた、試供品にも効能書が付いてるの知ってらした」

和子のご機嫌は急速に復活した。そして、とろけるような甘い笑顔に変身して、清々しい朝とは無縁のことを誘惑するようなささやきでそう尋ねた。僕のことを「あなた」って呼んでくれるなんていつ以来だろう。『イライライラズ』には、効能書にない副作用があるのかも知れない。普段とは違う、おっとりとした口調で話す和子もとても魅力的だった。

「知りません」

 僕の声は少し上ずってしまった。急に胸が熱くなってきた。また、生唾が口の中にあふれだしてきた。まだ「二日酔い」が完全に治っていないのだろうか。

「効能書にはこう書いてあるの。『このクスリは試供品ですので、機能限定版となっております。効果は本製品と同じですが、持続性はありません。効果を実体験してみたいお客様は、ぜひ本製品をお買い上げ願います。』ってね」

「当然そのお客は、その効能書も読まないんだろうな」

一度はその気になったものの、いざと言う時に役に立たなくなっておろおろしている哀れなおじさんを頭に浮かべて、僕はちょっと寂しくなった。そして和子を絶対に怒らせないようにしようと、改めて心に誓ったのだった。平気な顔をしてどんなことをされるか判ったものじゃない。

 さっきまでの熱い胸の高まりはいつの間にかおさまってしまっていた。

「ところで、『ウワバミン』のことなんですけど」

僕の言葉遣いは心なしか丁寧になっていた。

「そうだったわね。『ウワバミン』って要するに、アルコールを一瞬で分解してくれるクスリなの」

「はぁ」

「君の飲んだアルコールは、君の口の中に入った途端にただの水に変化してしまうのよ」

「はぁ」

「だから君は、いくらお酒を飲んだって少しも酔わないってこと。つまり酔っ払いたくても酔っ払えないのよ」

「立ち呑みでグイッと一杯やっても、和子とお鍋つつきながら差しつ差されつで、お楽しみの雰囲気作りをしても」

「そう、ただのお水がお腹をたぷたぷにしてくれるだけ。全然酔えないの」

和子が駄目を押した。

「一体どれくらい、この効果が続くのでしょうか」

僕は救いをそこに求めた。

「ドリンク1本だから、まぁ半年ってとこでしょうね。普通は薄めて飲むものなのよ」

クモの糸は切れた。

「元気だして下さいよ、だんなさん」

和子はいたって上機嫌だ。僕も『イライライラズ』をほおばることにしよう。

「落ち込んだ時は『ナカジマミユキン』って、手もあるよ」

「はぁそうですか」

僕は急激に生気を失っていった。和子はいいよなぁ、ポテトチップスでハイになれるんだから。人生、酒なくして何の楽しみがあろうか。夕飯のご馳走を前にジョッキのビールをクッと一気に飲み干す、あの瞬間が快感なんだなぁ。

 でもまぁ、酔えないだけで別に飲むのは構わないんだから、しばらくは喉ごしだけで我慢するとしようか。それにしてもなぁ。水だからなぁ。

 僕はため息をついた。魂がため息と一緒に口からぽっかり逃げていくような気分だった。

「いつまで落ち込んでるの。朝ご飯にするよ」

「はぁそうですか」

「もう、いい加減になさいよね。仕事行くんでしょ」

「はぁそうですか」

我ながら情けないことだ。何をする気にもなれない。

「良い子にしてれば、今日お店から『ゲコラック』もらって来てあげるから。ね」

「『ゲコラック』って何」

そんな名前のクスリは初耳だった。

「お酒が飲めない人でも、お酒なしで酔っぱらえるクスリよ」

「良い子になる、なる」

その時の僕の目は、きっと朝日を受けた凪の海のようにキラキラ輝いていたことだろう。そんなクスリがあるなら、早く言ってくれればよかったのに。

「でも『ウワバミン』と併用しても大丈夫かなぁ」

和子はちょっと不安げな顔をしながら、朝食の準備に取りかかった。

朝食は、錠剤が3粒と、わかめスープだった。毎朝これだけなのだから、別にベッドの上で食事をとっても構わないのだが、和子は食卓での朝食にこだわる。スープが添えられているのも和子のこだわりだった。と言ってもお湯をかけるだけのインスタントだが。栄養は錠剤で充分に足りているから、特に必要はないのだ。お弁当も錠剤3粒だし、調理するのは夕食くらいだ。

「はい、食後のクスリ」

そう言って和子は錠剤をもう3粒見繕ってくれた。さっきの朝食の錠剤とは外見上とりたてて違いのないものなのだが、こうした段取りを踏むのも和子のこだわりである。

「白は満腹薬。黄色は『イライライラズ』。それから、ピンクは和子を一杯愛してくれるクスリ」

そう言い足すと、和子はえへっと少しはにかんだ。ピンクは惚れグスリに違いない。

「ご馳走さま」

二人の息はぴったりだった。これも長年の結婚生活の賜物と言うべきだろうか。食卓の後片付けが済むと、僕は洗顔に、和子はお化粧にとりかかった。

僕は洗面台の鏡に向かうと、歯磨き剤をなめながら、寝癖との勝負に取り掛かった。歯磨き剤が口の中で泡立ち、歯の隅々に染み込んでいくのが判る。甘い味が次第に薄くなっていく。完全に味がなくなれば歯磨きは終了だ。役目を終えた歯磨き剤を洗面に吐き出す。そして習慣的に、歯を鏡に映して出来栄えを確認する。漂白されたての歯はまぶしいほどだった。僕は洗顔の仕上げに、口臭予防剤と体臭予防剤と足臭予防剤を飲んだ。これで出勤の準備は整った。

 和子はまだ化粧に手間取っているようだった。一心不乱に化粧台に立ち向かっている。僕は和子の横に腰を下ろし、鏡の中の和子をそおっとのぞいてみた。

美顔剤や整肌剤のおかげで、いくつになっても和子の容貌に衰えは感じられなかった。でも、何もそれは和子に限ったことではない。世の中の女性全員に同じことがあてはまるのだ。みんな同じようなクスリを愛用している。結局最後の仕上げは、自分の化粧技術にかかっているのだ。

 和子がパフをたたきながら自分の瞳をじっとのぞき込んでいる顔が鏡に映って見える。さっきのピンクのクスリなんかに頼らなくても、充分僕は和子のことを愛している。出勤前だというのに、僕は自分が甘い雰囲気の中に飲み込まれていくのを感じていた。いや、それともこの感情の昂りはやはりクスリのせいなのだろうか。

「ちょっと、君。もう時間ないよ。早くしなきゃ、遅れちゃうよ」

 和子の厳しい指令で僕は現実に引き戻された。もう少し甘い雰囲気に浸っていたかったのだが、和子には全然その気はないようだった。鏡の中の和子とは一度も視線が合わない。和子は恐いくらい真剣な顔をして化粧を続けている。

僕は二人を包むシャボン玉のようなふわふわしたバリアを引き裂いて、仕事に出かけることにした。

「行ってきます」

 僕は鏡の中の和子に手を振ると、しぶしぶ立ち上がろうとした・・・

 しぶしぶ立ち上が・・・

 しぶしぶ立ち・・・

 僕は激しい吐き気とともに真っ暗やみの世界に落ちていった。強烈な立ちくらみだった。自分の体が床に叩き付けられる感触を他人事のように味わいながら、僕は意識を失った。

 

 激しい物音で和子は「僕」の異状に気づいた。

「ちょっと、君。ねぇ、あなた」

 和子は火が点かなくなったライターをもう一度点けようとしてシェイクするように「僕」の体を激しく揺すった。でも「僕」は何も感じなかったし、「僕」の体は何の反応も見せなかった。和子は「僕」の手の脈をとり、胸に耳をあてて心臓の鼓動を聞き取ろうとした。が、すでに「僕」の心臓はその働きを止めていた。

「あなた」

 和子は「僕」の死を確認した。

「君・・・。『立ちくらみ』で死んじゃうなんて・・・」

 歳なのね。去年200歳ドック行った時は異常なしって言われたのに。やっぱりお互いいつまでも若くないってことなのよ。最近私もお化粧のノリが悪いし、小さな活字が読みにくくなるし。でも死ぬ時って、いつも君変わってるんだから。この前は、お風呂で寝てておぼれて死んじゃったし、その前は、何だったっけ。100年以上も昔のことだからもう忘れちゃったわ。これで、君の死に目に会うのはもう3回目かしら。

 

 えっとクスリ、クスリ・・・

 和子は「死」に効くクスリを探し始めた。

 

 

 

 

 

 

  
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