森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

バレーバスケ部、母校最後の高校総体を戦う。~5月、バスケットボール部県予選~

今日(5月13日土曜日)、バスケットボール高校総体県予選がありました。
長男のMはバレーバスケ部に所属しています。

 

バレーバスケ部誕生の経緯については、別の記事『次の春、学校がなくなる。男子バレーボール部、部員2人から高3最後の大会、春高を目指す。』で書いたので、もしよければそちらをご覧ください。

 

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バレーバスケ部のメンバー構成だけを簡単に紹介しておきます。

Mの学校の男子バレーボール部員は昨年秋の2年生の新チームがスタートした時点で2人だけ。男子バスケットボール部員は同じく3名だけしかいませんでした。

Mたちの学年が卒業すると、彼らの母校は別の学校との合併に伴って閉校になるからです。つまり、彼らには後輩がいないのです

最後の高校総体まで部活を続けたい彼らが選んだのは、部活を兼部するという方法でした。2+3=5で、バスケットのメンバーはそれでそろいます。

でもバレーのメンバーにはまだ1人足りませんから、野球部を辞めてフリーだった友達を誘って、ようやくぎりぎりのメンバーがそろい(彼はバレー部だけに入りました)、バレーバスケ部としての活動が始まったのです。 

その後、さらに元陸上部の友達も加わり、6人のメンバーで今日の試合を戦うことになっていました。

バスケ部の試合としてはMの母校最後の高校総体となります。


が、一昨日の木曜の夜、Mは8度近い熱を出し、金曜日は学校を休みました。

そして試合当日土曜日の今朝、熱はまだ7度台後半でした。Mが休んでもメンバーはぎりぎり5人はいますから試合はできます。

Mはバレー部のキャプテンでした。部活を続けるためにバスケ部のキャプテンと何度も話し合い、兼部を認めてもらうために先生にも一緒に頼みに行きました。

そのバスケ部のキャプテンは、ゴールデンウィーク前にもともと悪かった膝の痛みを悪化させて、しばらく練習ができない状態になっていました。
今週からようやく練習を再開したばかりです。

あいつが出るのに自分が休むわけに行かない。

Mが試合に出たいと思っていることは表情を見れば分かりました。
試合は15時開始です。

「試合会場には行こう。昼までもう少し休んで、あとはそのときの体調をみて考えよう」
と、私はMに言いました。

 

試合前の練習で久しぶりにMのプレーを見ました。本格的に練習をはじめてからまだ10ヶ月ほどです。

0度からのシュートもレイアップもそれらしく打っている様子を見て、私は彼を少し誇らしく感じました。

私がもともとバスケットボール好きでした。
Mにはぜひ将来バスケをやってほしくて、駐車場の壁にはおもちゃのバスケ用リングを取り付け、ミニバス用のボールも買いました。
でも、全然バスケに興味を示してくれませんでした。

そのMが体調が万全でなくても、チームメートと声を掛け合いながら目の前でシュートを打っています。

 

試合開始を待っていると、メールが来ました。

「試合やれるとこまでやりたいから出たい」とあります。

「頑張れ」と返すほかありませんでした。

そして試合が始まりました。

 

第1クオーター、Mはベンチスタートです。
立ち上がり、両チームともなかなかゴールが決まりません。
Mのチームメートたちは気持ちが空回りしている感じでファールを連発しています。

最初のゴールを相手校が決め、試合は徐々に向こうのペースになっていきました。

8対27で第1クオーター終了。

Mはずっとベンチのままでした。

 

第2クオーターの途中からM(8番)が出てきました。

すぐ横で応援している女バスの子たちから声援が飛びます。
とても不思議な感覚でした。

 

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Mは代わってすぐに外からのミドルシュート決めました。調子はよさそうに見えます。
でも、そのあとが続きませんでした。
17対55で前半終了です。

 

第3クオーター、Mは残り4分から交代してコートに立ちましたが、すっかり動きが鈍ったように見えます。

 

そして第4クオーター。

その時点でスコアは19対82でした。

Mは最初からコートに立っています。ですが、もともと色白のMの顔が蒼白でした。
ゴール下に走りこんでボールをもらおうとする力強いプレーが見られません。

Mは残り7分を切ったところで再びベンチに下がりました。

 相手校との力の差は歴然でした。
次々にメンバーを代えてくる相手選手に簡単にゴールを許しています。

対するMのチームメートは疲れて足が止まっても交代できるメンバーがいません。

じりじりと点差が開いていきました。

 

残り16秒。

ゴール下でのボールの奪い合いで相手選手と交錯したキャプテンが転倒し、膝を押さえてうずくまりました。

キャプテンの動きもこの日は冴えませんでした。
得意の強引なほどのドライブが鳴りを潜め、パスを出す相手を探す場面が何度か見られました。しばらく練習から遠ざかっていたからでしょうか。

怪我であれ病気であれ、最後の試合にベストコンディションを作れなかったのがよくなかった、と言うしかないでしょう。

でも、この子たちはたった6人でバレーとバスケの練習を続けてきました。
土日のどちらかをオフにしたくても、それではバレーとバスケの両方の練習をすることができません。

Mが体調を崩したのは体調管理の甘さはもちろんあると思いますが、オーバーワークでもあったと思います。

 

Mは故障退場したキャプテンに代わって最後のバスケの試合のコートに立ちました。
この試合が終われば、もう二度とバスケをすることはないかもしれません。
16秒後、試合終了の笛が吹かれました。

ポイントガードとしてゲーム中休みなく走り回り、チームの得点の大半を奪ったキャプテンはその笛をベンチで聞きました。

29対106。

 

バレーの高校総体は来月です。

この試合がバレーバスケ部最後の試合になるかもしれません。 

 

 

 

 

 

  
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