森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

山猫ノート13

「野音」32ページ目からはところどころに書いた日の日付が残っている。

 

83年12月14日

・人はたったの一、二分で人生をやり直せる。
宮本輝

 

・「馬鹿ね。あなたは私にただの通りすがりの人ですか、それとも私の人生にはいって来る方ですかって、聞いてみるの?」
川端康成『みずうみ』

 

・この八月一日は夢声さんの一周忌になる。
二、三年前、荻窪駅の前でお孫さんを連れた夢声さんに偶然出会ったことがある。
「どちらへ」ときくと、
こんど土地を少し買い、近いうちにそちらへ移ることになったので、これから孫と一緒に見にゆくところだという。
「それはどこですか」ときくと、
「なに、多摩墓地ですよ」といってにっこり笑った。夢声さんに会ったのはそれが最後だった。
河盛好蔵

 

自分の人生に入ってくる人か、そうでない人か。そんなこと考えながら人との距離を測るのってさぞかし大変だろう。

 

 

 

 

 

 

 

  
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