森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

フェンシング太田雄貴選手の引き際

 

 

フェンシング男子フルーレ個人の太田雄貴選手は、リオデジャネイロオリンピックの初戦で敗れ、試合後に現役引退を表明した。

敗れた相手は世界ランキング2位の太田よりもはるかに格下(66位)の地元ブラジル、ギレルミ・トルド選手だった。試合が決した瞬間、会場は大歓声に包まれた。

太田は北京オリンピックで個人銀メダル、ロンドンでは団体銀メダルを獲得した。しかし、その後は選手活動を休養して東京オリンピックの招致活動に取り組んでいる。そして、一年以上の休養を経て復帰した2015年の世界選手権では日本人初の金メダルを獲得し、日本悲願の金メダルを目指してリオデジャネイロオリンピックに挑んでいた。

敗戦後、太田はピスト(試合を行う細長い台)にそっと手を触れて、トルド選手勝利の余韻がまだ残る会場を後にした。その時すでに気持ちは決まっていたのだろう。

実は太田は以前一度引退に言及している。

ロンドンオリンピックの後「引退するつもり」と口にしたことがあるそうだ。ところがその後日本代表が低迷し、「東京オリンピックに向けて自分が背中で引っ張る」と、リオデジャネイロオリンピックを目指して競技に復帰したのだという。

太田は試合後、記者団からのインタビューに対し
「ここまで綺麗に初戦で負けると、競技に対する未練もなくなった。もしかしたらフェンシングの選手としての賞味期限も切れていたのかなって改めて感じた」
と語り、現役引退の可能性について尋ねられると、
「ここからは下の世代だったりフェンシング界だったり、スポーツ界を盛り上げていく役に回りたいなと思う」
と答え、次の世代への思いを語っている。

フェンシングというスポーツを日本でメジャーなものに押し上げた太田の功績は計り知れない。だからこそ、彼に心残りがあるとすれば、日本フェンシング界の今後の行方なのかもしれない。

太田雄貴の真の意味での活躍の場はきっとこれから先にある。

 

 

 

 

 

 

 

 

  
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