森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

バドミントン松友美佐紀選手の「一期一会」

 

 

リオデジャネイロオリンピック女子バドミントンダブルスで日本のバドミントン史上初となる金メダルを獲得した「タカマツペア(高橋礼華・松友美佐紀)」・松友美佐紀選手の言葉。

「いろいろな人への感謝の気持ちが湧いてきているか?」
とインタビュアーに訊かれて松友はこう答えた。

「もちろん感謝の気持ちはあるのですが、今回、オリンピックは本当に長かったです。試合をどんどんしていくうちに、オリンピックで最後と決めている選手がたくさんいて、それがすごくつらくて。自分の中では。いろいろな選手がいたから、今の自分たちがあると思っているので、本当にもう戦えないと思うとつらかったです」

松友の気持ちは、自分たちの勝利に浸る前に、自らが破った対戦相手に向けられていた。

もう戦えないことがつらい、と。

どちらが勝つにしろ負けるにしろ、このオリンピックを最後に、もう二度と試合をする機会が巡ってこないかもしれない。

そんな覚悟で松友はたった一度きりの試合を重ね、最高のプレーを相手に披露し続けた。

5年前、前回のロンドンオリンピック出場をフジカキペア(藤井瑞希・垣岩令佳ペア、ロンドンオリンピック銀メダル)、スエマエペア(末綱聡子・前田美順ペア、北京オリンピック4位)と争っていた時期、松友はすでにその次のリオデジャネイロを視野に入れた発言をしている。

「オリンピックがかかっている今年は昨年と違って、みんなに『これに負けたら終わり』というような緊張感がある。その中で、私たちには若さという特権がある。それは勢いだと思うので、怖いものは何もないですし、今はどんどん上を目指してやっていくだけです。そこで、どれだけ成長できるかが2016年のオリンピック出場にもかかわってくると思います。だからこそ今は、目の前の戦いに思い切り挑戦していきたいです」

負けたら終わり、もう後はない。そう覚悟を決めている相手に向かって思い切り挑戦していく――。この言葉にも共通する思いがある。

オリンピックでの対戦を一生に一度の出会いとして互いに力を尽くす。それが自分にとってのバドミントンである。松友はきっとこう言いたいのだ。

その「一期一会」の思いで臨んだ試合の先に松友美佐紀選手の金メダルがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  
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