森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

伝言が多すぎる……。そして、Jアラートという伝言。 (創作短編小説)

時計の針は2時を指していた。 寝る前に読み始めた小説が意外に面白く、毛布にくるまったまま、まだ読んでいた。1時までと決めていたのに、気がつくともうこんな時間になっている。明日の勤めに差し障りがあることは承知の上で、つい夜更かしをしてしまった…

ターニャ (創作短編小説)

誰もが彼女に魅せられていた。透き通るような白い肌、水色の瞳、腰まで伸びた栗色の髪、そして笑顔、澄んだ心が滲みでてくるように感じられる……。 もちろん俺の好みだ。社員総会の社長の話など誰の耳にも届いてはいない。東欧の新興独立国であるラトバニア共…

願いを叶える天使と悪魔。南の島の怒りん坊の王様。 (創作超短編小説2編)

願いを叶える天使と悪魔。 すべてに絶望し、自らの命を絶とうとしている男がいた。 そこに、天使が現れて言った。 「ひとつだけ、あなたの願いを叶えてあげましょう」 男は答えた。 「俺に夢をくれ」 天使がウインクすると男には夢が生まれた。 夢は男に生き…

猫次郎と亀太郎。猫は平和を感じる。

次男Kの話です。 彼も大の猫好きです。あ、私も。 いろいろ事情があって本物の猫が飼えないので、セブンイレブンのくじ引きで当てたピカチュウのぬいぐるみで代用しています。あ、違った。ピカチュウは猫じゃなかったですね。 どうして猫が好き?と訊くと、…

魔法の鏡。 (創作短編小説)

魔法の鏡。 古道具屋で俺は一枚の鏡を買った。 店の隅に隠すように置いてある、タータンチェック柄の布が掛けられた妙なものに俺は気がついた。布をめくってみると古ぼけた鏡が現れた。 「気をつけなよ」と背後から声がした。鏡には、不釣合いなほど高い値札…

「閻魔様と百万回死んだ男。」「礼儀正しい社会の作り方。」 (創作超短編小説2編)

閻魔様と百万回死んだ男。 一人の男が死んだ。 その魂は亡骸から抜け出て閻魔様のところへ飛んでいった。 閻魔様は男の魂をしげしげ眺めると意外なことを言った。 「お前は特別に選ばれた魂だ。これから何度死んでも、別の生き物になって蘇らせてやろう」 「…

薬売りの口上。 (創作短編小説)

夜店の屋台が続く一番奥で、道端に広げた敷物の上に大小さまざまな小瓶を並べて、とうとうと口上を述べている者がおります。 大方の者は相手にせず行き過ぎておりますが、時折足を止めてそれに聞き入る酔狂な者もおります。 あなたもちょっと寄っていかれま…

鳥よけネットで守り抜いたブルーベリーでチーズケーキを作る。

わが家の庭には、花や野菜や実のなる木、ならない木などが雑多に育ってます。ん? 実がならない木ってあるのかな?ここで言ったのは、食べられる実、という意味です。 もともとは、庭の半分は奥さんが花を植え(観賞用)、もう半分は私が実のなる野菜や木を…

ずっとバレーボールをしていたい。 バレーバスケ部最終章2

「バレーバスケ部最終章1」の続きです。 前回分はこちらです。 www.keystoneforest.net 長男のMが中学校のバレー部で最初に与えられたポジションはセッターでした。身長がさほど高いわけではないMにとって、また滅多に感情を昂ぶらせることがない落ち着い…

森の奥へ2 ブログ1年を振り返って

「森の奥へ」の最初の記事を投稿したのは1年前の8月7日でした。今日はブログをこの1年間続けてきた足跡を振り返ってみますね。 仕事柄、夏は比較的時間の余裕があります。2年前の夏はPowerPointで簡単なアニメーションを作る方法を勉強しました。 そし…